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    『ukabubaku』パスピエ

    変幻自在な楽曲を表現する、多彩な音色とフレージング

     アカデミックかつ、ニュー・ウェイヴを中心にさまざまな音楽エッセンスを取り入れたアバンギャルドなポップ・センスで人気を集めるパスピエの通算8作目のアルバム。変幻自在の楽曲に合わせるようにベースも、柔らかく膨らむ音色、贅肉の少ない疾走音、シンベ的ニュアンス、フレットレスのなめらかなポルタメントなど、多彩な音色で楽曲に貢献する。音の切り際のタイトさとグリスによる粘りのコントラストがファンキーな④、シンベっぽい質感で大胆に高低差をつけたスクエアなラインの⑤、展開していくセクションごとにバスドラとの一体感から直線的な牽引力、波のようなウネり、沈むボトムと表情を変える⑦など、フレージングの巧みさも見事だ。(中村健吾)

    ◎作品情報
    『ukabubaku』
    パスピエ
    ユニバーサル/POCE-12195(通常盤)
    発売中 ¥ 3,080 全11曲

    参加ミュージシャン
    【露崎義邦(b)】大胡田なつき(vo)、成田ハネダ(k,prog)、三澤勝洸(g)

    『Thirst』DYGL

    セルフ・プロデュース作で覚醒した、下で悠然と構える低音

     全篇英語詞で海外インディと共振しながら進化を続けるDYGLの4作目は、録音からミックスまでをすべて自分たちで行なった完全セルフ・プロデュース作に。ベーシストの加地は②⑤⑨⑪で作曲、⑩ではミックスも手がけている。Y2Kからフランク・オーシャン、フォンテインズD.C.までが並んで存在するようなオリジナルなサウンドが聴ける今作で、ベースは基本的に低い位置に迷いなく構え、複層的に絡み合うギター陣や肉声と機械の間で揺れる歌の魅力を前面に押し出すことに徹する。動く部分では、⑥のダブル・ストップや⑧での攻撃性と音響的おもしろさを両立するリフ・プレイ、⑨でのスリリングな7拍子フレーズなどが耳をさらう。(辻本秀太郎)

    ◎作品情報
    Thirst
    DYGL
    Hard Enough/HEC-008
    発売中 ¥2,750 全11曲

    参加ミュージシャン
    【加地洋太朗(b)】秋山信樹(vo,g)、下中洋介(g)、嘉本康平(d,g)

    『陽気な休日』グソクムズ

    ゆるやかなサウンドの下でなめらかに浮き沈むライン

      はっぴいえんど、高田渡などに影響を受ける、東京吉祥寺発の4人組バンドの2ndアルバム。シティ・ポップのDNAが感じられつつも、良い意味で土っぽさが香るフォーキーさが表現されており、シティ・フォークという言葉がピタリとハマると感じる。ベースの堀部のプレイは歪みを効かせた、耳に残るリフや歌との絡みが非常に心地よい。音数少なくとも経過音を使ったなめらかなプレイの⑤、ざらっとした音作りで休符を使いゆったりとしたグルーヴのメロが聴ける⑥、細かく粒立ちの良いプレイでハネ感を加えつつ、グリスを交えて高音を効果的に織り交ぜるメロディアスなプレイが印象的な⑦など、耳馴染みの良い懐かしさを感じる一枚に仕上がっている。(座間友哉)

    ◎作品情報
    『陽気な休日』
    グソクムズ
    Pヴァイン/PCD-94128(通常盤)
    発売中 ¥2,640 全10曲

    参加ミュージシャン
    【堀部祐介(b)】たなかえいぞを(vo,g)、加藤祐樹(g)、中島雄士(d)

    『不出来』tricot

    感性とテクニックを両立させて唯一無二の魅力を創出

     ドリーミーな雰囲気で全体を覆ったうえでダンスが香る③やアンニュイな④、洗練感を湛えたアップ・テンポの⑥など、表情の豊かさを見せるあたりはさすがのひと言だ。また、効果的な場面転換や随所に散りばめられた“尖り”、不安定感なども絶妙で、その構成に強く惹き込まれる一作となっている。ベースは饒舌なドラムと空間を生かすギターをつなぎ合わせる役割を的確に担いつつグルーヴィだったり、ファットにドライブしたり、メロディをより際立たせるカウンター・フレーズを弾くなど、随所に懐の深いプレイを展開していることが特に印象的。自分たちの音だけで表現するバンドにとって理想的とも言えるベースを味わえる。(村上孝之)

    ◎作品情報
    『不出来』
    tricot
    エイベックス/CTCR-96070〜1(CD only)
    発売中 ¥3,960 全24曲(2枚組)

    参加ミュージシャン
    【ヒロミ・ヒロヒロ(b)】中嶋イッキュウ(vo,g)、キダモティフォ(g)、吉田雄介(d)

    『Hotel Insomnia』For Tracy Hyde

    存在感を印象づけるグルーヴィなベース・プレイ

     女性ヴォーカルを擁する4人組の5thアルバムは、ギター・ポップ、ネオアコ、サイケ、さらにはラップも飛び出すダンス・ポップまでという振り幅の広い曲調を、バンドの身上であるシューゲイザー/ドリーム・ポップなバンド・サウンドに落とし込んだ全13曲を収録。そのなかでMavは演奏のボトムを支えたり、疾走感を担ったり、曲ごとに手堅いベース・プレイに徹しているが、ひょっとしたら、ネオアコ調の曲で奏でるグルーヴィなプレイが一番得意なんじゃないかと想像したりも。なかでも⑥のグルーヴィかつドライビングなプレイは、弾いているMav自身がリスナー以上に、その心地よさを楽しんでいるように聴こえるところがいい。(山口智男)

    ◎作品情報
    Hotel Insomnia
    For Tracy Hyde
    Pヴァイン/PCD-25351 
    発売中 ¥2,750 全13曲

    参加ミュージシャン
    【Mav(b)】eureka/夏bot(vo,g)、草稿(d)

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