PLAYER

UP

INTERVIEW – 長島涼平[フレンズ]

  • Interview:Kengo Nakamura

“弾いてみた”の動画で、まだ正解者はいないですね。
それがちょっと嬉しいんです(笑)。

━━4人体制の新曲に目を移すと、「東京今夜」や「急上昇あたしの人生」など、音価の調整が巧みなプレイが印象的でした。

 コロナ禍になってから、改めてベースをめちゃくちゃ練習したんです。クリック練とか。ずっとやってこなかったやつ(笑)。僕は自分が通ってきていないジャンルの音は出せないと思っていて、例えば僕はメタルを通っていないから、ああいうラウドなものを弾こうと思ったときに、あのロー感って、いくらアンプで上げても出ないんですよ。弾き方なのかはわからないですけど、それをやろうとするとちょっと嘘が出ちゃうなと思ったので、まずは嘘が出ないくらいの努力をしようと。今までもできるだけ家でベースを弾く時間は設けていたんですけど、去年は本当にけっこう弾いたんです。ただ、弾けば弾くほど、例えばルーツがジャズにある人たちみたいなベースは真似ることができないんだなとも思ったんですね。それで、今ある自分の実力の最大限のところを高めて、自分がチョイスできる幅をもう少し広げるのがいいのかなって。それは音の切り方もそうだし、フレーズも全部含めて。自分の実力が10だとして、実際に現場でできるのは6か7くらいっていう気がしているので、10マックス出したかったら自分が15くらいの実力をつけないと、それを余裕を持って出せない気がしたんです。だからめっちゃ練習したんですよね。それがひょっとしたら細かいところに出たのかな。

「東京今夜」MV
「急上昇あたしの人生」MV

━━「急上昇あたしの人生」は4つ打ちのダンス・チューンで、特にAメロ、Bメロは細かいパルスで弾いていますね。

 「急上昇あたしの人生」は新体制の1発目の曲で、今の時代のJポップ感を入れたいなという話が出たんです。でも僕はそういう流行りに本当に疎くて何もわからなかったので、改めてちゃんと聴いてみたら、最近の曲ってこんなに隙間なくベースが入っているんだなと思って。Bメロなんて、今あるそういった曲を聴いていなかったら、あんな風に弾こうと思わなかったかもしれないですね。

━━間奏ではギターとユニゾンのリード・パートがあって、そこでも聴かせますね。ライヴではステージ中央にふたりが出て行くような。

 まさにそうですね。これ、えみそん(vo)から、“ベースとギターが背中合わせになって弾くみたいな場所を作りたい”って言われて。しかも最初は“X JAPANみたいに”って言われたんですよ。

━━この曲調で(笑)。

 そうなんですよ(笑)。それで僕と太郎さんで、泣きのソロをユニゾンとかハモるとかをめちゃくちゃ考えたんですけど、やっぱり無理があるじゃないですか、あの曲調でX JAPAN入れるって。しかも、TAIJIなのかHEATHなのか、PATAなのかHIDEなのかでも違うし(笑)。それで結局レコーディングの当日まで決まらなくて、当日に悩んで決まったのがアレです。

━━意外なドラマがあったんですね。音価の話で言うと、「FUTURE PEOPLE」のイントロやサビのフレーズは、1拍目のちょっとグリス感のある伸ばし方と、そのあとの休符も挟んだタイトな感じのコントラストが生きていますね。

 あれ、最初にデモで入れたときは自分でなんかしっくりこなくて、あとで変えようと思っていたんです。曲の小気味よさとかスピード感をベースが遅くしているような気がして。でも、そこからいろいろ試行錯誤しても、あのプレイが自分のなかに残っていて、それ以外ができなくなってしまった。ただ、これは太郎さんの曲なんですけど、太郎さんも僕が最初に提出したベースを基準に考えていて、そのフレーズがちゃんと残っているから間違いじゃなかったのかなと。

━━ファースト・インプレッションが正解だったと。

 あの手の小気味よいリズムの曲って、ベースがそのまま乗っかってあげたほうが聴いているほうも歌っているほうも気持ちいいのかなと思ったし、曲に呼ばれたものではなく自分の手グセやエゴの部分のような気がして。実は僕的に元ネタがあって、2000年初期くらいに流行ったJunior Seniorの「ムーヴ・ユア・フィート」っていう曲が、めちゃめちゃ乗れるビートにタメたベースが入っているんです。そのプレイがずっと残っていて、何かの曲でやりたいなって思っていて、15年越しくらいにこの曲で使えたんですよね。

━━「夢って」には歪んだ音でのベース・ソロがありますが、入りの音がちょっと低いような……。

 なんか気持ち悪いですよね?(笑) 僕も思うんですよ。ミスっぽく聴こえるというか、レコーディング中にも何回も審議が入ったのでめちゃめちゃ検証したんですけど、いわゆるコードをなぞったもう少し高いところから入ると、不思議な要素が消えてしまって、ここから何が始まるんだろう感がなくなるなっていうのがあって。ギリギリセーフみたいなところで、自分の天邪鬼なところというか、なんか変なところをひとつ残したいっていうのが出た部分ですね。

 長島のエフェクト・ボード。手前右からエキゾティック製X-Blender(ブレンダー)、ボス製BF-2B(フランジャー)、マクソン製CS550(コーラス)、pandaMidi Solutions製Future Impact I.(ベース・シンセ)。中段右から、コルグ製DT-10(チューナー)、DSM Noisemaker製Drive Maker(オーバードライブ)、フリーダムカスタムギターリサーチ製Quad Sound Bass Pre Amp(プリアンプ)、同Wild Stomp(プリアンプ)。最上段はMXR/CUSTOM AUDIO ELECTRONICS製MC-403 POWER SYSTEM(パワー・サプライ)、その上にCUSTOM AUDIO JAPAN製PBHUB6-C(エフェクター用電源ハブ)。X-Blenderには、Drive Maker、Quad Sound Bass Pre Amp、Wild Stompがループされている。
 歪みのメインはWild Stompを活用しており、「いつものサタデー」のブチブチとした歪み部分ではさらにWild StompにDrive Makerを足している。BF-2Bは「夢って」のメイン・リフで活用。長島は“僕はコーラスよりもフランジャーのほうが好き。コーラスのほうが音が散って、フランジャーのほうが弾いている感じを残したまま音が変化していってくれる気がします”と話していた。「楽しもう」2番冒頭のシンセ・サウンドはFuture Impact I.によるもの。
 ピックはジム・ダンロップのトーテックスで0.73mmのもの。オリジナルのプリントを入れている。

━━「NIGHT TOWN(神泉Ver.)」は5人時代の楽曲の再録。ちょっとテンポが落ちて、原曲の軽快な感じからうしろに引っ張る感じになっていますね。

 ライヴでアコースティック編成のときにはこういう感じでやっていたんですよ。 

━━今作ではエレキ・ベースですが、ライヴではアップライトを弾いていましたよね?

 あれ、めっちゃ恥ずかしいんです。素人が手を出してきたみたいな感じで(笑)。僕がアリアのアップライトを弾いている広告があるんですけど、普段はアップライトをライヴで使う機会が少ないから、一時期メンバーに“詐欺じゃん”ってめっちゃいじられて……。だから今年はもうちょっと練習しようと思っています(笑)。

━━この曲はベース・ソロもありますし、ベースで引っ張る曲だから弾いていて楽しそうですね。

 この曲、けっこうYouTubeとかで“弾いてみた”の動画を上げてくれているのを観るんですけど、まだひとりも正解はいないですね。それがちょっと嬉しいんです(笑)。コピーされるのも嬉しいし、“あ、ちょっとみんな間違えてるな”っていうのが、さらに嬉しい。

━━なんの優越感なんですか(笑)。さて、最後に、本作を作り終えた今の心境は?

 僕が学生時代にそうだったんですけど、正直、メンバー編成が変わることって、そのバンドを応援しづらくなる一番の理由な気がするんですね。でも、これはもうしょうがなくて。僕らとしてはいいライヴをしていい作品を作り続けるしかないし、そうやって頑張った先に、新体制ってことを知っていても知らなくても、何かのきっかけで聴いてもらったときに“めちゃめちゃいいじゃん!”ってなればいいだけの話なので。そういう風になれるように、今はとにかく頑張るしかないし、今作は自分たちが思っていた以上にいいものができたなっていう手応えがすごくありますね。

◎Profile
ながしま・りょうへい●1984年5月18日生まれ、埼玉県出身。2005年にthe telephonesを結成し、2009年にメジャー・デビュー。2011年12月にさいたまスーパーアリーナ公演を成功させるなどダンサブルなロック・サウンドで人気を集める。the telephonesが2015年に活動休止し(2018年5月に活動再開)、長島は2015年6月に新バンド、フレンズを結成。2021年8月4日にメジャー2ndフル・アルバム『SOLAR』をリリースし、10月15日(金)@東京都 LIQUIDROOM、10月22日(金)@大阪府 BIGCATでのライヴを予定している。

◎Information
長島涼平 Twitter Instagram
フレンズ Official HP YouTube Twitter Instagaram Facebook