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    BADASS ROOKIE〜BMイチ押しのNEWCOMER〜 – Mav[For Tracy Hyde]

    • Interview:Koji Kano
    • Live Photo:Weekendcycler

    INTERVIEW

    呼応する残響音に映える
    多彩なベース・プレイ

    洗練された空気感を纏ったシューゲイズ/ドリームポップを鳴らす5人組バンド、For Tracy Hyde。これまで3枚のフル・アルバムをリリースし、その完成度の高さからジャパニーズ・シューゲイズの大本命と噂されてきた彼らが、2月17日に待望の4th作『Ethernity』をリリースした。これまでにない多彩なサウンドが盛り込まれた今作は、バンドの新たな一面を垣間見ることができる傑作だ。そのなかでベーシストのMavは“攻撃的/堅実性”という二面性を持ち合わせたベース・プレイでグルーヴの根幹を担っている。幻想的なバンド・サウンドのなかで鳴らされる、その多彩なプレイの裏側にせまっていきたい。マジでイカす新人=BADASS ROOKIEを紹介する本企画。BMイチ押しの新世代ベーシストはコイツだ!

    Coaltar Of The Deepersが取り入れる、多くの音楽が自分の血肉になっている。

    ——まず、ベースを始めたきっかけから教えてください。

     僕はもともとギター出身なんですが、高校生の頃に宅録のために友人からベースを譲ってもらったのがきっかけです。人前で初めてベースを弾いたのは大学サークルの新入生ライヴ、ライヴハウスで初めてベースを弾いたのは夏bot(g,vo)が昔やっていたソロ・プロジェクトのライヴ・サポートでした。ただ、中高生の頃に地域の学生オーケストラでコントラバスを弾いていたので、広い意味ではそれが最初だったとも言えるかもしれませんね。

    ——なるほど。ではどういった音楽に影響を受けたんですか?

     音楽全般で言えば、Coaltar Of The Deepers(以下略称、COTD)およびNARASAKIさんの影響が最も強いかと。COTDが取り入れている多くの音楽ジャンルが自分の血肉になっていると感じるんです。また、作曲やアレンジでのアティチュードの面だと、Flipper’s Guitarをはじめとした渋谷系アーティストのキュレーション/オマージュ的感覚を継承してるつもりです。

    ——ベーシストだと、誰からの影響が強いでしょうか?

     ナンバーガールの中尾憲太郎さんやDinosaur Jr.のルー・バーロウですね。加えて、数多くのアニメソング/J-popのベースから影響を受けていると思います。このふたりからオルタナ/インディーロックのガッツのあるピック弾きのプレイを継承しつつ、アニソン/J-popのベース・ラインの流暢さ、多弁さは意識しています。

    左からU-1(g)、草稿(d)、eureka(vo,g)、夏bot(g,vo)、Mav(b)

    ——For Tracy Hydeにはどういった経緯で参加したんですか?

     もともと僕は夏botの昔のソロ・プロジェクトのリスナーだったんですけど、のちに彼と交流するようになって、「M3」という同人音楽イベントで頒布したシューゲイズ・コンピレーションにお互い参加するなどして音楽仲間になったんです。そのときに彼がライヴをするのにベーシストを探していて、ギタリストばかりの宅録シューゲイズ界隈のなかで“ベースを弾ける貴重な人間”ということで(笑)、誘われてベースを弾いたのが前日譚としてまずあるんです。

    ——なるほど。“シューゲイズ”がキーワードとなるんですね。

     その後、結局そのバンド形態は空中分解してしまい、僕はBoyishというバンドに参加することになったんですが、夏botとの交流は続いていたんです。やがて彼が新しくバンドを始めるということで声をかけられたんですが、このときはBoyishとの両立が困難だと思って加入を断ったんですよ。結果、別のベーシストを迎えてFor Tracy Hydeは活動開始したんですが、徐々に初代ベーシストが活動ペースに合わせるのが難しくなって、たまに代打でサポートするようになったんです。そうして代打でのサポートを繰り返しているうちに本メンバーになった、というのが経緯ですね。

    ——For Tracy Hydeはギターが3本ということで分厚いサウンドも特徴ですが、そのなかでベースを抜けさせるのには工夫も必要なのでは?

     前作『New Young City』までは、ギターが3本あるうえに曲によっては音作りが目まぐるしく変わるので、ベースは極端なEQやコンプ・歪みをかけないこと、幅広い帯域が出るようにベースのミックス・トーンを基本の設定にすることで、汎用的な音作りを心がけていたんです。

    ——では今作『Ethernity』では何か変化はありましたか?

     今作ではほとんどの曲でまったく考え方を変えていて。というのもアルバムのイメージ上、“US的で荒々しい感じ”を出したかったので、埋もれるか埋もれないかは度外視で、“この曲だったらこれぐらい歪ませたい”っていう感覚一発で歪ませたんです。あとPB寄りのサウンドが欲しかったので録音ではJBタイプのピックアップをフロントのみにして弾いています。まぁ、埋もれそうな部分はミックス・エンジニアがなんとかしてくれるだろう、と(笑)。

    ——なるほど(笑)。ベース・ラインはどのような流れで作ってるんですか?

     まず主に作曲者である夏botか僕が宅録でデモをフル・コーラスで作って、そのうえでメンバーでスタジオで合わせるなかで多少変化が出るのを反映していく流れで楽曲の制作をしているんです。ベース・ラインはスタジオで基本的なパターンやノリを決めたあと、自宅でDAWにあれこれ録音しながらブラッシュアップしていきます。デモをローカットして流しながら“仮ベース”としてトラック上にベースを何テイクも録音し、OK/NGを部分ごとに判断して“確定ベース”トラックに移しながら構築していく流れです。楽曲構成の流れを考えて、一度確定にしたベースを白紙に戻したり、1番で弾いていたフレーズを2番に切り貼りしたりするような試行錯誤もしますね。フィルの箇所は、一度ベースを置いて鼻歌や鍵盤で弾いてみたあとベースに起こすようなケースもありますよ。

    『Ethernity』Official Trailer

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