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    INTERVIEW – 長島涼平[フレンズ]

    • Interview:Kengo Nakamura

    そのたった5秒10秒を聴きたいがために
    その曲を再生したくなるような瞬間を作りたい。

    ━━5人時代の楽曲から振り返っていくと、「約束」のどっしりとしつつもメロディアスなイントロや間奏はロック的なアプローチですね。Jさん的というか。

     あれは完全にもう手グセですもん。Jさんをずっとコピーしてきた自分の手グセがめちゃくちゃ出ているなって、自分で聴いても思います。

    ━━5人のときは、ポップなバンドだからベースもポップなことをやろうというんじゃなくて、そこに自分のロックなエッセンスをどう混ぜ込めるかというところだったということですよね?

     フレンズというバンドが、そもそもそういうものだと思っているので。ポップスに対してあまり無理しないというか。ただ、4人になったら、もうちょっとシビアに演奏の部分に目を向けていかなきゃいけないなっていうのは、個人的にはずっと思っていました。音色もプレイも、今までどおりっていうのは、どう考えても難しいなって。それだけのキーパーソンがバンドからいなくなっているわけだから。

    ━━「約束」の2番のAメロは、わりと高い位置でベースがステイするアレンジが耳をひきます。

     僕は音楽理論がまったくわからないので、あそこでステイすること自体がいいのか悪いのかは、よくわかってないんです(笑)。ただ、1曲に1ヵ所だけ変な場所というか、ベースに気を取られる場所、そのたった5秒10秒を聴きたいがためにその曲を再生したくなるような瞬間を作りたいとは思っていて。僕のベースの師匠である有江嘉典さんからもそういうアドバイスをいただいたこともあって、有江さんは曲のなかで、“ここまで行っちゃって大丈夫ですか?”というところからキレイに帰ってくるんですよね。有江さんみたいにうまくはできないけど、そういう有江イズムが入っている部分かなっていう気がします。

    左から、三浦太郎(g, vo)、 関口塁(d)、えみそん(vo)、長島。
    「約束」MV

    ━━「あくびをすれば」は楽曲全体はカントリーっぽいテイストでありつつ、ベースはオブリで積極的に上に行くロックっぽい感じですね。これでギターががっつり歪んでいればメロコアになるような。

     そういう感じですよね。めっちゃ恥ずかしい話なんですけど、僕はベースを家で入れて送ったりできるようになったのって去年からなんですよ。コロナ禍で覚えたんです。それまでは、送られてきたデモの状態を覚えて、なんとなく感覚だけ作ってスタジオに入って、みんなで合わせながら作り上げていくっていう感じだったんですけど、さすがにコロナ禍になってパソコン触れないのはヤバいと思って。まぁ、そのタイミングで気づくのもヤバいですけどね、みんなは普通に前からやっていたことなんで(笑)。この曲は、そういうのができるようになったから作れたフレーズなのかもしれません。こうじゃないああじゃないって、最初からわりとレコーディングを意識して準備できていたというか。

    ━━1サビのあとのBメロの歌の隙間のオブリはキャッチーですね。同タイミングでギターもオブリを弾いていて、絶妙に絡んでいるようないないような(笑)。

     ははは(笑)。ギターとユニゾンするのは好きだったりするし、ギターのオブリのフレーズをベースで弾きたくなっちゃうんですよね。それで、結局採用されなかったとしても(三浦)太郎さん(g,vo)が弾いていたギターの単音フレーズが頭に残っちゃっていたりして、それをベースでやると絶妙に絡んだりする。この曲に関して言えば、僕は“歌えるベース・ライン”、一回聴いたらメロディ・ラインさえ覚えていれば追えるものが好きなので、そういうのもあるかもしれないですね。

    「あくびをすれば」MV

    ━━「ボルテージ!」は1990年代的なメロディックなロック・ベースが気持ちいいです。主張があるというか。

     特別に意識しているわけじゃないんですけど、やっぱり自分が一番聴いていた時代のものが出ているのかな。この曲はデモではものすごくシンプルな曲で、ベースで多少色をつけたいなと思ったんです。それでフレーズを作っていったんですけど、曲を構築するうえで、あまりよくない方向にまで働いちゃった気がしたので、最終的には自分のなかでやりたい気持ちいい部分だけ残して、行き過ぎたところから若干抜いていますね。

    ━━逆に、「8月31日の行方」はシンベっぽい質感というか、あえてベースの主張を消していますね。

     実はこれは僕がベース・ラインだけを考えて、生ベースを弾かずにシンセ・ベースが鳴っているんですよ。鍵盤的なアプローチじゃないけど、ベーシストが考えたフレーズを鍵盤の人が弾いている。こういうのは初めての経験だったから楽しかったですね。逆のパターンの、鍵盤の人が考えたフレーズを生ベースで弾くっていうは経験があるんですけどね。

    ━━2番のBメロにはスラップのフレーズがありますが、これは生ベースですよね?

     そこだけは生ベースですね。もともとこの曲は生ベースとシンセ・ベースをユニゾンで重ねるという話があって、生ベースも録ったんです。でも生音のハマりがあまりよくなくて、結果的に生ベースを抜いてシンベだけにしたんですよ。経過音に移るときのグリスだったりも、こっちが鍵盤に寄せたりもしたんですけど、いまいち思った仕上がりにならなくて。だったら、シンベだけでもいかなって。

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