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    『ロックマンX2』:変拍子をポップに聴かせるベースの立ち回り【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】- 第28回

    • 文:長谷川カオナシ
    • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)

    毎回レトロゲームの音楽を取り上げ、その魅力をクリープハイプの長谷川カオナシが独自の視点で伝える連載『レトロゲーム喫音堂』。第28回となる今回は、1994年にカプコンから発売されたスーパーファミコン用ゲーム、『ロックマンX2』の音楽を取り上げます。変拍子のトリッキーなリズムと美しい旋律が印象的な楽曲のなかで、ベース・ラインはどのような枠割を担っているのか?…… 実演動画とあわせて解説していきます!

    “6/8拍子と7/8拍子を交互に繰り返す”
    トリッキーなリズムのなかで、低音は……?

    お世話になっております。今年度の奇数月は“喫音堂”の月です!

    先日、同世代のミュージシャン仲間と飲んでいた際。“実はこんな連載やってるんだけど、何かBGMがオススメのゲームない?”と聞いてみたところ、まあいろいろと挙げていただきました。盛り上がりますね。

    生まれた街の違う面々でも、同じゲームで遊んだ記憶があると、まるで同郷での育ちかのように話せるから不思議です。

    今日はそんな会のなかで挙がったゲームをやっていきましょう。

    『ロックマンX2』(1994年/カプコン)※1

    メぇぇぇ~~リぃぃぃぃぃクリっスマぁぁぁースぅ!

    『ロックマンX』のシリーズを挙げてくれたのは、ドラマーの矢尾拓也(※2)くん。

    『ロックマンX』ね~、私は小学生の頃に友達の家で見てた程度で、自分ではちゃんとプレイしたことがありませんでした。とりあえず買ってみますか~と中古ショップで3作揃えましたところ。ざっとプレイしてみて、アレ、これどうなってるの?と気になった曲があります。

    それは『ロックマンX2』の「クリスター・マイマインステージ」。

    神秘的な水晶鉱脈のステージにぴったりな、グロッケン風の音色の効いた曲です。美しい旋律が印象的なのですが……これ拍子どうなってるの??どうカウントしたらしっくり来るのかわからない!

    そんなわけで矢尾くんに聞いてみました。

    6/8拍子と7/8拍子が混ざってるんだと思う”とのことです。なるほど、そうやってカウントしたら法則が見えてきました。いわゆる、変拍子というトリッキーなやつですね!

    曲の展開は4つ。これらを仮にAメロ、Bメロ、Cメロ、Dメロとします。
    グロッケンの効いたAメロは、6/8拍子と7/8拍子を交互に繰り返しています。
    Bメロは6/8拍子。落ち着いて聴けます。
    Cメロは8/8拍子。難しく聴こえますが意外と4拍子派閥です。

    再びグロッケン主体のDメロはAメロ同様6/8拍子と7/8拍子の繰り返し。これをDAW上で打ち込んでみたら、テンポトラックはこのようになりました。

    世にも恐ろしいテンポトラック

    こんなに入り組んだ構造なのに、不思議と曲が印象に残るのは何故でしょうか。それはもちろん美しい旋律による効果が大きい(※3)のですが、ベースのアプローチもかなり効いています。

    ベース・ラインは基本的に、そのコードの礎となるルート音をなぞっています。これによって、“音程のあるメトロノーム”のような存在となり、聴き手に対しては曲展開の目印として機能します。

    複雑な曲展開だからこそ、グッと真顔で佇むことで全体のまとまりを図る。バランス感覚の優れたアプローチですね(※4)!

    今回の実演パートは先述の矢尾くんにドラムで参加していただきました。

    変拍子を軽やかに叩き上げるドラム・プレイに注目です!

    ▼実演パートをチェック!▼

    さて、今回は初めて変拍子の曲を取り上げてみました。

    難解な曲でもベースの在り方で印象が変わってくるとはおもしろいですね。

    それではまた、次回までご機嫌よう。

    (※1)
    ^音楽は岩井由紀先生。90年代にカプコンに所属、以降はフリーランスで活動されています。アラジン、ファイナルファイト2、X-MEN VS. STREET FIGHTERなど。

    (※2)
    ^パスピエでの活動を経て、フリーのサポート・ドラマーとして活躍中。長谷川の古くからの友人です。instagramのリール動画でさまざまなセッション動画を投稿しているのでぜひチェックしてみて下さい!
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    (※3)
    ^メイン・リフの“レミファミレドレ”、“レミファレラソファソ”という動きに法則性があったり、それを反復する手法も印象付けに貢献していそう。

    (※4)
    ^良い子なベース・ラインと見せかけて、実はとんでもない一面もあります。Cメロでは1拍目だけオクターヴ上の音を弾きます。
    これはガイド的なアプローチとして親切ですが、問題は次のDメロ。奇数小節では1拍目でオクターブ上、偶数小節では2拍目でオクターブ上を弾きます。“あれ、1拍目どこ?”という混乱を誘っているようです。しかもこのセクションは6拍子と7拍子が交互に登場する忙しい箇所。何故そんなことを!

    ◎Profile
    はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2023年3月29日に新作EP『だからそれは真実』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。

    ◎Information
    長谷川カオナシ
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    クリープハイプ
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