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ヴィクター・ウッテンが語った驚異の奏法「ベーシストの親指はギタリストにとってのピック」【偉大なるベーシスト100人】
現在発売中の『ベース・マガジン2025年2月号』の特集企画は、プロ・ベーシストたちによるアンケートで選ばれた“偉大なる100人のベーシスト”をランキング形式で紹介する「THE GREATEST BASSISTS 100」。
ベース・マガジンWEBでは、「THE GREATEST BASSISTS 100」で100位以内にランクインした“偉大なるベーシスト”たちの過去インタビューからその功績を辿る。
今回取り上げるのは、ヴィクター・ウッテン。初のソロ名義アルバム『A Show Of Hands』(1996年)リリース時のインタビューを見ていこう。

僕にとっていつも追求すべきテクニックは、
親指をより楽に動かすことなんだ
驚異的なサムピング&タッピング・テクニックを持ち、ベースの可能性をさらに広めた超絶ベーシスト、ウィクター・ウッテン。ソロ・アルバム『A SHOW OF HANDS』をアメリカでリリースし、あの華麗な技の数々を披露したばかりである。また彼はフォデラ・ベース愛用者としても知られ、4月に日本で行なわれた「フォデラ・スペシャル・クリニック」にも参加、日本のベース・キッズに多大な影響を与えた。それでは来日を果たした彼に、ソロの話、テクニックについて聞いてみよう。
新作は平和と正義を願うレコードさ
全部ベースでアレンジしたんだ
——ソロ・アルバムをアメリカでリリースしたそうですが、それはどのようなサウンドになっていますか?
ベースをとても重視したサウンドで、どの曲もベースを元にして書いたものなんだ。ベース1本でレコーディングしたよ。ほとんどオーバー・ダブなしでね。とは言っても、もちろん声を入れる時などはオーバー・ダブが必要だったけど。
——ご自身で歌ってるんですか?
うん、少しね。子供達の歌とか、人のしゃべり声とかも入ってるよ。たとえばマーティン・ルーサー・キング、マルコムX、僕の父親とおふくろ、そして僕自身も少ししゃべっている。
——マーティン・ルーサー・キング、マルコムXというと、特別なメッセージ性のあるアルバムにしたかった……ということなのですか?
そのとおりだ。世の中の平和と正義を願うレコードさ。ひとことで言うと、このレコードは僕自身の人生についでの作品なんだ。平和と正義のメッセイジは絶えず僕の人生観の一部だった。また僕のおふくろと親父は、いつも僕に平和、正義、人間同士のフェアな関係、気質などについても教えてくれたんだ。
——なるほど。話をベースに戻しますが、今時のベーシストのソロ・アルバムには珍しく、あなたは見事に4弦ベースのみでソロを実行していますよね。
そうだね。僕は原則的に4弦ベースなんだ。でも2曲ほどはテナー・ベースを使ってるよ。それも4弦なんだけど、チューニングがE、A、D、Gの代わりに、A、D、G、Bというふうになっていて、原理は下の2弦を抜いた6弦ベースと同じなんだ。弦はダダリオの6弦用のセットを使っているよ。
——上のほうを使うのであれば、下の音域も出るような5弦とか6弦を使う気にはならないのですか?
たまにね。ベラ・フレック&ザ・フレクトーンズの時は、時々5弦や6弦ベースを弾くこともあるよ。でも4弦が圧倒的に多いね、僕は。
——ソロ用の曲作りはどのように行ないましたか? 作曲はベースでやっているのですか?
そうだね。キーボードはほんの少し弾ける程度だから、曲作りに活用させるのはすごくまれだ。95%はベースを使って曲を作ってるよ。つまり頭の中にあるアイディアがベース・パートのメロディでない場合も、とりあえずはベースで弾いてしまうんだ。
——ところでアルバムで使用したベースはフォデラなのでしょうか? 何かエフェクターなども使いましたか?
うん、フォデラの4弦ベースを2本使った。ひとつは普通のチューニング、もうひとつは例のテナーのチューニングになっているやつだよ。エフェクトとして少々リヴァーブ、それとデジタル・ディレイを使っている。
——あなたのフォデラ・ベースには、より良い音が出るために、あるいは弾きやすくするために、何か特別な工夫がなされていますか?
まずはサウンドをよりブライトにさせるために、ピエゾのステレオ・ピックアップを取り付けているベースを1本持っている。各弦をそれぞれの位置にパンニングできるから、4ヵ所違った方向から音が出るんだ。結果的にはいろんな場所から音が鳴る、ということだけではなくてよりビッグなサウンドが得られるんだ。これを今回のレコーディングにも2曲ほど使用しているよ。
——じゃあヘッドフォンか大きなスピーカーで聴くといいかもしれませんね。
そうしてくれ(笑)! タイトル・ナンバー、7曲目がそれだ。
ベーシストの親指というのはギタリストにとってのピックのようなものなんだ。
——あなたにとって、ベースという楽器の理想像は?
なるべく弾きやすいこと! 弦高はうんと低くセッティングされ、弦のゲージはやや細かがいい。ちなみに僕のゲージは0.40、0.55、0.75、0.95。弦高をこれ以上低くすればきっと音は悪くなるだろうね。もちろんもっと細いゲージも存在しているが、そうするとボトムが減るだろうから、この程度がちょうどいいみたいだね。ラッキーなことに、僕のフォデラ・ベースは弦高をけっこう低くしても良い音が出るんだ。結果はより弾きやすく、かつベースっぽい音が出せるということだね。
それからケーラーのアームを取り付けている4弦ベースも使用しているよ。これを使えば5弦ベースと同じくらいの低い音が出せる。どういうことかと言うと、右腕でアームを押さえて、たとえばEならBあたりまで下げちゃって、Eよりも下の音を4、5音くらいは弾き続けることができる。つまり5弦ベースと同じ低音が出るわけだ。ここ10年ぐらいはアームを使って低音を弾いてるほうが、5弦や6弦を使うことよりも多いと言えるね。
——なかなかトリッキーですね。
でもこれにはアーム用のブリッジが必要なんだよ。それさえ取り付ければ、アクティヴだろうがパッシヴだろうが、どのベースでもOKなんだ。
——ソロ・アルバムをキッカケに新しく開発したテクニックとかはありますか?
ああ、たくさんあるよ。でも僕にとっていつも追求すべきテクニックは、親指をより楽に動かすことなんだ。いかにして2フィンガーの時と同じ安定感で親指を使えるか、これが僕にとっての大きな課題だね。僕の解釈だとベーシストの親指というのはギタリストにとってのピックのようなものなんだ。したがってベーシストはギタリストがピックでするように、親指でアップ&ダウンを交互に行なうことをとてもナチュラルに感じているはずなんだ。僕はそれが自然にプレイできるよう、常に練習し続けている。
もちろん残りの指のプルもね。そう残りの指と強調したのは、やはりギター・プレイヤーの原理に沿って、人差指だけじゃなくて、中指と時には薬指までもフル活用したいからなんだ。それらを使えばフラメンコ・サウンドなども得られる。素晴らしいよ。これをより速くかつ滑らかに弾くようにする。そのグレイド・アップとして、左指でも音をはっきり出すようにし、右でピッキングしたら次に左でハンマリングしてまた右でピッキング……というふうに交互に音を出すんだ。
これらがスムーズにできると、ハープなんかの典型的なローリング効果とかも得られるんだけどね。これをまるで普通の2フィンガー・テクニックの時と同じように何も考えずに弾くということが目標さ。これができたら本当に可能性が広がるし、ちょっとしたフィルインもすごくトリッキーに聴こえちゃうんだ。このテクニックが本当に新しいテクニックであるかどうかはよく知らないけど、僕自身にとってはまだまだ練習が必要なくらいに新しい。(↓インタビュー後篇につづく)
Interview: Fumi Koyasu

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ヴィクター・ウッテンの過去記事
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