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【第81回】ライヴでめちゃ緊張! ヤバい! ってときの対処法 パート1 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜
- Text:Jun Ishimura
ライヴでめちゃくちゃ緊張して演奏がヤバい! っていうとき、どうしていますか?
ライヴ前とかライヴ中に少しくらい緊張するのはいいけど、緊張し過ぎると、テンポがハシったり、間違えたり、いろいろ問題が起きます。僕も昔はよく緊張し過ぎてライヴ中に手や足がつったりして結構困ってましたね。
でも、精神的な緊張を直接なんとかしようとしても、そう簡単にはほぐれないですよね。僕の場合どうしてるかというと、間接的に対処します。
緊張への対策① 呼吸
まずは呼吸に働きかけます。簡単に言えば“深呼吸して落ち着こう”ってことです。
人体の動きとか働きって、意識が司っている領域と、潜在意識が司っている領域があります。意識の領域っていうのは、立つとか座るとか、手を伸ばすとか、ベースを弾く、みたいな“動作”がメインです。逆に、無意識の領域は、心臓とか消化とか血流のような内臓の働きや、瞬きとかくしゃみ、髪や爪が伸びるとか、そういう本能的なことがメインです。
精神的に緊張すると、いろんな形で体に表われます。心拍数が上がるとか、手足が震えたり冷えたりとか、視野が狭まるとか、呼吸が浅くなるとか。こういうのをなんとかしたいわけだけど、これはどれも潜在意識の領域で自動的に動いているので、意識して変えようとしてもなかなか変わらない。
ただ、意識と潜在意識の両方の領域にまたがっている機能があって、そのひとつが呼吸です。呼吸は、まったく意識しなくても自動で働きますが、意識的に深くしたり、ゆっくりしたりもできます。緊張してるときは呼吸は早く浅くなりますが、リラックスしているときは自然とゆっくり深くなります。なので、緊張してるときでも、意識してゆっくり深い呼吸を続けてると何らかの形で潜在意識が影響されて、精神も心拍数も落ち着いてきます。
ただ、呼吸が浅いときに息を深く吸い込もうとしても難しい場合もあるので、まずはゆっくりしっかり息を吐く。そうすると、そのあと自然に深くたくさん息が入ってきます。あと、深呼吸1回だけじゃなくてしばらく続けること。このへんがポイントですね。
緊張への対策② 姿勢
もうひとつ、精神的に緊張すると、顔の表情筋も含めていろんな筋肉がこわばったり、縮こまった姿勢になりがちです。これに対しては、力を抜いたり、別の姿勢を取ったり、というように直接働きかけることができます。
内面の状態と姿勢はペアになっています。落ち着いてるときの顔や姿勢、嬉しいときの顔や姿勢、落ち込んでるときの顔や姿勢、緊張しているときの顔や姿勢。内面の状態を直接変えるのは簡単じゃないですが、姿勢や表情を変えることはできます。緊張した表情を緩めたり、笑顔を作ったり、ガッツポーズしたり小躍りしたりしていると、それにつられて内面の状態もその表情や姿勢に対応したものにだんだん変わっていきます。
緊張への対策③ 習慣
対策①②は知っていた人も多いと思うんですが、この対策③が一番重要かもしれません。それが習慣です。緊張してる!っていうのは緊急事態ですよね。そういうタイミングでいきなり呼吸や姿勢に働きかけようとしても、なかなか難しい。普段から、日常的に深呼吸したり体の緊張を緩めたりして意識的にリラックスすることに取り組んで慣れておくと、いざそれが必要になったときにもやりやすいし、効果も出やすいかな、と。習慣の力は大きいですから。
ということで、意識的にリラックスできるようになって、頼られるベーシストを目指しましょう! 石村順でした。
石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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