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【第114回】カメレオンのイメージでピッキングの瞬発力アップ  石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

ピッキングの瞬発力を上げるのに役立つカメレオンの話です。 

“ピッキングの瞬発力”とは“指 (ピック) が弦を通過するスピード”のことで、これは基本的には速い方がいいです。 速いといっても、速いテンポの曲を弾くとか、速いフレーズを弾く、という速さのことではありません。テンポやフレーズの細かさに関係なく、1音1音を弾くピッキングの速さです。テンポが遅くても、全音符のように長い音符を弾く場合でも、1音1音のピッキングに瞬発力が必要です。瞬発力のないピッキングは、“滑舌の悪い喋り方”と似ていて、聴こえづらい、抜けてこない音色になりがちです。

とはいえ、指やピックをただ闇雲に速く動かそうとしても、力んでしまったり、動きがやたらと激しくなって雑な演奏になったりしがちですが、それは間違いです。できるだけ力を抜いて弾いた方がいいし、できるだけコンパクトに/効率良く/精密に動かす方がいいです。どんな動きも、それに先行する“運動イメージ”があってそのイメージに沿って体が動くらしいので、闇雲に動かすよりも、まずイメージを変えてみると良いのではと思います。 

前回は、このピッキングの瞬発力の改善につながるような“運動イメージ”の話をひとつしました。今回は、また違うイメージを使っていきましょう。今回は、カメレオンを参考にします。 

テレビとか動画で、カメレオンが舌を伸ばして餌を捕えるシーン、誰でも1回ぐらいは見たことあると思います。スロー再生で見ると、口を開けて舌を長く伸ばして餌を捕えて、また口に戻ってくる、というプロセスがはっきりわかります。でも普通の速度の再生だと一瞬の出来事というか、動きが速すぎて何が起きたのか分からない感じですよね。 つまり、分解して見てみると、

①目標に向かって舌を伸ばす動作
②元の場所に戻ってくる動作

という2種類の動作があるわけですが、実際には①→②と順番にやってるというより、口を閉じた状態から餌を捉えて口を閉じる、という一連の動作をワン・アクションかつハイ・スピードでやっているわけです。 このカメレオンがワン・アクションで捕食するイメージで弦をピッキングすることでピッキングの瞬発力がアップします。指(ピック)がカメレオンの舌、弦が餌だと思ってください。

ピッキングも、分解して見てみると、

①弾く弦に向かって指 (ピック) を移動させる動作
②弦を弾いて元の場所に戻ってくる動作

という2種類の動作があります。これを、カメレオンの捕食と同じように、一連の動作をワン・アクションで終わらせたい。例えば指弾きで3弦を弾く場合だったら、まず、3弦を弾き終わって4弦に指が触れている状態が基本の構え (カメレオンで言うと口を閉じている状態) です。そこから、“①3弦の向こう側に指を移動→②折り返して3弦を弾いて4弦に戻る”という一連の動作 をワン・アクションかつハイ・スピードで行います。例えば2フィンガーで弾く場合に、人差指が②の動作をしている瞬間に中指が①の動作をしているとしたら、それぞれの指単体はワン・アクションで動いておらず、①→②のツー・アクションで動いています。どちらの指もワン・アクションで動くと動画のとおりになります。

もしカメレオンの捕食だとイメージしづらい場合は、例えば武術の達人が構えていて、瞬間的にワン・アクションでパンチを繰り出して元の構えに戻る、というようなイメージでもいいかもしれません。 ワン・アクションで行って戻ってくる、という運動イメージをうまく使って、ピッキングの瞬発力を高めていきましょう。石村順でした!

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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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