NOTES
華やかな舞台で活躍するプロ・ベーシストたちに、普段は覗くことのできないプライベートな一面を言葉で綴ってもらう本連載。今回登場いただくのは、世界各国の著名ミュージシャンから厚い信頼を得るジャズ・ミュージシャンであり、同時に数多くのJ-Popやアニメ/ゲーム作品の劇伴でもベーシストとして腕をふるう、川村竜。ここでは彼にもうひとつの顔である“ミートたけし”としての活動のほか、多彩なライフワークを語ってもらった。(編集部)
人生楽しんだモン勝ち!
そんな私の三足の草鞋とは。
まず最初に言いたいことは、遅い、遅すぎるよベーマガ。これに尽きる。日本で一番本業の音楽以外に注力している私への執筆依頼。遅すぎると言わずしてなんと言おうか?
皆さんご機嫌よう、川村竜です。早速ライフワークの話になってしまうが、最近では“川村竜”の名よりも“ミートたけし”の名が周知されてきている。知らない方には何のこっちゃだろうが、コレは私のYouTubeおよびゲーム配信における活動名である。名前はビートたけしさんからパクっただけで大した由来もない。
そんなミートたけし名義での活動が始まったのは6年ほど前の元旦。もともと正月の過ごし方が下手で、“暇だ暇だ”なんてぼやいていたら、当時のアシスタントが“ゲーム配信とかやってみたらどうですか?”なんて言うものだから、彼の一助のもと人生初のゲーム配信をしてみた。してみたら何と開始15分で海外の方から100ドルのドネート、いわゆる投げ銭がきた。あぁ、私は音楽だけではなく配信の世界でもうまくやっていけちゃうんだ。あぁ、自分が怖い。神様、あなたはなぜこんなにも私に才能を与えたもうたのか!という流れで配信を始めたわけだがあの日以来、ドネートが飛ぶことはなかった。
始まりこそはちゃめちゃな配信だったが、いわゆる一般的なベーシスト像、寡黙で大人しく縁の下の力持ち、みたいなものに辟易としていた自分にとってダイレクトにパーソナリティが観ている人に届く配信は非常に刺激的で愉快なものだった。ちゃんと好いてもらえるし、ちゃんと嫌ってもらえる。これが非常に心地いいのだ。今日に至るまでの数年間の配信ライフを事細かに書き記したいのは山々だが、このあたりはYouTubeをご覧いただくなりして補完していただくとして、もう一足の草鞋、コーヒーの話をしよう。
一部界隈でコーヒー嫌いとして有名な私の配信のコメ欄にて“自分もコーヒー嫌いだったが、あるコーヒーに感動して今は焙煎の仕事をしている”というリスナーが現われたので、そのコーヒーを送っていただいて飲んでみた。全然苦くて飲めなかった。ここで飲めたらいい話なのだが、そううまくいかないのが人生だ。しかし嫌いなものが好きになることができたならその幸福度の振れ幅たるや!と考えた私はその日から数ヵ月、現在に至るまで300軒以上のコーヒー屋さんを回った。回ったがついぞ“好き”と言えるコーヒーには出会えず、“こりゃ自分で作ったほうが早いな”ということで、こともあろうにオリジナルコーヒーを作ってしまったのだ。やはり人生、楽し……って文字数が! おい! ベーマガ! 早くなんか俺に連載させろ!!!
*この記事はベース・マガジン2024年11月号(AUTUMN)から転載したものです。
【Profile】
かわむら・りゅう●高校在学中からベーシストとしてプロ活動を開始。2004年にはハワイで開催された国際コントラバス・フェスティバルのジャズ部門において日本人初、史上最年少での最優秀賞を受賞した。ダスコ・ゴイコヴィッチ(tp)やジョー・ラバーベラ(d)と共演するなど、ジャズ・ミュージシャンとして世界各国の著名ミュージシャンから厚い信頼を得る。そのほか、ずっと真夜中でいいのに。、岩男潤子、中川翔子、などのサポートやプロデュース、アニメ・ゲーム作品劇伴での演奏など、その活動は多岐にわたる。
◎Information
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