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【第133回】プロ・ベーシストはリハで〇〇に気をつける【ベーシストの心得・リハ編 その②】 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

プロのベーシストがリハーサルで気をつけていること、第2弾です。

前回は、“僕はこういう視点でリハに臨んでいる”という話をしました。詳しくは前回の記事・動画をご覧ください。今回は、もう少し具体的に気をつけている点を2点ほど話します。

音量

ひとつ目はベースの音量です。そんなの当たり前だろうと思うかもしれませんが、“自分が気持ちいい音量”というだけでなく、“皆が気持ちいい音量”になっているかどうか気をつけているでしょうか? 自分の位置ではいい感じに聴こえたとしても、他のプレイヤーの位置から聴くとベースが大きすぎたり、低音が回って聴こえづらかったりする場合があります。

僕は、自分の立ち位置だけじゃなく、いろいろな位置で聴こえかたを確認します。ヴォーカルの近くとかドラムの近くで聴いてみて、うるさすぎないか、逆に小さすぎないか、など確認します。

また、バンド・メンバーに直接聞いて確認します。

音色

ふたつ目は音色です。これも当たり前だろうと思うかもしれませんが、ベース単体で良い音だと感じるかどうかだけではなく、“アンサンブル全体に合った音色”かどうかもちゃんと確認しましょう。“アンサンブル全体に合った音色”とはどういう音色でしょうか?

(1)曲調に合った音色

前回、“ベーシストの役割はアンサンブルの土台を作ること”だと話しました。ベースの音色が曲調に合っていないと、曲全体の印象を左右しかねません。曲調やバンド編成によって最適な音色は違います。これを判断するには、前回話した“アレンジに関する経験とスキルとセンス”が必要になってきます。音楽を聴くときにベースだけ聴いたり、ベースの練習ばかりしていては、この部分は磨かれていきません。曲全体を聴く/他の楽器が何をやっているか聴く/メロディーがどうなっているか聴く、このような音楽への接し方がとても大事になってきます。

(2)ほどよくアンサンブルに馴染む(混ざる・溶け込む)音色

アンサンブルに馴染む音色というのは、ベースだけ突出し過ぎない、歌や他の楽器の居場所を作る、という意味ですが、これはある意味、前回話した“間を生かした演奏”の一環だとも言えます。

それから、ベースの場合、特にロー/ロー・ミッドの帯域に関しては音量と切っても切れない関係にあります。ハイの帯域は上げ下げしても音量の変化はほとんど感じませんが、ロー/ロー・ミッドの帯域を上げ下げすると音量も増減して聴こえます。アンサンブルとのバランスで良い音量を決めたあとにロー/ロー・ミッドの帯域を上げ下げした場合は、音量も変わってしまっている場合があるので、もう一度音量バランスの確認もした方が良いでしょう。

逆に、音量が気になる場合に、ヴォリュームではなくロー/ロー・ミッドを調整することでうまくいく場合もあります。

それから部屋でローが回ってしまう場合は、EQを調節するのとは別に、アンプの位置を変えたり高さを上げたりすることで解決する場合もあります。

とにかく、ほとんどの場合、ローは上げすぎないようにした方が良いです。

ところで、低音域というのは、ベーシストだけでなくバンド全体が気をつけるべき帯域です。鍵盤やギターのローが出過ぎていてベースの帯域と被ってしまい、バンド全体で低音が飽和してしまっている場合もあります。そういう場合は、鍵盤やギターの低音を調整してもらうように頼んで、うまくいくかどうか確認しましょう。

このように、音量も音色も、どちらも全体を見渡す視点を持ってチェックするのが大事ですね。ベースのことだけでなく全体のことを考えられる、頼られるベーシストを目指しましょう! 石村順でした!  

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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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