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【第49回】トーン絞りすぎは要注意!/石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

楽器本体のトーン、絞りすぎていませんか?

張りたての弦のギラギラした音がキラいな人とか、R&Bやブルース、ジャズなどのウォームなベースの音色が好きな人で、楽器本体のトーンを必要以上に絞りすぎている場合があります。僕も、実は以前そういう時期がありました。

トーンって、適度に絞るのはいいんですが、絞りすぎると“アンサンブルのなかで抜けない音”になってしまう場合があるんですよね。もちろん、抜ける抜けないというのは、楽器の個性や品質、曲調、バンドの楽器編成、ライヴ会場の大きさや音響特性にもよるので、本当にケース・バイ・ケース。なのであくまでも一般的な話です。

ベースの場合、基音の音域は400Hzくらいまでで、それより上は倍音の音域なんです。トーンを絞ると削られるハイの音域というのはこの音域で、“アタック感”とか“音程”の聴こえ方に関係しています。それにこの音域は、ピアノやギター、歌、ドラムなどの基音や倍音がひしめいてる音域ですね。なので、ベースの倍音成分はアンサンブルのなかだとほかの楽器にある程度マスキングされるんですよ。だから、ベース単体だとギラついていたり硬めの音に聴こえても、レコーディングやライヴでミックスされた状態で聴くと、ちょうどいいということも多いです。

そういう、“全体のサウンドのなかのベース音”を踏まえずに、ベース単体の音色だけで判断してトーンを調節すると、絞りすぎてしまう場合もあるんですね。そういう音は、いざアンサンブルのなかで聴くと、アタック感がぼやけてリズムが見えにくくなったり、音程がわかりづらくなって、結果的に音が抜けない/埋もれる原因のひとつになりえます。だから、リハでもライヴ本番でもレコーディングでも、アンサンブルのなかで適切な音量バランスでベース音を聴いて音作りをする。これが大前提です。

あと、アンプとの距離とかアンプの音量も関係があります。アンプに近すぎる場所で弾いたり、アンプの音量が大きすぎたりすると、ベースの音がダイレクトに聴こえすぎたりします。その場合、適切な音量バランスで聴いていたら気にならないような高域成分が妙に気になって、トーンを絞りすぎちゃったりすることになります。なので、アンプからは適度に離れつつ、音量はあまり上げすぎないようにしましょう。適切な音量バランスを得るために、モニター上でほかの楽器の音量を(ベースの大音量に合わせて)どんどん上げていくよりも、自分のアンプの音量をちょっと下げるほうがいい場合も多いです。

もちろん曲調や編成によってはトーンをけっこう絞っても大丈夫です。音数の少ない静かなバラードだったら、やはりトーンはある程度絞ったほうがいいかも知れないし、編成が小さい場合(特にピアノとデュオとかアコギとデュオみたいにドラムレスだったりアコースティック楽器と演るような場合)や、ソロ・ベースとかだったら、トーンを相当絞っても全然OKだったりします。

ただ、特に安い楽器などでトーン回路のコンデンサーの質があまり良くない場合、トーンを絞った音そのものが良くないという場合もありますね。

また、右手のピッキングが力任せだったり雑だったりして耳障りな音が出てるせいで、トーンを絞りたくなっている場合もあります。もっと丁寧に弾いて、ピッキングの粒を揃えましょう。根本的には、音色はまずはピッキングのニュアンスで作るのが大事な基本です。

それと楽器を適性な状態に調整しておくのも大事なポイントですね。
 
ということで、ベース単体の音色で判断せずに、アンサンブルのなかで適切な音量バランスでベースの音を聴いてトーンを調節しましょう

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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライヴや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

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