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INTERVIEW – 大田譲[ カーネーション]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto
  • Photo:Kikuko Usuyama(Live)

とにかく俺は歌モノしか弾きたくない人間なので。

━━ベース・ラインについて、大田さんとしては“作曲者の意図を汲んでできるだけ再現しよう”というのは思いつつ、一方で“もっと変えてやろう”みたいな意識もあるのでしょうか?

 俺の場合はデモのフレーズを変えようとはあまり思わなくて。簡単なコード進行の曲とかフレーズ一発のものとかは、好きに弾く部分も多いんだけど、複雑なコードの曲が多いと、変えるとのちのち困るんですよ。結局、歌と当たっちゃったり、キーボードやホーンと合わなかったりね。最初は気づかなくても、段々ダビングしていくうちに“ここベース半音違うよ”とかがあって。今はパソコンで編集したりができるけど、昔はそういうことがあると恐ろしい目に遭っていたから、“ヘタに変えてはいけない”っていうのがあるんですよ。

━━デモのベース・ラインをなぞるうえで、“大田さんらしいプレイ”というのはどこに出ていると思いますか?

 やっぱり、とにかく俺は歌モノしか弾きたくない人間なので、歌がしっかりあって、メロも良くて、という曲のバックでベースを弾きたいと。そしてそれが良く聴こえるため、そのメロを人に聴いてもらうためには、リズムがしっかりしてなきゃいけないと思っていて。“リズムがちゃんとハネるならハネる”、“ちゃんと8分を刻むことができる”、そういうのを一番の課題だと思って弾いてますね。やっぱリズムがベタっとしちゃうと、歌もつまんなく聴こえるでしょ? だから人力で弾いてるし、必ずドラムと“せえの”で録っていて。顔見ながら、“こんなオカズがきたら、思わずそういうノリになっちゃう”みたいなのを大事にしていますね。ただ再現するだけではいい曲には仕上がらないと思ってやっているし、“俺が弾いてるからカーネーションの曲が成り立つぞ”くらいでやってないと何十年もやってらんないですよ(笑)。

━━以前大田さんがほかのインタビューで、“ハネ過ぎないこと”について語っていたのを読んだことがあるのですが、“リズムのハネ”については、どういうことを意識していますか?

 一番大事なのはドラマーとの絡みなので、ベースもドラムもあまり強くハズみ過ぎると逆にリズムがちゃんとハネない、と思ってます。ドラマーでも、“ハネてまっせ”みたいな感じで大袈裟に叩く人とかもいるじゃない? そうするとやっぱり合わせにくいことが多くて。“自然なハネ”が一番いいよね。やっぱり8ビートでもなんでも、必ずハネてないといけないとは思うから。ウラと間を感じられるというか、それをわかってもらえるプレイをしたいですね。

━━今作ではふたりのドラマーが参加していますが、大田さんから見て、それぞれはどういったプレイヤーなのでしょう?

 張替(智広)くんはもう長いね、今回のツアーでも“10年もやってるんだね!”って話をしていましたけど。矢部が辞めたとき、何人かドラマーの候補はいたんだけど、やっぱり矢部のドラムは簡単に叩けないよね。そこで張替くんがすごかったのは、楽曲を体に入れるのがとにかく早いのね。コンポーザーだからというのもあり、理解力が突出している。投げたものがすぐに返ってくるというか、彼の良さはそこを一番に感じていて。あとリズムの取り方に関しても、感じ方に関しても、すごく良くなってきている。というか、僕にとって本当にやりやすいプレイになってきているので、もう好きに叩いてもらってますね。偉そうに言わせてもらうと、ここ10年で腕を上げたというか。今すごい売れっ子ですもんね。

━━岡本(啓佑)さんについてはいかがですか?

 彼はね、うちの娘が黒猫チェルシーが好きだったのがきっかけで知ったんだけど、最初フェスで1回お願いしたんだったかな。当時、20代半ばとかでリハのときから若くてイキのいいドラムを叩いてたんだけど、早くにデビューしているからキャリアが長いというか、ちゃんとやってくれるんだよね。そこから最初は苦労して慣れるまでに2年くらいかかったかもしれないけど、今はもうレコーディングも2枚目とかで、スタジオも全然問題ないですね。不思議な現象なのは、俺なんかもう還暦過ぎてるけど、俺らの世代が聴いてきた音楽と彼が好きな音楽が2周も3周もしてすごく似てるんですよ。俺らの好きな音をわかってくれているから、ドラムのチューニングとか“これがカッコいいでしょ”みたいな叩き方とかもすぐに伝わるんだよね。

━━先ほど、今回一番苦労した曲として「SUPER RIDE」を挙げていましたが、この曲は岡本さんのドラムが大活躍していますよね。大田さんとして、この曲が難しかったポイントとしては、やはり展開の変わり目が多いところとかですか?

 これドラムすごいでしょ?(笑) この曲でのベースの難しさは、やっぱり展開と、あとはフレーズかな。細かいフレーズじゃなくて、いかにノリを出していくかっていうところがね。3連っぽいフレーズとか、すごい難しいんですよ。だから、本当にドラムには助けてもらった。今回はアルバムを通して、 “ドラムのふたりに乗っかって弾いていればうまくいくな”という気持ちだったかな。

━━サビでの16分の細かいベースのオブリなど、かなり難しそうですが、本当にカッコいいですよね。

 ああいうのもね、ドラマーを信頼できてないとノレないんだよね。俺が引っ張んなきゃと思っていると、絶対違うプレイになるので。

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