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SPECIAL TALK SESSION – YUKKE(MUCC)×明希(シド)
- Interview:Kengo Nakamura
- Live Photo:Susie(YUKKE)、Yoshihiko Tanaka(AKI)
バンド以外での活動というインプットが
自分にもないといけないなって思うんですね。━━YUKKE
━━MUCCとシドの共通項を探していくと、いわゆる歌謡曲の要素というのがありますよね。それをいかにロックとして表現するかという部分で、特に2000年代初頭のヴィジュアル・シーンの新たな潮流となった気がします。
YUKKE 俺がヴィジュアル系のバンドをやりたいって思った高校生の頃に、先輩にcali≠gariがいたりラヴィアンローズがいたり、いろんな音楽をやっている先輩がたくさんいたんですね。当時、自分が入る前のMUCCが対バンしてる相手も、メロディアスなことをやっているバンドもいれば、ずっと叫んでいる感じのバンドもあって。だからMUCCって、どんな音楽をやってもいいんだなっていうのが入る前からの印象ですね。それに、逹瑯にしてもミヤ(MUCCのg)にしてもフォークで育った部分があったし、当時自分が一番聴いていたのも日本の歌謡曲やJ-POPで。そこから素直に出てくるメロディをバンドに持って行ったら、良い意味で当時浮いたんです。もともとMUCCの地になってるものってそういう感じなんだと思う。だから“誰もやっていない音楽をやろうぜ!”っていうよりは、自分たちのやりたい音楽をやっていたらそうなっていったっていう感じですね。
━━なるほど。明希さんはいかがですか?
明希 マオくん(シドのvo)もすごく歌謡曲の人だし、僕自身もロックが好きだとは言っているけど、きっと根底にあるのは歌謡曲みたいなメロディなんだろうなっていうのは、客観的に見ても思います。そういう意味では、YUKKEさんのお話と似ている部分がありますね。ただ、YUKKEさんは“自分たちのやりたいことをやっていったらMUCCになった”とおっしゃっていましたけど、そこは僕らはちょっと違っていて。当時、ライヴハウス市場で見たらヴィジュアル系バンドって本当にいろんなバンドがあったから、そのなかで“誰もやっていないことってなんだろう?”っていう抜け道を探して辿り着いた部分もちょっとあるんですよね。ほかのバンドがガンガン盛り上がる煽るような曲をやるなかで、「土曜日の女」みたいなガット・ギターの曲で、ベースもわざとペケペケの音にしたりっていうのは、狙ってやっていた部分もあったんです。そのなかで、MUCCにはめちゃくちゃ影響を受けていますね。
━━長年のつきあいのなかで、お互いの変化って何か感じる部分はありますか?
YUKKE 明希はベーシストとしてもいちミュージシャンAKiとしても、どんどん自分の畑を広げているというか。“こういうことをやってみたい!”を、ちゃんと形にしていくやつだなと思っていて。楽器に関しても、最初は5弦ベースを弾かないと思ってたって言っていたけど今は弾いているし。ソロになって、シドとは違った音楽性も表現できるようになって、そこにベース・プレイもついていってすごく良い進化をしていると思う。近くで見ていて、すごい後輩だなって思いますね。俺が高校生の頃に思い描いていたベーシスト像というか。ベースで自分のモデルを作って販売してみたいなところもそうだし。あるときから気づいたんですけど、明希を目指すようなベーシストの男の子がすごく増えたんですよ。MVとか観ていても、みんな明希と同じ弾き方をするんですよね。そういう後輩が憧れるような気質があるし、影響力があるんだなって思いますね。
明希 4年前くらいにガッツリ毎日一緒にいるようなツアーをやったんですね。そのときに力の差を見せつけられたというか。一緒にツアーを回って、対バンで何度も何度もあの音を間近で聴いていて、“俺、このままじゃダメだ”って思わせてくれたんです。それで僕はもう一度、自分の機材やら音やらプレイを見直そうと思った。YUKKEさんはそれくらい刺激をくれた人ですね。MUCCの最近の楽曲も聴かせてもらってますけど、どんどん色気が増しているというか。誰かを追いかけてベース弾いているっていうところにはもういないし、独自の進化をしていってるのかなって感じがしますね。“MUCCのベース、YUKKE”っていうのを、ひたすら道なき道を進んでいると感じます。
━━明希さんはソロ・アーティストとしても活動していますけど、YUKKEさんはわりと“MUCCのベーシスト”という、“バンドのいちベーシスト”というところを突き詰めている気がします。
明希 確かに。でも僕的には、もちろんMUCCというホームを持ちながらも、ソングライティングも含めて、“YUKKE”というひとりのアーティストの面ももっと見てみたいなって思う気持ちもありますね。最近、逹瑯さんはソロ活動もしているし、ミヤさんも京さん(DIR EN GREYのvo)と新しくバンド(Petit Brabancon。『JACK IN THE BOX 2021』で初ライヴを行なう)を組んだりしているじゃないですか。YUKKEさんもMUCCという家を出たときに、またおもしろいことをやってくれるんじゃないかなって思うんですよね。
YUKKE わかってます。実は、それはここ最近のテーマなんですよ。メンバー3人がそれぞれ活動していて、俺ひとりだけ個人ツアーとかそういう活動がないなって思っていたところではあります。活動するならちゃんと準備をしないといけないとは思いますけど。明希も、ソロであれだけ大きいツアーもまわったりしていると、シドっていうバンドに戻ってまた違う反応が生まれることがあると思うんですね。この先、そういうインプットが自分にもないといけないなって思うんです。
━━ソロ活動を考え始めたのは、3人になってからですか? 以前から漠然と考えてはいた?
YUKKE 前から、ふと考えたことはあっても、そんなに具体的には考えたことなかったかな。やっぱり実際に3人になって、ほかのメンバーふたりがいろんな活動を始めるにあたって、自分ももうひとつ何かあったほうがいいなって。今までもお仕事でMUCC以外の場所で弾いたりしたこともあるんですけど、そのあとでMUCCに帰ったときにさらに強くなってる自分がいたりしたし、そうやってほかでの活動を自分が率先してやってみると、もっともっとMUCCに良い影響を持って帰れるかなって思っています。それで最近、アコギをちょっと始めて、ツアーでちょっと弾いたりもしているんですけど……でも俺、歌ヘタだしなぁと思って。ヘタなりに頑張って歌って、そういうすごく温か~い空間は作れると思うんですけど(笑)。そういうベース以外の活動でも、ひとりで何でもやってみるっていうのは何かしらを自分にもたらすと思うし、MUCCに帰ったときに“ベーシストYUKKE”として何か違うものを見せられるようになるには、ほかのところでのベースの追求も必要だなとも思っています。だからしっかり考えて準備をしたいし、そういうことは前向きに考えてはいます。とはいえ、とりあえず今はMUCCのアルバムの制作が先かな。新体制になって初のアルバムになるので、いろんな面を見せられる曲を書きたいなと思います。
━━なるほど。ちなみに明希さんがソロ活動を始めたときはどのようなモチベーションだったんですか?
明希 衝動ですよね。自分のなかで出口が見えないいろんな状況があるなかで、自分ひとりで何かやりたいって思ったのがすべての始まり。“やりたいからやる!”っていうそれだけでしたね。ある種無責任な感じにも聞こえるかもしれないけど、だからこそちゃんと筋は通してやらないといけないなと考えています。ソロに関してはいろんなことを積み上げてきて、いろんな失敗もして、成功もして、挑戦もして、そのなかでシドに持って帰れたものもたくさんあるので、これからも続けていきたいなと思っていますね。ただ、誤解がないように言っておくと、別にバンド活動において全員がソロ活動するのがマストだとは思っていないんです。やらなきゃいけないっていうものではないですしね。ただYUKKEさんはポテンシャルがあって、絶対ほかのところでも生かせると思うから、願わくばそれが見たいっていう話なんです。でもそれも、MUCCで20年以上培ってきたものがあるからこそだと思いますし。長年MUCCの屋台骨を支え続けて、かつ主張し続けているYUKKEさんはベーシストとしても、いちアーティストとしても本当に尊敬していますね。