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第29回 – ブルーノートとペンタトニック・スケール【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】
- Text:Makoto Kawabe
この連載では、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。今回のテーマは“ブルーノートとペンタトニック・スケール”です。
はじめに
今回のテーマはブルーノートとペンタトニック・スケールです。ペンタトニック・スケールについては過去に何度か触れていますが、前回解説した“ブルース進行の楽曲”でフィルやメロディ、ソロを弾くために欠かせないスケールなので再度取り上げます。
とはいえ、ただペンタトニック・スケールを弾くだけではブルースのニュアンスが出ないので、今回はスケールの使い方や、その鍵となるブルーノートについてレクチャーします。ブルースに限らず、ロックやファンク系の楽曲でも大いに役に立つ知識となるはずです。
※ブルーノートやブルース・スケールについての見解は諸説ありますが、ここでは筆者の経験から“ベーシストがブルース・テイストの楽曲でアプローチするぶんには辻褄が合うと思われる解釈”を提示しています。細部についてはさらなる探求や検証の余地があるかもしれません。
ブルーノートとは?
ブルーノートとは、ブルース特有の憂いのある雰囲気を感じさせる音のことで、具体的にはm3rdとM3rd(短三度と長三度)の中間、dim5thとP5th(減五度と完全五度)の中間、m7thとM7th(短七度と長七度)の中間の3音です。いずれも12音階にはない音ですね。
ギターやベースならばクォーター(1/4音)・チョーキングやネック・ベンドなどで出せますが、ピアノなど音程が固定されている楽器では出せないので、瞬間的に両方の音を(もしくは片方を装飾音的に)連続して弾き、響きを濁らせることでブルーノートの雰囲気を演出しています。
ブルース・スケールを理解しよう
ブルーノート・スケールは、メジャー・スケール(ドレミファソラシド)にブルーノートを含めて並べたスケールのことですが、前述のようにブルーノートは12音階では表現できないので、簡易的に表現すると図2のようになります。
7音スケールに3音を加えているので10音スケールになっており、このままではスケール上の音が多すぎて活用しづらい(ブルースらしさを演出しにくい)面もありますね。
図3は、先の10音スケールからM7th(長七度)をハズして9音にしたブルース・スケールで、ミクソリディアン・スケールにm3rdとdim5thを加えたものと同じです。
筆者はM7thをハズした理由をうまく解説できないのですが、ひとつには“ブルース進行の楽曲で用いられるセブンス・コードにいちばん適応しやすいスケールがミクソリディアン・スケールだから”、もうひとつは“M7thの都会的な響きがブルースといちばん縁が遠いから”、だと理解しています。
ブルース進行の楽曲にセブンス・コードを用いているのは「コード構成音のM3rdとm7thが不協和音でブルース特有の“憂い”を演出するから」、「コード進行のつながりを強く則すドミナント・コードだから」など、さまざまな分析や見解がありますが、端的に表現すれば“伝統が定着したから”、つまりは“そういうものだから”なのだと思います(笑)。
ちなみにブルース・スケールにはミクソリディアン系以外に、ドリアン系、エオリアン系があります。元のスケールにいくつかのブルーノートを加えたものである点は共通しています。
8音、9音で構成されるブルース・スケールはまだまだ音数が多く扱いにくいということで、さらに音数を絞ったものがペンタトニック系のブルース・スケールです(ブルース・ペンタトニック・スケール)。
こちらは具体的には、図4のようにマイナー・ペンタトニック・スケールにdim5thを加えたスケールとなっています。
ブルース進行の楽曲で活用される
マイナー・ペンタトニック・スケール
セブンス・コードに対してマイナー・ペンタトニック・スケールでアプローチすると、スケール・ノートのm3rdとコード構成音のm3rdが同時に鳴ることで不協和音となり濁った響き、つまりはブルース特有の憂いが演出できます。このことからブルース進行の楽曲ではマイナー・ペンタトニック・スケールを活用するのがセオリーとなっています。
とはいえ、マイナー・ペンタトニック・スケールは日本の民謡でも活用されるスケールでもあるので、ただマイナー・ペンタトニック・スケールを弾くだけではブルース特有の雰囲気を演出できません。ブルースを感じさせるようなフレーズを弾くには濁りや憂いを意識することが重要なのです。
マイナー・ペンタトニック・スケール
オススメのポジショニング
以前にも書きましたが、マイナー・ペンタトニック・スケールはナチュラル・マイナー・スケール(エオリアン・スケール)からM2ndとm6thを省いたスケールなので、図6の①のポジショニングで覚えている人も多いかもしれませんが、実用的には圧倒的に②がオススメです。
なぜならマイナー・ペンタトニック・スケールを活用する楽曲の大半はブルース系であり、②のほうがブルーノートを交えたフレーズが格段に弾きやすいからです。
実践してみよう
これまでの知識を生かして実践してみましょう。ワンコードのファンク系楽曲で、リフっぽい基本パターンを弾きつつ4小節目にフィルを弾く想定です。
①:マイナー・ペンタトニック・スケールをそのまま弾いた例です。あまりブルース感がないし、コードがEm7のようにも聴こえます。
②:マイナー・ペンタトニック・スケールにブルーノートを交えつつ弾いた例です。“濁らせる”ことを意識しているためブルージーに聴こえます。
③:コード・トーンにブルーノートを加えた例です。前後の脈絡がなく唐突にブルーノートを弾いているため、間違えて弾いているように聴こえます。
ちなみに筆者は、ブルース系楽曲のキーはメジャーでもマイナーでもなく、Ⅰブルース(Ⅰ度がEであればEブルース)だと捉えていて、I 7に適応するスケール(アベイラブル・スケールと言います)はミクソリディアン・スケールであり、適宜ブルーノートを加えてブルースらしさを演出するのが妥当だと考えます。
別の言い方をすると、ブルース系楽曲のキーはメジャーでもマイナーでもなく、“ソラシドレミファソ”をキーとするミクソリディアン・モードがいちばん近いという見解です。
とはいえブルース系やワンコードの楽曲のベース・ラインは、あくまでコード・トーンを中心に組み立てるのがセオリーかと思います。ギターなどとのユニゾン・リフならともかく、楽曲の基盤となる“ベース”がブルーノートを多用するとメロディやリード楽器が濁らせる相手がいなくなってしまうからです。
ベース・ラインを弾くときと、フィルやソロを弾くときのフレージング(音づかい)は分けて考えると、腑に落ちるのではないでしょうか?
最後に
“ブルーノートはブルースの雰囲気を演出する音”だと頭では分かっても、すぐにブルースらしいフレーズが弾ける人はほとんどいないと思います。
こればっかりはニュアンスが最重要であり、習得するには実践あるのみ。ブルースに限ったことではないですが、色んな楽曲を聴いて、これは!と思ったフレーズをコピーして、フレージングを分析して、ニュアンスを掴み、自分なりのフレージングを手に入れましょう。
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◎講師:河辺真
かわべ・まこと●1997年結成のロック・バンドSMORGASのベーシスト。ミクスチャー・シーンにいながらヴィンテージ・ジャズ・ベースを携えた異色の存在感で注目を集める。さまざまなアーティストのサポートを務めるほか、教則本を多数執筆。近年はNOAHミュージック・スクールや自身が主宰するAKARI MUSIC WORKSなどでインストラクターも務める。
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