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ミシェル・ンデゲオチェロが語った「グルーヴでインプロヴァイズすること」【偉大なるベーシスト100人】
現在発売中の『ベース・マガジン2025年2月号』の特集企画は、プロ・ベーシストたちによるアンケートで選ばれた“偉大なる100人のベーシスト”をランキング形式で紹介する「THE GREATEST BASSISTS 100」。
ベーマガWEBでは、本誌のバックナンバーから「THE GREATEST BASSISTS 100」で100位以内に登場した“偉大なベーシスト”の過去記事を取り上げる。
今回取り上げるのは、ミシェル・ンデゲオチェロ。彼女が本誌の表紙を飾った2005年4月号の特集「R&B / HIP-HOP STYLE」から、インタビューの一部をご紹介しよう。
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私はグルーヴでインプロヴァイズすることを目指している数少ないベーシストなのよ。
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93年のソロ・デビュー作で、新感覚のHIP-HOPアーティストとして、あるいはR&B/SOULの正統継承者として、卓越したグルーヴ感覚を操る女性ベーシストとしてシーンに現れたミシェル。あれから12年、5枚のソロ・アルバムを経て彼女が挑むのは“ジャズ・アルバム”と自らが称する作品だ。自らのベース・ループを軸に生楽器によるインプロヴァイズで構成されたその刺激的なセッションは、いわゆる“ジャズ”とは似て非なるものだが、どのトラックにもミシェル印と呼べるグルーヴが横たわっている。ディアンジェロ『ヴードゥー』によって始まり、今や過渡期にあると言っても良いR&B/HIP-HOPの、次なる地平を指し示す作品とも呼べるだろう。
——一般的に、あなたはHIP-HOPアーティストのひとりとして見られているようですが、あなたの音楽は、たとえばドラム・マシンを大幅に取り入れたものであっても、生身の人間がやっているライヴ・ミュージック感覚を持っていて、これが一般的なHIP-HOPとあなたの音楽との大きな違いだと思います。
MN ええ、そうね。
——ところが、あなたはソロ・デビュー・アルバム『プランテーション・ララバイ』(93年)の音楽を、自ら“オルタナティヴHIP-HOP”と呼んでいました。あなたが“HIP-HOP”という言葉を使う基準は何ですか?
MN あのアルバムを出した当時、私には“オルタナティヴHIP-HOP”と呼ばれるムーヴメントの一部で活動しているという意識があったから、そう言っていたんだと思うわ。でも、音楽は時が経てば変化するものだし、ある形容が常にその音楽に相応しいものであり続けるとは限らないということがわかったから、自分のやっていることもただ“音楽”と呼ぶことにしたの。HIP-HOPという言葉にしても、『プランテーション・ララバイ』を発表した93年当時はまだ、コマーシャリズムなんかの影響がそれほど及んでいない、自由な音楽というイメージがあったけれど、人生のあらゆることと同じように音楽も常に変化して、当初HIP-HOPという言葉から連想された音楽とは、今のHIP-HOPは違うものになってしまった。それで、自分のやっている音楽を正確に表現する言葉がなくなってしまったから、ただ単純に“音楽”と呼ぶほうがいいと思うようになったわけ。
——90年代には、ア・トライブ・コールド・クエストのように、ドラム・マシンで人間のドラマーのようなグルーヴの揺れを再現するアーティストが出てきましたが、近年ではさらに、そういった揺れを再現したドラム・マシンのグルーヴに影響を受けたドラマーが出てきました。あなたはこういった現象に興味を持ったり刺激を受けたりしましたか?
MN もちろんよ。ザ・ルーツのクエストラヴみたいなドラマーは、私のドラマーに対する考え方を変えたから。結局、私はそれに合わせてダンスできるなら、どんなグルーヴでも構わないのよ。ループを利用したドラム・ベースのグルーヴにしても、もっと機械的なグルーヴにしても、ダンスのできるいろいろなスタイルを生·み出したという意味で、とても面白いと思うわ。
——とはいえ、あなた自身はドラム・マシンを使う際に、人間のドラマーをシュミレートしてはいませんよね。
MN ええ。私がマシンを使うときには、人間のドラマーを超越する能力を求めているから。
——生身のドラマーのグルーヴが欲しければ、人間のドラマーを雇えばいいわけですからね。
MN そうよ。そういうときには、生身のドラマーに必要な能力を発揮してもらえばいいんだから、機械で真似するんじゃなくてね。
——最近では、ア・トライブ・コールド・クエストのような音楽の延長として、R&B/HIP-HOP(NEO SOUL)と呼ばれる音楽が流行っていますが、あなたはこのムーヴメントに対してどういう立場を取っていますか?
MN 私は、やりたい音楽を共有できる相手となら、いつでも喜んで一緒に音楽を作りたいと思っているけれど、ただ流行っているからというだけの理由でそれに飛びついたりはしない。みんなが“R&B/HIP-HOP”と呼んでいる音楽も、音楽自体は特に新しいものじゃなくて、新しい楽器が新しい色彩感を添えているだけだと思う。ブルースを基盤にした音楽であることに変わりはないから、グルーヴは少し違うかもしれないし、楽器も違うだろうけれど、それ以外の部分はそれほど大きく変わってはいない。私は同じ愛情を音楽に注いだ人たちと仕事ができれば、それで満足よ。
——すでに知られているように、あなたは子供の頃からジャズの影響を強く受けているいっぽう、ワシントンを拠点に活動していた頃には、ゴーゴーを中心としたダンス・ミュージックを多く演奏した経験を持っています。ジャズでは、周りで鳴っている音に瞬時に反応しながらインプロヴァイズする能力が求められるいっぽう、ゴーゴーやファンクなどのダンス・ミュージックでは、グルーヴに催眠効果を発揮させるために、一定のパターンを延々とくり返すことが肝心ですよね。
MN ええ。
——あなたは新作『ザ・スピリット・オブ・ミュージック・ジャミア』で、もっぱら一定のベース・ラインを刻み続けることで、他のミュージシャンたちがインプロヴァイズするための土台を提供しているようですが、あなたにとってふたつの大きな背景になっている、ジャズとダンス・ミュージックの影響を組み合わせるには、今のところこのアプローチが最良の方法だと思いますか?
MN ええ、そう思うわ。知らず知らずのうちに身体が動き出したり、トランス状態になったりするのでなければ、グルーヴな音楽だとは言えないもの。私はジャズが大好きだけれど、自分としては音楽を聴く人たちの手がかりになるようなグルーヴが常にある音楽を作りたいと思っているの。インプロヴァイズする人たちには、感情的にも精神的にも感じるままに演奏してもらいたいけれど、手がかりになるグルーヴがあるっていうのは、私にとってはものすごく大切切なのよ。
——あなたも以前には、頻繁にジャム・セッションをしていたそうですが、あなた自身はインプロヴァイザーとしての経験をどんな形で新作に活かしていますか?
MN 私はソロイストという意味でのインプロヴァイズはしないけれど、グルーヴでインプロヴァイズすることを目指している数少ないベーシストのひとりだと思っているの。ベース・ラインを弾きながら、次々といろいろなグルーヴをつなげていくっていうのが、私のユニークなスタイルなんじゃないかしら。
——グルーヴに乗って延々とインプロヴィゼーションを展開する手法といえば、マイルス・デイビスの音楽もそうですよね。60年代のマイルス・クインテットも、スウィング・グルーヴに乗って延々とインプロヴィゼーションを展開していましたし、70年代にはヘヴィなファンク・グルーヴを取り入れていました。当時はかなり批判もされていたようですが。
MN 批判する人たちっていうのは、充分に洗練されていないから新しいものを否定するのよね。でも、マイルスは、どんな音楽でも演奏が得意、つまり、やり方を工夫すれば、どんな音楽でもインプロヴィゼーションの土台に使えるということを証明して見せたんだと思う。80年代に入ると、彼はシンディ・ローパーの曲を取りあげて、さらに違う形で同じことを証明したじゃない。(※マイルスがカヴァーしたシンディの「タイム・アフター・タイム」のこと)。70年代のマイルスは私にものすごく大きな影響を与えてくれた。マイルスは40年代から50年代にかけてすでに人気を確立していたけれど、彼はそれに満足しないで、60年代や70年代に生まれた楽器を使って、さらに新しい音楽を作って見せた。彼は決して同じ場所に留まらず、常に変化し続けた。彼のそういう姿勢から多くのものを学んだし、彼が踏み込んだあらゆる領域の音楽から影響を受けたのよ。(↓つづく)
Interview: Akira Sakamoto
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ミシェル・ンデゲオチェロの過去記事
1994年3月号
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1994年7月号
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1996年8月号
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1997年3月号
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2002年8月号
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2004年1月号
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2007年9月号
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2012年3月号
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2014年1月号
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2024年2月号
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