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メンバーに求められたときに開ける引き出しも、
返せるものも増えたんじゃないかな。
━━シンガロングの気持ちいいライヴ・チューン「All Through The Night」では、ギター・ソロの前の部分でベースの見せ場がありますが、低域でのリフとロックンロール・フレーズのメロディックな部分で構成されていて、歌いすぎない感じになっていますね。
これはどうアプローチしようかすごく迷ったんですよ。楽曲自体、パンクを意識して作ったというのもあるんですけど、左手どうこうっていうよりは右手が忙しいというか、強力なピッキングの感じをイメージして弾いたらハマったんですよね。
━━「Collapsing」の間奏のベース・ソロ的なリフは、ザラッと歪みつつも芯がある骨太な音色も含めてカッコいいですね。
あの曲はテンポ決めから始めたんです。それでベースをガシャガシャやりながら歌っていたら、あのサビが出てきて、そこからリフを作った感じですね。サビを作って、Bメロ、Aメロって、逆パターンで作っていった感じです。
━━そういう形で作っていくのは珍しい手法なんですか?
今は半々くらいですね。実は、僕の最初の曲の作り方ってサビから作る形だったんですよ。でもある先輩に、“海を最初に作っちゃダメ”って言われたことがあったんです。まず川を作っていかないと、想像以上の海、つまりサビにはたどり着けないって。最初にサビの大きさを決めちゃうと、もうその世界でしかないからっていうことなんですけど、方法論の話だから結果として曲が良くなればいいわけで、じゃあ僕は両方の作り方を体得しようと思ったんです。でも、そういう曲作りの“入り口”って、めちゃくちゃ大切だと思っていて。入り口が変わるだけで作る曲って本当に変わるから。入り口の手法はたくさん持っておいたほうがいいなと思いますね。
━━アルバムのなかで、「狂奏夏」はAKiバンドの加藤貴之(g)さんが作詞作曲をしていますが、これはAKiさんからのリクエスト?
そうですね。ソロ活動だからもちろん基本は自分の曲をやるんですけど、ソロ活動のなかで1曲丸々すべて新しいアプローチの曲があってもいいかなと思って。彼とは20年くらいの付き合いでもあるし、“ライヴで盛り上がるような曲を好きに書いてみて”ってお願いして作ってもらいました。
━━ソロで楽曲提供を受けるということは、まさにヴォーカリスト的な感覚でもあるのかなと。
難しいなと思いましたね。やってみて思ったのは、曲に“自分”というものを乗せないほうがいいなということ。音として自分の良さだけを歌で表現するんじゃなくて、物語の主人公になりきって、頭から足までしっかりと、「狂奏夏」だったら“夏の感じ”でやらなきゃなとか。“入り込む”というか“染まる”感覚ですよね。“俺はこうだ”っていう強さもいいけど、染まる強さもあるというか。彼が書いた本のなかで演じる能力も問われるので、やってみて楽しかったし、勉強になりました。こういう感覚はヴォーカルだけじゃなく、楽器でも反映できることがあると思うんです。これまで、わりと“自分のベースのスタイルはこうだ”でやってきたんですけど、そうじゃない能力もあったほうがいいなと。
━━ソロ活動でのそういう経験が、シドにもフィードバックされていくんでしょうね。
そうですね。この2ndアルバムを作ったことで、サウンド面もアプローチの仕方も自分のなかで見つけたものがあるし、メンバーに求められたときに開ける引き出しも、返せるものも増えたんじゃないかな。
━━さて、『Collapsed Land』は“崩れ去った場所”という意味ですが、奇しくもこのコロナ禍によって、いろんなものが変わっていくことになりますよね。今後の音楽シーンについてどのようなことを考えていますか?
変わっていくし、変わらざるを得ないんだと思いますね。例えば、僕もこれから配信ライヴもトライしてみようと思っているんですけど、そういうところである種、ライヴのあり方が全部ゼロからスタートするわけじゃないですか。配信よりも生のほうがいいよっていう人もいると思うんですけど、せっかくだからこの機会に、そういう新しいことも覗いてみてほしいなっていうのはありますね。僕も、逆に配信でしかできないことってなんだろうって頭になっているので。そういう風に考えているほうが楽しいし、おもしろい。生に勝るものはないなというのはわかりつつも、配信ライヴという形で、ひとつでもふたつでもおもしろいことを感じてもらえたらなと思います。
◎Information
無観客配信ライヴ
“AKi 2020 「Live Stream #01 -Defeat COVID-19-」”開催決定!
●日時:2020年7月26日(日) START 18:00
※詳細はAKiオフィシャル・サイトにて。
https://www.dangercrue.com/AKi/
【お知らせ】
7月18日発売のベース・マガジン2020年8月号 SUMMERにも、AKiのインタビューを掲載! レコーディングでの音作りや収録曲について、BM webとは違った内容でお届けします!
◎Profile
あき●2003年にシドを結成。2008年11月にメジャー・デビュー記念ライヴを日本武道館にて開催したほか、2010年12月には東京ドーム単独公演を成功させるなど大きな人気を獲得する。シドは2019年9月に10thアルバム『承認欲求』を発表した。2015年からはAKiとしてソロ活動も展開しており、2016年7月には台湾の大型野外フェスに出演するなど、精力的なライヴ活動も展開。2020年6月に1stアルバムから約5年半ぶりとなるフル・アルバム『Collapsed Land』をリリースした。
◎Information
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