NOTES

UP

現在の沼【高松浩史の音色探索 その箱の中は地獄より深い】– 第8回

生粋のエフェクター・フリークとして知られる高松浩史による、以前本誌にて掲載していた当連載がBM Webにて復活! マニアックなものからビギナー向けのお勉強企画まで、豊富な機材知識を持つ高松がエフェクターを語り尽くします。第8回は、BM Webでも以前紹介した、超多機能イコライザー・ペダルについて。機能から使い方まで、独自の目線で斬ってくれました!

エフェクター界の出来杉くん、現る

Bass Magazine Webをご覧の皆様、ごきげんいかがでしょうか。高松浩史です。

まだまだ寒い日が続いていますが、もうすぐ4月ですね。出会いと別れの季節……ということで、僕も久しぶりに新しいエフェクターを購入してしまいました。

それがコチラ!

Empress Effectsの“ParaEQ MKII Deluxe”です。

連載の前々回にて、僕のペダル・ボードのご紹介をさせていただいたのですが、最近の僕のペダル・ボードには何台かEQやプリアンプが入っています。メインのプリアンプや歪みペダルなどで作った音に対し、EQやプリアンプなどで細かな補正をして、さまざまなシチュエーションに対応するというコンセプトです。

例えば、曲のサビに入った際にローをブーストしたEQを足して音の重心を下げたり、楽器の持ち替え時の音の差を補正したりなど、使い方は多岐にわたります。ということで、EQというエフェクターは僕にとって重要なものなのです。

さて、今回ゲットしたParaEQ MKII Deluxe。まず見た目がすごく良いですよね……(笑)。Empress Effectsのどこか機械的なのだけれどポップな感じ。とても好きです。

コントロールはたくさんありますが、それほど難しくなく、むしろ効きの良さも相まってとても使いやすいと思います。あと、各コントロールに数値やイラストが書いてあるので、視覚的にもわかりやすいですよね。

メインはシルバーのコントロールで、上段にあるlow/mid/highの各帯域のfreqで“どの帯域を”、下段にあるそれぞれのgainで“どのくらい増減するか”。大まかにはこれだけです。

このメインのコントロールに対し、小さなコントロールたちで細かく補うというイメージですね。

まず最上段の“q”コントロール。こちらはfreqで決めた中心周波数に対して、上下どのくらい周波数の幅を持たせて可変するかを設定できます。qを広め(中心から左に回したエリア)にして、低音域を幅広くブーストしたり、q狭め(中心から右に回したエリア)にして高音域の耳障りな部分をピンポイントでカットしたり……それぞれの帯域ごとに分かれているのが良いですね。

4段目の4つ並んだコントロールは全体的な補正という感じで、左側ふたつが低音域に関して、右側ふたつが高音域に関してのものです。左から、ローカット・フィルター(ハイパス・フィルターとも呼びますね)、ローのシェルビング・フィルター、ハイのシェルビング・フィルター、ハイカット・フィルター(こちらはローパス・フィルターとも)です。

最上段のqコントロール
4段目のフィルター・セクション

カット・フィルターは緩やかなカーブで効いてくれます。ライヴハウスやスタジオなどで、低音が回りすぎてしまうときに少し下げてあげるなど、微調整に使えそうですね。シェルビング・フィルターは大胆に広範囲をブースト/カットするフィルターです。ダークグラス製のアンプや、一部ペダルプリアンプなどのEQにも付いているので、このイラストに覚えがあるという方もいらっしゃるかもしれません。

個人的に、使用してみてこのコントロールが抜群に刺さりました……!

というのも、ローのシェルビングをブーストすると、普段愛用しているサンズアンプのBASS DRIVER DI V2に、V1初期の“あのローの感じ”を足せるような印象があったからです。第一回目の記事でも言及していたと思うのですが、サンズアンプってV1初期のものはEQカーブがシェルビング・タイプなので、ああいったローが膜を張ったようなダークな質感は、それ以降のサンズアンプにはないものなのです。なので、サンズアンプの良いところ取りをしたような質感が出せてとても新鮮でした。

そして最下段のコントロールはboost量のコントロールです。そう、このペダル、ブーストもできてしまうのです。ブーストの感じも素直で使いやすそうですし、本当に多機能ですよね。

以上、Empress Effects“ParaEQ MKII Deluxe”の簡単なご紹介でした。多機能で、ハイクオリティなので、高価ですがとてもおすすめ。正直使い道が多すぎて……もう3台くらいほしいですね(笑)。

個人的には、EQを上げ目にすると音量が上がってしまうので、マスター・ヴォリュームが欲しかったなとは思いますが、それを差し引いても素晴らしい製品です。基本の音の補正に使用しようかと考えていますが、もう少しじっくり使い込んでみたいですね。できることが多いということは、その分迷子になりやすいので、注意しつつ……。

一点、効きが良いので、ベースだとlowの扱いは少し気をつける必要があると思いました。というのも、lowを極端にブーストしてしまうとかなり出てしまうので……。アンプや、ヘッドフォンなどもそうですが、機器のことを考えると、lowのブーストに関しては少しずつ行なうのが良さそうです。

それでは、今回はこのへんで。ご覧いただきありがとうございました。

◎Profile
たかまつ・ひろふみ●栃木県出身。2002年に高校の同級生だった小林祐介(vo,g)とともに前身バンドを結成する。2005年からThe Novembersとしての活動を開始し現在までに8枚のフル・アルバムなどを発表している。2021年からは京(vo)、yukihiro(d)を中心としたプロジェクトPetit Brabancon、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのメンバーとしても活躍している。その他、Lillies and Remains、圭、健康のサポート・ベーシストも務めている。

◎Information
高松浩史 X Instagram