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INTERVIEW – KENJI[I Don’t Like Mondays.]

  • Interview:Zine Hagihara

テンションでクレッシェンドしていく。
曲の後半だけ熱くなるのもおもしろいかなって。

━━10月にリリースされた「ENTERTAINER」は、ブラック・ミュージックでよく使われる王道のコード進行の曲になっていて、こういう進行ってアイドラはあえて使ってこなかったパターンですよね?

 そうですね、椎名林檎さんの「丸ノ内サディスティック」や、シェリル・リンの「Got To Be Real」とかですよね。今まではすごく歌謡感が出ちゃうなと思っていたんです。90年代のJポップでもたくさん使われていましたし、けっこう“和”なイメージがあるんですよね。それが悪いというわけではないんですが、Jポップに偏るのは避けたかったんです。今回はYUの歌詞の方向が変わって、より自分をさらけ出すような内容で、日本語詞も増えたこともあって、日本人に聴き馴染みのある進行だし合うかなと取り入れています。

「ENTERTAINER」MV

━━ベース・ラインはシンベ的なくぐもったサウンドではありますが、空ピッキングが強く入ることで有機的なグルーヴを作っていますね。

 そもそもこの曲は珍しくジャムって作った曲なんですよ。だから、まずは手グセでゴーストや休符を入れていきました。だけど、自分がプレイするときにまず気をつけているのは、歌に寄り添うこと。できるだけミニマルにしたいっていうなかで、音価だったりゴーストノートだったりをいかに効果的に入れていくかっていうことを重要視していて、グルーヴをすごく大事にしたいと考えています。それで、あとから空ピッキングを引き算したり、足りないところに追加したりして。あとはDTM上でオート・ワウをあとがけしたりして、それでゴーストがすごく目立つようにしていますね。

━━11月にリリースされた「東京エキストラ」はダンサブルなグルーヴを感じられますが、バラード的な落ち着きも感じられます。この場合、フレーズはもっと歌に寄り添うものでしょうか?

 そうですね、よりシビアになります。音数も序盤は少なかったりして、さらにシビアになりますよね。リズムを保ちながらニュアンスを出していくっていうのはかなり難しいし。あとは、この手のバラード的な歌は、弾き手の感情がすごく出やすいと思うので、後半になってくるに連れて音数も増えていくし、そこではあえてキレイに弾かないっていうこともしたりして。感情的になる必要があるっていうのもどこか俯瞰したプロデューサー的視点で、熱い自分をちょっと遠くで見ているっていう感じもあるかもしれないですね。

「東京エキストラ」 (Audio)

━━12月30日にリリースされた最後のシングル曲となる「ミレニアルズ 〜just I thought〜」は、曲の大半であえてビート感をなくしていて、かなりコンセプチュアルな面を感じました。

 僕のルーツがUKミュージックなんですけど、これもそういう要素があって、コンセプチュアルなロックというか。それに加えて、5ヵ月連続のリリースのなかで、あえてサブスク向きじゃない曲を狙っていたところがありました。イントロも長いし、部分的にはビート感がないし、間奏も長いっていう仕上がりなんですけど、この曲が一番バンドっぽくて、今の流行りへのアンチテーゼでもある。ある意味で一番バンドがやりたいことを一番詰め込めた曲なんじゃないかなと思っています。

「ミレニアルズ 〜just I thought〜」(Audio)

━━ベースについては、ドラムがハイハットのみを刻んでいる部分も多いなかで、ドラム的にリズミカルな動きをしている部分があって、アンサンブルの差し引きの仕方が抽象的ですよね。

 確かに、キックの代わりになるイメージもその部分ではありましたね。そもそも、すごくアート作品っぽい曲だなと思っていたんです。だからこそ、あんまり“ベース、ベース”したくないって思ったりもして。最初にベースがインするところではアルペジオを弾いて、ギターのフレーズがすごく良かったので、それに彩りを加えるようなベースらしくないアプローチをすることでアンサンブルのなかにより深く組み込んでいきたいと考えていました。そして、サビに入ったときに初めてちゃんとルートを下のほうでボーンと出すっていう流れを作っています。フレーズの形としての流れが一定のまま、テンションでクレッシェンドしていくっていうことも意識していますね。後半で熱くなるのもおもしろいかなって。

━━曲によっては、冷静と情熱を俯瞰してコントロールしているのがおもしろいですよね。

 そうですね。やっぱり俯瞰しながらフレーズを考えている自分がいるんです。あくまで曲や歌に寄り添いたいからっていうところから来ていると思うんですけどね。

━━では、12月で5ヵ月連続リリースは完結となりましたが、最後に今後の展望について聞かせてください。

 基本が天邪鬼なので、いい意味で期待を裏切っていきたいっていうマインドがあります。でも今回の連続リリースをとおして、改めて自分たちがどういう音楽をやるべきなのかってしっかり振り返ることはできましたし、この発見を生かしてブラッシュアップしながら、攻撃力のある曲を世の中に提示していきたいなと思います。

◎Profile
けんじ●中学1年生のときの文化祭をきっかけにベースを手にし、ビートルズなどにのめり込む。中学3年生頃にギター・ヴォーカルに転向し、UKミュージックに深く傾倒。2010年頃にI Don’t Like Mondays.の前身バンドにサポートで加入すると同時に再びベースを手にする。2012年頃にCHOJI(g)、YU(vo)、SHUKI(d)、KENJIの現編成となり、2014年にメジャー・デビュー。2020年までに3枚のフル・アルバムなどをリリース。2020年8月に発表した「モンスター」より5ヵ月連続のシングル・リリースを行なっており、第5弾となる「ミレニアルズ 〜just I thought〜」を12月30日にドロップした。

◎Information
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