NOTES
UP
【Live Report】 チョパレボ & Bass Friends – 2022年11月21日(月)/ビルボードライブ東京
- Report:Kengo Nakamura
- Photo:Masanori Naruse
チョパレボ & Bass Friends
BASSIST:鳴瀬喜博、IKUO、村田隆行、清水興、KenKen、芹田珠奈、Tetsuya(Fear, and Loathing in Las Vegas)、フクダヒロム(Suspended 4th)、月野もあ
●2022年11月21日(月)●ビルボードライブ東京
ジャンルや世代を超えた低音祭りが今年も開催!
今年結成10周年を迎えた、鳴瀬喜博、IKUO、村田隆行によるトリプル・ベース・ユニット、“チョパレボ”ことThe Choppers Revolutionが、11月11日の“ベースの日”にちなんだスペシャル・イベント“Bass Day Special Month チョパレボ&Bass Friends Vol.2”を開催した。タイトルにもあるように第二回目となる今回も、昨年に続き会場はビルボードライブ東京だ。
オープニングは、現役アイドルとして史上初めてビルボードライブへの登場となる仮面女子。選抜メンバー7名によるパフォーマンスで、センターでは月野もあが自身のシグネイチャー・ベースを持ち、「Fanfare」のアグレッシブなイントロで図太いサムピングを聴かせる。キャッチーなサビではオクターヴで軽快に楽曲をハズませたり、展開部分ではロックな下降フレーズを入れたりと楽しそうにベースを弾いた。昨年は最後のセッションのみでの演奏だった月野だが、今年は“ベーシスト、月野もあ”を存分にアピールできたのではないだろうか。
ステージには仮面女子と入れ替わりチョパレボの3人が登場。さらにステージ両端に置かれた2台のドラムセットに川口千里と坂東慧、さらにキーボードの白井アキトも持ち場につき、今年リリースの最新アルバム『FAN×K』から「チョパレボ・ショッピングPart3」をツイン・ドラムの爆裂フィル、そして鳴瀬の強烈なダウン/アップから始める。それぞれが音域や役割を分けながらまさに“ベース・アンサンブル”していき、ソロ・セクションでは、ギターのようなカッティングからタッピングも交えた鳴瀬、粘りのあるスラップから指弾きでのスタイリッシュな旋律を奏でた村田、詰め込みスラップからスムーズな指弾きのIKUOと3者3様のスタイルを聴かせ、曲の締めは3本のベースによるユニゾンにツイン・ドラムの迫力が加わり、すさまじい圧力を感じさせた。
続いては、注目の女流ベーシスト芹田珠奈が登場。チョパレボからは村田が、ドラムは芹田とThe Jazz Avengersでリズム体を組む川口が残り、タワー・オブ・パワーの「What Is Hip?」を。村田のダウン/アップを軸にしたパーカッシブな16分スラップに乗って芹田が粒立ち良くメロを絡め、村田がMCで話していたようにマーカース・ミラー版の雰囲気で展開していく。ソロは互いにR&B由来のアプローチをかけ合いながらすごい勢いでテンションを高めて行き、続くキーボード・ソロの後半をWスラップで煽りまくったのも圧巻だった。
芹田を迎えたセッションは、ドラムが坂東に代わり、IKUOが入ったトリプル・ベース編成で『FAN×K』収録の「Trifold in G」へと続く。村田のスラップ・リフに芹田のパワー・コードが合わさる重厚なグルーヴで、IKUOによるギターのような音色でのメロディもおもしろい曲。2回しあったソロでは、前半が芹田のハイポジでの色気のある指弾き、村田のアタック感を生かした指弾き、IKUOが細かくクールなスラップと続けたあと、芹田の弾き姿も豪快なスラップを、さらに手数を多くして村田がつなぎ、それを受けたIKUOがさらにギアを上げてたたみかけるなど、3人で盛り上がりを作っていたのが見事だった。また、幾何学的に折り重なるベース・リフにとんでもない手数のドラムが絡んでいく部分は、ベースのオクターヴ下の音も合わさって、強烈な音塊を生み出していた。
村田と芹田に代わりFear, and Loathing in Las VegasのTetsuyaがステージに。曲はIKUOと村田のユニットI.T.Rが昨年発表した1stアルバム『「Bass Life Goes On」~今こそI.T革命~』収録の「Bass Hunter」で、冒頭からのテクニカルなハモリ・フレーズもバッチリと決め、スピード感あふれるフレーズでスリリングに駆け抜けていく。テクニカルさだけでなくメロディアス要素も感じさせたTetsuya、親指も駆使したマルチ・フィンガーでの粒立ちのいい速弾きのIKUOといった各人のプレイはもちろん、キーボード・ソロを盛り立てるバックでのふたりのスラップの音数もヤバい。ソロ・プレイだけでなく、こういったバッキングに回ったときのアプローチのおもしろさも、チョパレボが掲げる“アンサンブル&エンターテインメント”の楽しみどころだ。
IKUO、Tetsuyaに加え、Suspended 4thのフクダヒロムが、さらにはドラムに川口も加わって始まったのは、『FAN×K』収録のテクニカル楽曲「So Bad」。3人での高速スラップによるイントロに始まり、サビではフクダのスラップ・バッキングのうえでIKUOとTetsuyaが軽快にハモる。そしてソロ・セクションでは、曲前MCでIKUOにベースの位置が普段より高いことを指摘され“本気モード”と答えたフクダが冒頭からフルスロットルで飛ばしまくり、それに引っ張られるようにTetsuyaとIKUOも手数を増やしまくる。マシンガン・スラップ、超高速ロータリー、タッピングなど、これでもかのテクニカル祭りであり、3人合わさっての音数祭りでもあるが、さらにそこにツイン・ドラムが怒涛の16分バスドラや2ビートで煽りまくる激烈さと言ったら! 今回の公演でも屈指のロック・テイストによる速すぎ&弾きすぎセッションとなった。
続いて、IKUOとフクダが残ったステージにKenKenが登場し、現代のベース・ヒーローが肩を並べる。KenKenとフクダは昨年も参加していたもののふたりでの共演はなかったので、この並びを楽しみにしていた人もいるだろう。MCもそこそこにKenKenが弾き出したスラップ・リフは「Play That Funky Music」。言わずと知れたファンクの名曲で、KenKenがヴォーカルをとり、自然と体が揺れるファンク・ビートが展開する。ソロでは、フクダが骨太な指弾きから入り隙間も作りつつパーカッシブなスラップを、KenKenがタメとウネりを効かせた指弾きと太さとアタックを混ぜ込んだスラップを、そしてIKUOはリズムのおもしろさも入れたスラップから切り込む指弾きという流れで聴かせ、テクニカル・ベーシストである3人とも、詰め込むだけではないアプローチだったのがおもしろかった。
ライヴもいよいよ終盤戦。チョパレボの3人にKeKenを加えた編成で、村田が“このリフはKenKenをイメージしていた”という「Cat’s Power 〜Pileup Effect〜」を、チョパレボの音源同様に川口&坂東のツイン・ドラムで披露した。鳴瀬はアームを使いながらメロディを奏で、ツイン・ドラムにKenKenの攻撃的なパーカッシブ・スラップが加わり、もう“圧”がとんでもないことに。また、ソロでのギターのような音色で暴れまくる鳴瀬のオトナゲなさもとんでもないことに(笑)。さらに、絡み合い重なり合い“リズムのアンサンブル”を堪能できたツイン・ドラム・ソロも白眉と、さまざまな角度からの聴きどころを楽しめたセッションだった。
今回の最後のセッションで登場したのは清水興。チョパレポ3人に率先して清水のリフから始まった「Funk On」は鳴瀬がカッティング・アプローチをするオシャレな雰囲気のディスコ・ビートで、会場はグルーヴ・タイムに。清水の極太で絶妙な音価の4分打ちがなんとも心地よい。このシンプルなビートをここまで揺らすことができるのはさすがのひと言だ。楽曲中盤のキメのリズムのあとは清水が殴りつけるようなスラップ・ソロでテンションを高め、鳴瀬の軽快なラップとMCパフォーマンスで盛り上げた。曲が終わり鳴瀬と清水が饒舌なMCで会場の爆笑を誘っていると、村田が演奏時間の切迫した時計を何度も示し、渋々ながら(笑)MCを切り上げて、鳴瀬と清水が敬愛するラリー・グラハム(グラハム・セントラル・ステーション)の「Turn It Out」へ。鳴瀬と清水がベースを弾き、清水が歌う。間奏では鳴瀬が原曲よりも図太いディストーション・ベースを鳴り響かせた。鳴瀬と清水によるセッションはもう1曲、ソウル・バラードの名曲であるボビー・ブランドの「Members Only」を。鳴瀬はギター的なアプローチのフレーズを聴かせ、清水の包み込むようなボトムの低音と滋味ある歌声が優しく染み入る。今回の濃厚すぎる怒涛のステージを締めくくる、映画のエンディング・ロールのような心地よい流れだった。
しかしライヴはこれではもちろん終わらない。最後は本日の出演ベーシストが全員ステージに集結し、グラハム・セントラル・ステーションの「Release Yourself」に突入。鳴瀬がメンバー紹介も兼ねながら仕切って回したソロでは、芹田は太くしなやかなスラップと指弾き、IKUOはさらりと余裕を感じさせるテクニカルさ、フクダは超音数勝負、清水はロー・ポジションとハイ・ポジションを行き来する視覚的にもインパクトあるプレイ、村田はエフェクティブな音色からの叩き込み、Tetsuyaはスピーディでテクニカルなスラップ、そして月野が激しく頭を振りながら指板を叩きまくるなど、思い思いのプレイを聴かせる。そして、鳴瀬が観客にビートに合わせた8分でのハンドクラップを要求して会場を盛り上げていく……が、KenKenを忘れていたようだ(笑)。これにみんなが爆笑しつつ、ひと悶着しつつ、鳴瀬も苦笑い。満を持しての登場となったKenKenはキレキレで発音のいいスラップ・プレイで観客を魅了。やはりこの人のプレイには華がある。そしてエンディングは、鳴瀬の“全員で「Pow」やるぜ!”のひと言から、全員で「Pow」を32小節プレイ(笑)。昨年とはまた趣向を変えた低音祭りは、カオスな低音に包まれて大団円を迎えたのであった。
■2022年11月21日(月)@ビルボードライブ東京
セットリスト
01.「Fanfare」(仮面女子)
02.「チョパレボ・ショッピングPart3」(The Choppers Revolution)
03.「What Is Hip?」(村田隆行 & 芹田珠奈)
04.「Trifold in G」(IKUO、村田隆行 & 芹田珠奈)
05.「Bass Hunter」(IKUO & Tetsuya)
06.「So Bad」(IKUO、Tetsuya & フクダヒロム)
07.「Play That Funky Music」(IKUO、KenKen & フクダヒロム)
08.「Cat’s Power 〜Pileup Effect〜」(The Choppers Revolution & KenKen)
09.「Funk On」(The Choppers Revolution & 清水興)
10.「Turn It Out」(鳴瀬喜博 & 清水興)
11.「Members Only」(鳴瀬喜博 & 清水興)
12.「Release Yourself」〜「Pow」(全ベーシスト)