PLAYER

UP

INTERVIEW – 大田譲[ カーネーション]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto
  • Photo:Kikuko Usuyama(Live)

あれをちゃんと鳴らしておけば、どんなアンプでもライン直でもいい音になる。

━━1曲目の「Changed」は基本が2コードの繰り返しで、ベースのリフで引っ張る曲です。同じフレーズのループものですが、どんなことを意識して弾きましたか?

 「Changed」はせいぜい3テイクくらいで録っていて。自分が気持ち良きゃいいやっていう感じで弾いてますね。余計なことをしないというか、ポリリズムじゃないけど、繰り返しをおもしろがろうって感じで。これもドラムのノリが良いからね、直枝くんも狙いどおりだったんじゃない? 彼もほとんど何も言わなかったね。

━━この曲のベース・リフからも、“ハネ過ぎない”プレイを少し感じたのですが、いかがですか? 例えば大田さんはゴーストノートを使わずに、このフレーズを弾いていますよね。

 特にベースは、あんまりハネるとこれはカッコ悪いなと思って。ハネは当然意識してるし、ドラムのハネ方も聴いているけど、ふたりがハネちゃうと少しクールさがなくなるような気がしたんです。自分としては“クールな16感”を出したかったので、気持ちとしてはハネてるんだけど、あまりそれを感じさせないようにと思ってましたね。

━━別の曲で気になった点があるのですが、「I Know」のサビではベースが半音の動きをしているフレーズがありますよね。すごくいいフックになっていると思ったのですが、あそこはチョーキングで弾いているんですか?

 あそこはハンマリングなんですよ。チョーキングはね、俺、全然関係のないところでもつい“クイッ”てやってしまうクセがあって、それはもう直さないとダメかなと思ってあんまりやらないようにしてるんですよ(笑)。こういうフレーズのときは、ハンマリングとかグリスで音程をちょっとズラすくらいにしてますね。

━━「I Know」はけっこうコーラスというか、掛け合いのような歌も歌ってますよね?

 直枝とクロスフェードして俺も歌って、また直枝が歌うみたいな、今までにないパターンだったからおもしろかったですね。俺は基本コーラス人間なので、掛け合いではあるけれど、コーラスだと思って歌ってます。それがすごく曲のイメージを決めてるところがあって。リズムはリズムでおもしろいし、今回のアルバムではこれが一番好きかな。

━━今回機材については、全曲プレシジョン・ベースでしょうか?

 全曲そうですね。20年くらい前に知り合いが見つけてきてくれて、手に入れたベースで。それまでミュージックマンだったんですけどね。プレベはもともと好きだったし。あれデッド・ストックで、見る人に見てもらったら1959年製だって。音も当然いいんだけど、すっごく軽いんですよ。それが嬉しくて。もうあのベースでしかライヴできないです(笑)。レコーディングも、ちゃんと鳴らしておけばどんなアンプでもライン直でも関係なくいい音になるくらいの感じで。

━━今作は、アンプ/ライン録りなどの録音環境はどうだったのでしょう?

 これがね、今回は全部ラインなんですよ。前作までは、録りは全部アナログだったし、全部でアンプを使っていたんですけどね。あれはあれでおもしろいですけど、結局アナログで録ったものをTDとかのためにデジタルに流し込んじゃうから、少し疑問はあって。気持ちとしては、“テープで録った低音は太いよね”とかは思ってたんだけどね。でも今回みたいなほうが、エンジニア的にはやりやすかったみたいですよ。

大田が20年近くメインで使用している1959年製フェンダー・プレシジョン・ベース。部品はピックアップとナットのみ交換していて、あとはオリジナルとなっている。

『Turntable Overture』の録音ではエフェクターの使用はなかったとのことだが、ライヴ用のエフェクター・ボードもご紹介。機種は左上より時計回りに、アルビット製Cranetortoise DD-1B(ディストーション)、マクソン製AD-900(アナログ・ディレイ)、ロジャー・メイヤー製Voodoo-Bass(ディストーション)、ボス製TU-3(クロマチック・チューナー)、TNKY製エフェクター(大田の知人が制作したカスタム品。ヴィンテージ・ワイヤーを用いて組まれたカスタム・ループ・セレクターとなっている。)、ボス製CE-2(コーラス)、HAZ製MU-TRON III +(エンヴェロープ・フィルター)。

━━最後に、今後カーネーションとして、また大田さん個人として、どんな活動をしていきたいか、展望を教えてください

 この前チャーリー・ワッツのニュースもあったし、俺たちがあと何年できるかはわからないけど、音楽に対する自分の今後については考えますよね。ここのところ毎回思うけど、アルバムを作れる環境があるのって、どうしても世の中のことと関わってるじゃない? でもやっぱりコロナ禍でライヴもたくさん飛んじゃって、しんどいところはあったんだけど、そこで萎えそうになる気持ちを奮い立たせるにはやり続けるしかないとは思っていて。まわりのミュージシャンもすごく頑張ってる人が多いから、誘ってくれたら“ありがたい”と思ってやり続けなきゃなと。カーネーションはもちろんやるんだけど、純純譲っていう毎月毎月やっているようなバンドもあったりね(笑)。とにかくベースを弾かせてもらえるところがあればどこにでも行きます、という気持ちでこれからもやっていきます。

◎Profile
おおた・ゆずる●1960年1月20日生まれ、鳥取県出身。1985年にGrandfathersを結成。1988年ナゴム・レコードよりシングル「流れ星老人」でデビュー。1992年、Grandfathersの活動停止を期にカーネーションに加入。以降、数度のメンバー・チェンジを経ながらも、最新作『Turntable Overture』を含む18枚のオリジナル・アルバムをリリースしてきた。現在は直枝政広(vo,g)とのふたり体制で活動しており、2018年には日比谷野外大音楽堂での結成35周年記念コンサートも成功させた。大田は、ジャック達のサポートや、鈴木純也(vo,g)、小関純匡(d)との純純譲など、ベーシストとして幅広い活動を展開している。カーネーションとしては、12月12日(日)に“Turntable Overture” Release Tour 2021”の東京公演を日本橋三井ホールにて開催。

◎Information
カーネーション
Official HP Twitter