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INTERVIEW – 田淵智也[UNISON SQUARE GARDEN]

  • Interview:Zine Hagihara
  • Photo:Viola Kam(V’z Twinkle)

サビがキャッチーであることに関して、
圧倒的な自信があります。

━━3人で合わせることで、楽曲がデモの状態から発展していくんですね。

 「マーメイドスキャンダラス」、「Hatch I need」とかもそうですね。僕はマイナー調の曲は作るのがとにかく苦手なんです。でも、ひとりで作業してピンとこなくても、バンドで合わせたらよくなることが多いですね。作っていくなかで“これはいい曲になるのかな?”と思うようなものでも、バンドでやったらどうせカッコよくなるっていうのは、今作でも「マーメイドスキャンダラス」などが一番象徴的かもしれないです。

━━「夏影テールライト」はベース・ラインに関しても、ゴーストノートが入るタイミングが緻密であったり、ときには細かい16分音符が入ったりとフレーズの作り込みが細かいですよね。

 それに関しては“3人でやるから”ということかもしれません。ドラムが4つ打ちなんですが、ルートを弾いているだけではかなり普通の曲になってしまうので、いろんな音楽を聴いたなかで取り入れたダンサブルな要素を入れていったっていう感じです。

━━なるほど。

 いろんなダンサブルなバンドを聴いていると、4つ打ちのキックに対するベース・フレーズが凝っているっていうものがあって、そういうものを意識しているところもあります。つまり、休符だったりの入れ方を工夫することでただの4つ打ちビートに聴こえないようしているというか。ダンサブルなグルーヴが特徴的なバンドからしたら僕のは“なんちゃって”なのかもしれないですけど、UNISONのライヴで演奏することを考えたときに、4つ打ちに対してベースがサボっちゃうと普通のビートになってしまうだろうし、それは僕らがやってもカッコよくないと思うんです。

━━「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」は、スウィングするビートにロックのアレンジを組み合わせていておもしろいですね。ベースもグイグイと揺らしてノリを作っているのが印象的です。

 実はこの曲はthrowcurve(スロウカーヴ)というバンドのオマージュ・ソングでして。2000年代に下北沢のシーンにいたのですが、そのバンドがめちゃくちゃ好きで、本人に許可をとってオマージュさせていただいています。オルタナの血を受けながらも、コミカルなギターのアプローチだったり、ちょっと腑抜けた感じのリズムの歌でダンサブルな空気を作っていて。そのグルーヴ感はめちゃくちゃ意識していますね。サビに関してはUNISONらしく、ちょっと開ける感じになっていますけど。

━━ “サビで開かれるイメージ”という点に関しては、これまでのUNISONの多くの曲に言える特徴だと思うんですが、それはやはりこだわりのポイントなのでしょうか?

 そうですね。僕の作曲のクセでもあるし、サビがキャッチーなものが好きなんです。そうでないものの良さがあまりわからないのもあって、自分が作るときにも自信が持てないんですよ。それでも最高な曲もありますけどね。これはUNISONでずっとやってきたことで、例えば僕らの音楽を喜んで聴いてくれている人に“どこがいいの?”と聞いたら、たぶん何個目かに“サビがキャッチー”って挙がりそうな気がするんですよね。ツアー中もずっと曲を作っているんですけど、途中で全然よくなくて最後まで書かなかった曲は、たぶんサビがよくなかったんだと思います。

━━なるほど。その考えがあるからこそ、UNISONは15年も活動が続いたのかなと感じました。

 そうだとしたら嬉しいですね。やっぱり、自分の曲の好きなところだったりするので、世の中のほかの曲を聴いても、サビがしっかりと開く曲に関しては周りから評価を得られなくても圧倒的に自信があります(笑)。胸を張ってやってきた部分でもあるし、僕らが全然鳴かず飛ばずだった頃も客が離れないでいてくれた理由ももしかしたらそうなのかもしれない。そう考えると、僕的には意図的にやっていたところではあるんですけど、作り手の自分と客の間でWin-Winな関係と言えるのかなと思います。UNISONの強みであることは間違いないので、この方向性は今度も変えたくないですね。

━━アルバムについて話を聞いていきましたが、最後に改めてこの作品はどのような1枚になったと思いますか?

 曲順や内容の凝り方としては、僕がここ何十年のなかで思ってきた“こういうのがあったらいいじゃん”という要素をてんこ盛りで詰められたアルバムになったと思います。前作でもそれはありましたけど、派手な『MODE MOOD MODE』に対して、今回はストリングスだったりっていう派手さはなくても、3人ができることだけでスリリングな流れを生み出せるっていう。そこがUNISONのおもしろいところだなと思いますね。

【Equipment】

今作のレコーディングでメイン・ベースとしてほとんどの楽曲で使用されたサゴニューマテリアルギターズ製のTabuchi Mk-IIは、今年の春にリリースされたばかりの最新シグネイチャー・モデルだ。ボディはアルダー、ネックはメイプル、指板は人工素材のリッチライトという材構成で、ネック内部にはカーボン製のサポート・ロッドが埋め込まれており、安定性の高いネックを実現。ピックアップはノードストランド製Big Single4を搭載し、田淵の激しいステージングが考慮してコントロールは1ヴォリューム1トーンを備える。こちらの記事でも詳しく解説しているので合わせてチェックしてほしい。
【3ピース・バンドにおける実践度をさらに高めた、UNISON SQUARE GARDEN 田淵智也の新シグネイチャー・モデルが登場!】

◎Profile
たぶち・ともや●1985年4月26日生まれ、東京都出身。2004年に斎藤宏介(vo,g)、鈴木貴雄(d)とともにUNISON SQUARE GARDENを結成し、バンドのほとんどの作詞作曲を行なう。2008年にメジャー・デビュー。バンド外の活動としてさまざまなアーティストへの楽曲提供およびベーシストとしての客演など多方面で活躍する。バンドは2019年で結成15周年を迎え、トリビュート・アルバムやB面曲集などを展開。そして、2020年9月に8作目となる待望の新アルバム『Patrick Vegee』を発表した。

◎Information
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