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最初から最後まで当たり前のように歪ませてたら、なんのスリル感も生まれない。
そういうスリル感が俺にとっての歪みなんだよ。
━━タイフーン・ナタリが解散してからは、ミュージシャン活動からは離れレコード会社で若いバンドの育成などに注力されましたね。
そうだね。13年くらいかな、2006年までレコード会社で新人発掘とか、プロデュースみたいなことをやってたんだ。オーディションを観に行ったりして、若いバンドの演奏を観ることは新鮮だったし、ひとつの経験として役に立ったと思ってるよ。そのときどきでどんな音楽、サウンドが流行っているのかもわかったしね。
━━近年はカルメン・マキ&OZの復活やNOIZの再結成など、活動も活発ですが、音作りに変化はありますか?
基本的な音作りの考え方は当時も今もまったく変えてないんだ。70年代にカルメン・マキ&OZをやって、80年代にNOIZ、千年コメッツをやって、90年代にタイフーン・ナタリをやって、その年代ごとにいろんなことを模索してやってきたから、そういうのが今になって全部集約されてるのかもしれないね。
━━では、これまでのお話を総括してお伺いします。川上さんがベースを歪ませる意義とは?
演奏する曲によって変わってくるけど、俺は単純に“こういう弾き方でこういうサウンドを出す”っていうスタンスでやってきたから、例えフュージョン的なミュージシャンとセッションしたとしても自分のスタンスは変えないし、それがたまたま歪んでたってことなんだと思う。たまに“爆音ベース”とか“ブンブン・ベース”とかって言われることがあるんだけど、単純に俺はそういう音が好きなんだろうね。あとブラスマスターだったりSunnがもはや自分の体の一部みたいなところもあるからね(笑)。
━━なるほど(笑)。では川上さんが考える、いい歪みとは?
歪みをどう捉えるかにもよるけど、結局本当にいい歪みって、極めたらアンプとベースだけで作る音なんだよ。あとは一曲とおして常に歪ませるんじゃなくて、その曲の部分ごとにガーっと歪ませたりだとか、そういう使い方が歪みの醍醐味なんじゃないかな。エフェクターとかを使って最初から最後まで当たり前のように歪ませてたら、なんのスリル感も生まれないし、おもしろみもないからね。そういうスリル感が俺にとっての歪みなんだよ。
━━まさに黎明期から歪みベースを鳴らし続けてきた、川上さんならでは考えですね。
ジャック・ブルースはSGベースを持ったからあの音が出せたわけで、あれがSGじゃなかったら歪んでないし、あの音になってない。フェリックス・パパラルディでもあのギブソンのベース使ったからあの音を出せた。だから自分にとって一番の相棒と言える機材を見つけることが大切だと思うよ。
◎Profile
かわかみ・しげ●1952年福井県生まれ。小学校から卓球選手として有望視されつつ、ウクレレやギターに興味を持ち、高校でバンドを結成。その後ベースに転向し、16歳で地元のゴーゴークラブに出演する。高校卒業後に上京してブルース・バンド、実況録音を結成。その後いくつかのバンドを渡り歩きながら1975年、カルメン・マキ&OZに参加し、ロック・ベーシストとして不動の地位を確立。グループ解散後はNOIZ、千年コメッツ、タイフーン・ナタリなどで活動する。その後はディレクター、プロデューサー業に専念し、新人の発掘・育成に力を注ぐ。人見元基(vo)との共演を機にベーシストに復帰し、カルメン・マキ&OZも再結成を果たした。
◎Information
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