NOTES
1996年から2020年まで24年間にわたりベース・マガジンの人気連載として掲載されていた、かわいしのぶの「ある日の絵日記」が“リターンズ”としてBass Magazine Webで連載中。今回は4月の絵日記です!
ある日の絵日記 リターンズ
第7回
4月9日、八百屋さんでおいしそうな空豆を見つけ、金麦のCMばりに浮かれて買って帰り、台所でサヤから中身を取り出したときの中身これっぽっち感。“あぁ、そうだった。空豆、こういうものだった。”となるのを、わかっちゃいるけれど毎年繰り返してしまう。でもまぁこれは一年周期、ロングスパンのあるあるだ。大したことはない。そこへきて、シャウ○ッセンはどうだ? 季節問わずスーパーで見かけるとついカゴに入れてしまう、あのぱつんぱつんに膨らんだ袋。期待に胸はずませて開封すると、中から転がり出てくる数本の本体、“これだけ……”と襲われる虚無感。なのにまた期待して買ってしまう自分をずっと不思議に思っていたが、最近その謎が解けた。袋を満たしているあの気体には、国家機密クラスの特殊な成分が入っているのだ。中身を取り出す際に無意識にそれを吸い込むと、“少な……(以下略)”と感じたはずの虚無な記憶が一瞬で消されて、人はまた再び嬉々としてシャウ○ッセンを買い物カゴに入れてしまうのである。これが、わたしの考えた陰謀論である。
4月29日、日本橋三井ホールにて元宝塚宙組の初代トップスター、姿月あさとさんが昭和の名曲を歌うコンサート“昭和歌謡祭 vol.4”。大好きな昭和歌謡の数々をこのような贅沢なステージで存分に演奏できるなんて、“あぁなんてシアワセなんだ、自分……”。というこの気持ちに嘘偽りはまったくないのだが、今回一曲ちょっとだけ引っかかる曲が入っていた。南佳孝さんの「モンロー・ウォーク」である。念のために言っておくが、この曲は最高にかっこいい。大大大好きな曲である。前のめりになれないその理由は、ベース。アップテンポのリズムに乗って16分音符でひたすらオクターヴ反復し続ける炎の体育会系ディスコ・ベースなのだ。この手のベース・パターン、私は総じて“アイムセクシー”と呼んでいるのだが、こんなに疲れるベースのフレーズ、まったく誰が考えたのか心底恨めしい。できることなら避けて通りたい。がしかし、いざ弾くとなったらば、グルーヴの先頭は譲れないし、一音たりとも落とすものか、と結局スイッチが入って燃え尽きてしまう自分はつくづくベーシスト気質だなーと自覚させられるのもなんだか悔しいアイムセクシー。むきーっ。
『とりあえず 国家機密だ 陰謀論』
【Profile】
かわいしのぶ●1971年生まれ、東京都出身。高校一年でベースを始める。1991年にSuper Junky Monkeyを結成し、1994年、ソニー・レコードよりデビュー。日本とアメリカを行き来しながら活動を続け、1999年に活動休止。2009年からは3人で活動を再開した。かわい個人は現在、大友良英スペシャルビッグバンド、柴田聡子 in FIRE、坂田明、パンチの効いたブルース&オウケストラ、プノンペンモデル、world’s end girlfriend、bikke&近藤達郎など、ベーシストとして幅広い活動を展開している。カレーが大好き。
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