PLAYER
UP
INTERVIEW – ジョシュ・スミス[ヘイルストーム]
- Question:Koji Kano
- Translation:Tommy Morley
- Photo:Jimmy Fontaine
まるで“俺は今ここにいるよ!”と
アピールするような気分になれる瞬間でもあるんだ。
――「Back From The Dead」は、Aメロでのベースが浮き出たフレージングや、ギター・ソロのウラでメロディを弾いたりと、印象的なプレイを各所で展開しています。こういった遊び心は先ほど言った、“ライヴで学んだことを反映させる”といったことにも由来しているのでしょうか?
そのとおり。これこそ俺がベースをプレイするうえで大事にしていること。メロディとリズムを往来するコール&レスポンス的なプレイは、リジー(ヘイル/vo,g)やジョー(ホティンジャー/g)のプレイはもちろん、アージェイ(ヘイル/d)のプレイに対しても発生する。自分はすべてをまとめる接着剤だという意識を持っていて、このバンドではそういった遊び心をトライする局面が必ずどこかにある。そこを見つけることが楽しいんだよ。まるで“俺は今ここにいるよ!”とアピールするような気分になれる瞬間でもあるんだ。
――「Strange Girl」「The Steeple」などでは、あなたの特徴でもあるパワフルな太いサステインを生かしたベース・サウンドを聴くことができます。
前作(『Vicious』/2018年)を作ったときにも感じたんだけど、より大きな会場でプレイするようになったことで、ひとつの音に込める価値、コントロールする方法をより意識するようになったし、自分が望む音を安定的に作り出すことを意識しつつ、両手の使い方についても考えるようになったんだ。やっぱり俺たちみたいなサウンドには、どっしりとしたサステインが不可欠だからね。
――ヘイルストームは歪んだ重厚なギターが2本鳴っていますが、このなかで抜けるベースの音作りもポイントかと思います。ギターとの帯域のカブりなど、気をつけているポイントとは?
ヘイルストームのギターは、ジョーが高い周波数帯、リジーがリズム・ギタリストとして太く幅広いレンジをカバーしているんだ。だから言ってくれたように、ときにはギターがベースの周波数帯とカブることもある。そのなかで活躍してくれるのがリッケンバッカーで、このベースを手に入れたとき、アンサンブルにおいてとてもヌケが良いサウンドであることに気づいたんだ。そこから2枚のアルバムをほぼリッケンバッカーだけで作ったし、ライヴでも活躍するようになった。ストレートでアグレッシブなサウンドなんだけど、ロー感もあるから周波数帯的にもうまくハマってくれるんだ。
――なるほど。ちなみにヘイルストームのチューニングは?
新曲を身体に叩き込むためのリハーサルを連日行なっているんだけど、最近は新しいチューニングも導入するようになったんだ。「Back From The Dead」「The Steeple」はドロップCだけど、今作ではキーがDなのに、Dより下のベース音を出したいという目的でドロップAのチューニングにしている曲もある。ツアーではドロップD/C/B/Aの4種類のチューニングのために4本のベースが必要になるだろうね。
――ダウン・チューニングだとサステインを稼ぐことはより困難になりますよね。
低い音をクリアに出すためのセットアップを目指していて、アンプの設定はベースが12時より控えめ、ミドルは12時より少し高め、トレブルはさらに高めに設定している。どちらかと言えば中域を強調したサウンドになっているかな。ドロップAチューニングのベースには.135のゲージの弦を張っているから、実質5弦ベースでプレイしているような感覚なんだ。あとサステインを稼ぐためにはネックの調整も必要だね。
――実際に5弦ベースを導入することも考えているのでしょうか?
実はあまりにも低いチューニングにしたことで、ベースが耐えきれなくなったから、5弦ベースを購入してクリアなサウンドを得ることも試みたんだ。だから将来的に5弦ベースでプレイすることもあるかもしれない。でも直近のツアーでは4弦ベースでプレイするつもりだよ。基本的にダウン・チューニングのベースには.130のゲージの弦を張ってプレイすることになるだろうね。
――「Bombshell」イントロの過激に歪んだ低いドライブ・サウンドはインパクト大ですが、これはベースによるものでしょうか?
いい質問だね。この曲はハッピーな事故からできた曲で、2020年に『Reimagined』というEPを作ったのだけど、そのときにジョーがこのリフを持ってきたんだ。ジョーはニックのギターを使ってプレイしたのだけど、偶然ギターのペグが壊れていてダルダルな状態だったんだ。でもそのサウンドがクールだったから録音していて、のちにそれをアレンジしてみたらこうなったというわけ。だから実はこの音は、ギターのE音から3オクターヴ下のFまで落ちてくる音なんだ(笑)。さすがにライヴだとギターでは再現できないからベースでやることになっていて、たっぷりのノイズにオーバードライブのペダルを組み合わせて再現するつもりだよ。
――そうだったのですね(笑)。この曲は歪んだヘヴィ・ベースが全体を牽引する、今作でも特にベースが強調された曲になっています。どのようなベース・プレイを描いたのでしょうか?
この曲は正真正銘“ヘイルストームの曲”だと言えるし、俺たちの雰囲気を出せた曲なんだ。ブレイクダウンはヘヴィなベース・ラインと俺たちが長らくやり続けてきたサウンド感が詰まっていて、それがサビの爆発感につながっている。これは今のヘイルストームの押さえておくべきポイントのひとつだね。
▼ 続きは次ページへ ▼