PLAYER

UP
スチュワート・ゼンダーが語った理想のサウンドと使用機材:ジャミロクワイ『Travelling Without Moving』期インタビュー【偉大なるベーシスト100人】
現在発売中の『ベース・マガジン2025年2月号』の特集企画は、プロ・ベーシストたちによるアンケートで選ばれた“偉大なる100人のベーシスト”をランキング形式で紹介する「THE GREATEST BASSISTS 100」。
ベース・マガジンWEBでは、「THE GREATEST BASSISTS 100」で100位以内にランクインした“偉大なるベーシスト”たちの過去インタビューでの発言を取り上げる。
今回フィーチャーするのは元ジャミロクワイのベーシスト、スチュワート・ゼンダー。代表曲「Virtual Insanity」を収録する90年代UKソウルの名盤、ジャミロクワイ『Travelling Without Moving』期のインタビューを見ていこう。奏法や影響を受けたベーシスト、機材について明かされている。

以下は、1997年3月号掲載のインタビュー。
なんで今時(?!)と思わせるようなアナログ・サウンドだね。
アルバムを出すごとに急加速で成長していくジャミロクワイ。昨年9月に3rdアルバム『ジャミロクワイと旅に出よう(原題:Travelling Without Moving)』を発表し、タイトルのように全世界を旅している彼らが、4度目の来日公演でついに“ブドーカン”を制覇(しかも2日間)し、熱狂のライヴを行なった。初日(1月19日)が終わったばかりのスチュアート・ゼンダーは終始ゴキゲンで、話の合間もリズムを刻む。ホント、落ち着きのないヤツだ!
——昨夜は素敵なショウをありがとう。前回はちょっと物足りないみたいだったけど、今回の日本のオーディエンスの反応はどうだった?
ああ、やっぱりヨーロッパなんかと比べるといささかおとなしいのは仕方ないね。前回の来日は2年前のことだけど、今回のほうがホールもデカイし音質もグンと良くなった。そういう意味では自分なりに演奏をエンジョイしているよ。“ブドーカン”のサウンドはグレイトだ。ただ、雰囲気的にはもうひとつの赤坂ブリッツのほうが楽しそうだ。オール・スタンディングだからね。
——大きなホールとクラブ演奏の違いは? どっちのほうが好き?
どっちも好きだよ。たとえ日本のファンおとなしくても、僕は演奏することが好きだから、場所がどこでもいつも楽しんでる。でも強いて言えばクラブかな。客が立ってギュウギュウ詰めになって、密着度が高くなるから。
——ステージでは本当に楽しそうにベースを弾いているけど、ライヴ中はいったいどんなことを考えているの?
トーキング・ヘッズのある歌を思い出すんだ。“いつもの自分とは違う自分が自分の隣りに立っている”……そんな気分になることについての歌さ。まあ、何でもいいけど、あそこのベースの女(編集註:ティナ・ウェイマス)はスタインバーガーかなんか弾きやがってなかなかイカしてるよな。
あと、彼らのショウ(編註:80年代の同バンドのツアー・フィルム『Stop Making Sense』)では、ひとりがふたり、3人、4人……というふううに次第にバンドが大きくなり、ビッグ・ショウに展開していき、ひとりひとりが自分の存在を意識せざるを得ない立場に置かれるんだ。
“俺はいったい何者なんだろう”と。僕も同じように自分が自分じゃないみたいで、ビジネスとかそれにまつわるバカげたことにいろいろと関わる自分と、本来の自分とのギャップを考えさせられる今日この頃さ。まったく“Who am I ?”って聞きたいくらいだよ(笑)。
——セットリストは日によって変わるの?
だいたい決まっている。ヨーロッパと日本とではほとんど同じだ。このあとアメリカへ行くわけだけど、セットリストを改めようという話もあるようだ。たぶん何曲か増やすんだろうね。
——理想のステージ……それはどんなもの?
地に両足が付いた、ちゃんとしたサウンドで、かつファンキーでテンションの高い場所にいくことだ。
——では理想のサウンドとは?
なんで今時(?!)と思わせるようなアナログ・サウンドだね。渋いスネアの音、ハイハットとバスドラ……ドラムにはかなりこだわるほうだ。たとえ打ち込みを使うとしても、基本はアナログ。デジタルでそれっぽい音を出すにはライヴ・ドラムなどをサンプリングして、ミッド・レンジを上げるとかなり渋いアナログ・サウンドが作れる。
もうひとつの理想サウンドの見本は80年代のプリンスのプロダクションだ。『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』に入っている「ラズベリー・ベレー」のヴォーカル・ライン。それと、『1999』というアルバムのすべて。まあ、プリンスは音的に言えば基本中の基本かもね。
——前回の取材時(94年)以来、機材とか、増えたり変わったりした?
あまり変わっていないよ。ベースは相変わらずワーウィックを使っている。今回は5弦に移ったけどね。アンプはトレース・エリオットだ。トレースがスポンサーなので、弦もそこのを使っている。
変わったのはそのくらいで、特別なのはゲージかもしれない。.035 -.100mmなんだ。
——細いね。
ルーズなG弦はベンディングがしやすくて楽しい。スラッピングの時は、ゼーゼーした音がして面白いんだ。喘息にかかってるみたいな(笑)。
——エフェクト類は?
ボスのマルチ・エフェクター、ME-8B、それからミュートトロン。あとはDODから出ているMeatboxというコンパクト・タイプのサブ・ハーモニック・フリーケンシーも使う。
——ワーミー・ペダルのような音がするのはどれ?
ME-8Bの中の音だと思うよ。嬉しいのはこれのおかげでペダルが多くいらないってことだね。このマルチ・エフェクターにはリング・モジュレーターというのが入っていて、それはバイクの走る音みたいな今までなかったエフェクトなんだよ。
ほかにもワーミーふうのもの、4度や5度の上下を出すやつもある。いわゆるシンセ・ベースはもちろん、これひとつでありとあらゆることができるよ。それとヒューマナイザーってのを使って“ワウワウ”って音も出せる。ミュートトロンを除けばすべてのエフェクトをこれひとつで出せる。基本的には足で操作をしている。けれど使いまくっているわけではないさ。
続きを読む → 「スタンリー・クラークとジャコが一番のヒーローだ」
※ベーマガWEBサブスク会員へのご登録が必要です。
Interview:Fumi Koyasu
スチュワート・ゼンダーの過去記事
2017年3月号

※ベーマガWEBサブスク会員へのご登録が必要です。
2013年6月号

※ベーマガWEBサブスク会員へのご登録が必要です。
1995年5月号


※ベーマガWEBサブスク会員へのご登録が必要です。
特集「THE GREATEST BASSISTS 100」でスチュワートが何位にランクインしたのかは、ぜひ『ベース・マガジン2月号』で確かめていただきたい(Amazonでの購入はこちら)。
またサブスク会員に加入いただけると、創刊号から最新号まで40年分の『ベース・マガジン』がオンラインで読み放題! こちらもぜひご利用ください。
ベース・マガジンのInstagramアカウントができました。フォロー、いいね、よろしくお願いします!→Instagram