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【お宅のエフェクト・ボード拝見!】#1 − 三島想平(cinema staff)

以前本誌にて連載していた、プロ・ベーシストのエフェクター・ボードをフィーチャーしていく人気企画『お宅のエフェクト・ボード拝見!』がWEB版として復活! ベーシストの“最新足下事情”を徹底検証していく。記念すべき第一回は国内のオルタナティブ・シーンを牽引する4人組ロック・バンド、cinema staffより三島想平が登場。アグレッシブで力強いベース・サウンドを生み出すそのシステムを紹介していこう。

3種の歪みを使い分ける攻撃的システム

三島のエフェクト・ボード。上段右から、One Control製Minimal Series Pedal Board Junction Box(ジャンクション・ボックス)、One Control製Distro Tiny Power Distributor(パワー・サプライ)。中段右から、コルグ製Pitchblack Custom(チューナー)、TECH 21製サンズアンプ・ベース・ドライバーDI V2(プリアンプ/DI)、ダークグラスエレクトロニクス製Microtubes B7K Ultra(プリアンプ/DI)、XOTIC製X-Blender(ブレンダー)、ボス製TU-3w(チューナー)。下段は右から、One Control製Chamaeleo Tail Loop(プログラマブル・スイッチャー)、 EarthQuaker Devices製Palisades(オーバードライブ)、Old Blood Noise Endeavors製REVER(ディレイ/リヴァーブ)

 三島がcinema staffでメイン・ボードとして使用するのが本ボード。バンド・サウンドの進化とともに少しずつブラッシュ・アップが施されており、三島が求める最新のシステムが組み込まれている。

 ベースからの信号は、One Control製Minimal Series Pedal Board Junction Box(ジャンクション・ボックス)を経由し、One Control製Chamaeleo Tail Loop(プログラマブル・スイッチャー)へと入る。そこから各エフェクターに接続されており、コルグ製Pitchblack Custom(チューナー)はチューナー・アウトから接続されている。本ボード最大の特徴と言えるのがボードの左右両端に配置された2台のチューナーで、三島はチューナーを2台設置する理由を、“TU-3wのバッファーが好きっていうのもあるんですけど、cinema staffは曲間でのチューニングが多いので、音を出しながらチューニングがしたいんです。そのためにTU-3wは常にオンの状態にして曲間チューニング用、Pitchblack Customはミュートの役割も持ったチューナーというように分けているんです”と語る。

 また充実した“歪み”も重要なポイントで、ループ1のTECH 21製サンズアンプ・ベース・ドライバーDI V2(プリアンプ)に加え、ループ2のダークグラスエレクトロニクス製Microtubes B7K Ultra(プリアンプ)、ループ4のEarth Quaker Devices製Palisades(オーバードライブ)と、3種類の歪みを使い分けている。なかでもサウンドの要となるのがサンズアンプ・ベース・ドライバーDI V2で、基本的には常時オンで使用されるが、テンポが遅い曲やナチュラルなサウンドが欲しい際にはオフにするとのことだ。ブレンドを必要以上に上げず、ドライブを強めに設定するのがポイントで、プリアンプ兼歪みというイメージで使用している。Microtubes B7K Ultraは常時ディストーション・チャンネルをオンの状態で使用しており、「into the green」曲間の轟音部分などで用いられる。“ドライブをフルにして「ドシャーン」とした歪みが欲しいときはコレ。ロー・ミッドを250Hz、ハイ・ミッドは1.5kHzの周波数を選択していますが、基本的にはドンシャリの方向性に設定しています。9mm(Parabellum Bullet)先輩の教えのもと、やっぱりひとつはカオスを入れておかないとダメですから(笑)”。と語ってくれた。Palisadesはイコライザー的な用途として用いられるXOTIC製X-Blender(ブレンダー)を介して接続され、「pulse」のベース・ソロなど、ベース単体が浮く箇所で使用される。“音量感や細かい微調整をX-Blenderで行なうイメージで、このふたつを組み合わせることで歪み兼ブースターとして使えるんです。Palisadesはハイ・ポジションのサステインを強調する際にも重宝しています”。

 ループ3には、楽器店で試奏しそのサウンドに一聴惚れして購入したというOld Blood Noise Endeavors製REVER(リバーブ/ディレイ)が接続されており、「君になりたい」中盤のソロ・パートなどで薄くかけられる。“発信音みたいな独特の音がするので、曲と曲の間をつなぐアドリブ的な場面でも使っています。飛び道具というほどぶっ飛んだ音ではないんですけど、叙情的な雰囲気になるんです。ポスト・ハードコア感を出すための道具ですね(笑)”。

 以上を経たあと、Chamaeleo tail Loopのアウト・プットからTU-3wを経由し、再度Minimal Series Pedal Board Junction Boxに戻るという信号の流れだ。今後はライヴでの取り回しを重視し、スイッチャーをハズしてさらにコンパクトなボードにすることも検討しているという。今後三島のサウンドがどのように進化していくのか注目していきたい。

Pick up!

サウンドの要となるTECH21製サンズアンプ・ベース・ドライバーV2。使用するキャビネットによってドライブの具合を調整している。“アンペグのSVT-810など、大型のキャビネットの際は強めにコントロールしたり、自分のキャビネット(マーシャル)が使えるときはカット気味に設定しています”。
Earth Quaker Devices製PalisadesはXOTIC製X-Blenderにループされており、X-BlenderはWETに振り切った設定となっている。“PalisadesはEQが付いていないのでX-BlenderのEQでサウンドを補正しているんです。Palisadesのトーンを維持したまま音作りできる点が気に入っています”。

サブ・ボード

三島のサブ・ボード。主にÖsterreichやサポートの際に使用される。右から、ピーターソン製Strobo Stomp HD(チューナー)、Vivie製OwlMighty Pro(プリアンプ/DI)、シゲモリ製G.O.T Bass Drive(オーバードライブ)、Vivie製CLIONE(バッファー/ブースター)、EarthQuaker Devices製Avalanche Run(リヴァーブ/ディレイ)。パワー・サプライはキクタニ製KRP-001で、ボードの裏側にマジックテープで固定されている。

◎Profile
みしま・そうへい●1987年生まれ、岐阜県出身。小学生からクラシック・ギターに触れ、高校入学後の2003年、cinema staffの前身バンドに加入すると同時にベースを始める。cinema staffはオルタナティブ・ロックやポスト・ロックをポップに昇華させたサウンドで人気を集め、2012年にメジャー・デビューを果たす。現在までに6枚のフル・アルバムなどを発表している。三島はバンドの作詞・作曲を中心に手がけるほか、他アーティストへの楽曲提供やBGM制作も行なっている。cinema staffは2021年6月2日にE.P.『白夜/極夜』をリリースし、6月4日より全9公演におよぶリリース・ツアー“NEWDAWN/NEWBORN”を開催する。

◎Information
cinema staff:HP Twitter YouTube
三島想平:HP Twitter

『白夜/極夜』
cinema staff
cinema staff/CNM-003