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【第74回】新曲に着手する前に確認すべきこととは? 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

これから新曲に取りかかるぞ、というときに、いきなり1音目から練習し始める前にまずやることがあります。

今回は、新曲に取りかかるときに、実際に指を動かし始める前に僕が確認していることを紹介します。

これは特に、日々いろんなアーティストのいろんなタイプの楽曲を演奏するセッション系/サポート系のベーシストにとって絶対押さえておいたほうがいいポイントだと思います。でも、じゃあバンドマンには関係ないかっていうとそんなことはなくて、メンバーが新曲を作ってきたからベース・ラインを作る、とか、コピバンで新しい曲に取りかかるっていうときに必ず確認すべき大事な工程だと思います。

僕が曲を弾き始める前にまず確認していることは、グルーヴ(フィール)と曲調、音色、キー、奏法、などです。

グルーヴ(フィール)と曲調

曲を初めて弾くときにまず最初に確認するのは、その曲のグルーヴ(フィール)の種類と、曲調ですね。グルーヴの種類っていうのは、例えばファンクなのか、ロックンロールなのか、R&Bなのか、それともヒップホップ、ジャズ、レゲエ、ラテン、サンバなのかっていう、いわゆるジャンル名とイコールとまでは言わないけどおおよそカブっている、そういうグルーヴの種類ですね。もうこれは楽曲の土台の土台なので、これを理解せずに演奏するのはありえないです。

あとハネているのかストレートなのか、そしてハネている場合のハネ具合とかも超大事なポイントなので確認します。

そして曲調ですね。例えば、R&BはR&Bでもスロー・バラードなのかアッパーなのか、みたいな違いを把握しておきます。“あの人みたいだな”“あの曲と似た方向性だな”みたいな具体的なアーティスト名とか曲名をイメージすることもよくあります。

音色

次に確認するのは音色です。これはグルーヴとか曲調にもめちゃくちゃ関係してきます。その曲調に合った音色で弾かないと、どれだけうまく演奏できてもしっくりこないものです。僕は、どのピックアップで弾くかとか、トーンをどうするかとか、誰々風の音色、あの曲風の音色、みたいなイメージをはっきりさせます。

キー

次にその曲のキーを特定します。その曲の中心=トニックはどれか、今弾いているフレーズのコードはキーの何度のコードなのか、そういうことを理解していないと、よくわからずにただ指を動かしているだけ、ただコードに沿って弾いているだけになってしまいます。キーや、コードの相対関係を理解できれば曲を覚えるのも早いし、フィルインを入れたり自分なりにフレーズを変えたいときにも当てずっぽうな音づかいじゃなく音楽的に対応できます。

奏法

あとは奏法を決めます。原曲がある場合はそれを聴いて確認します。それと同じ奏法で弾かなきゃいけないわけじゃないけど、曲によってはその奏法がマストの場合もあります。ピック弾きしかしない、指弾きしかしない、という人の場合でも、曲によってはパーム・ミュートで弾くとか特殊な場合があるので、そういうのを確認します。

参考音源がないまったくの新曲とか、アレンジを全然変えてカバーする場合は、グルーヴや曲調を元に奏法を決めます。

間違えない譜面を作る

これらのことを確認しつつ僕がやるのは、“間違えない譜面”を作ることです。曲をすぐに覚えられる人の場合はそうしなくてもいいのかもしれないけど、僕はそうじゃないので譜面を作ります。ただの譜面じゃなくて、“間違えない”譜面っていうのがポイントです。特にいろんな人とやるセッション系ベーシストの場合、今日はこの人のライヴで明日は全然別のタイプのアーティストのライヴみたいな状況で、やる曲数が多い・曲のタイプも幅広い・リハも1回ずつしかない、みたいなこともあります。そういう状況のなか、リハで、本番で、譜面をめくって見たときに“あれ、この曲どうすんだっけ?”みたいなことが起きないよう、覚書をしっかり作っておくのが大事ですね。譜面のアタマ、左上のあたりに、グルーヴとか曲調、テンポ、音色、キー、奏法とかを必要に応じて書きますね。曲の途中でグルーヴとか奏法が変わる場合はそれも書き込みます。

それに加えて、当然譜面なのでほかに書くべきことがたくさんあります。次回はそれについて説明したいと思います。 石村順でした!

石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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