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    BOSSが放つ新時代の低音ギア feat.関谷友貴(TRI4TH)

    • Photo:Hiroki Obara
    • Equipments Explanation:Makoto Kawabe

    Maker Interview

    革新的ニューギアを生み出した製作の裏側、そして各製品に込められたこだわりをBOSSの開発担当者へ聞いた。

    KATANA-500 Bass Head/KATANA Cabinet 112 Bass

    妥協のないベース・サウンドへ調整できる高い機能性を備えています。

    ━━BOSSブランドとしてベース・アンプ・ヘッドが製品化されるのは初となります。開発に至った経緯を教えてください。

     “KATANA”は世界中でご好評をいただいているアンプ・シリーズで、当初のラインナップはギター用のみでしたが、2022年にベース用モデルとしてコンボ・タイプのKATANA-110/210 BASSを発表しています。そのサウンドについて評価をいただいた際、軽量なヘッド・アンプの要望が多かったことから、これまでのアンプ開発で培った技術をもとに、新たな技術を搭載したフラッグシップ機を製品化することに決めました。

    ━━巷では250W、1000Wといった出力も需要がありますが、KATANA-500 Bass Head を500W出力とした理由は?

     ライヴで使える十分な出力でありながら、一般的に使用されているキャビネットの許容入力を超えないといった、幅広く使えるスペックとして500W出力を選びました。さらにハンドリングの良いサイズに抑えることで、さまざまな場面で活用できるという点も理由です。

    ━━音作りという観点では、どういったポイントを狙ったモデルなのでしょうか?

     本機にはBOSSの積み重ねたノウハウをもとに新たに設計したリアクティブ・クラスD回路を搭載しています。これにより弾き手のニュアンスを忠実に再現する、クリアかつ躍動感のあるトーンが得られます。そのフラットなトーンに加え、AMP FEELスイッチではアタックの早いMODERN、ウォームなレスポンスのVINTAGEと2モードのレスポンスの選択が可能であり、幅広いサウンドをカバーする基本音質を持ちます。またバンド編成や使用シチュエーションといった多様な状況で求められるサウンドへ直感的に調整できるよう、中心周波数を選択できるロー/ハイ・ミッドを含んだ4バンドEQを搭載。さらに細かな音作りにも対応できるよう、音抜けを悪くする余分な低音をカットするBOTTOMやハイ・カット・スイッチなど、妥協のない音へ調整できる高い機能性も備えています。

    ━━KATANA-500 Bass Headの機能のなかでも特に興味深いものが、CAB RESONANCE機能です。開発の経緯を教えていただけますでしょうか?

     もともとコンボ・タイプのKATANA-110/210 BASSでは、スピーカー/キャビネットとのマッチングがベストな状態になるようパワー・アンプを駆動させていました。しかしコンボ・タイプと違い、さまざまなキャビネットが接続されるヘッド・アンプにおいて最適なパワー・アンプの駆動をするには、接続されるキャビネットが持つそれぞれの特性を把握することが必要です。マイキングをするのは特性を知るひとつの方法ですが、非常に取り回しが悪い問題があります。“マイキングせずに特性を取ることができないか?”という所が開発の出発点でした。難所はいくつかありましたが、最終的にパワー・アンプのなかにキャビネット特性をセンシングする回路を組み込むことでキャビネットを接続した状態のままボタンひとつでキャビネットが持つ特性を分析できるようになりました。そこで分析した結果から、キャビネット毎にどのようにすれば理想的なパワー・アンプの駆動になるのかの試行錯誤と、プロ・ベーシストへのレビューを繰り返してCAB RESONANCE機能を実現しました。

    ━━CAB RESONANCE機能はどういった技術を使ったものなのでしょうか?

     CAB RESONANCE機能を用いると、KATANA-500 Base Headへ接続されたキャビネットの特性を解析し、それに応じてヘッドへ搭載した独自のリアクティブCLASS-D回路を最適化します。内部で行なわれる処理は極めて複雑なため、あくまで一例にはなりますが、そのなかでキャビネットの“最低共振周波数”付近でのキャビネット再生の最適化というものがあります。通常、CLASS-Dパワー・アンプでキャビネットをドライブすると、“最低共振周波数”付近では、本来キャビネットが再生できるポテンシャルを持つ帯域でも音圧が下がる特性になります。CAB RESONANCE機能をオンにすると、本来キャビネットが持つポテンシャルを十分発揮できるよう独自のリアクティブCLASS-Dパワー・アンプ回路を最適にドライブさせることで、“最低共振周波数”付近でのクリアながらダイナミクスのある低音再生をすることができます。サウンドのニュアンスとしては、コシのある低音と感じていただけるのではないかと思います。またそれ以外にも、サウンドの輪郭を損なう不要な共振を特定して抑えるなど、ベース本来の音を生々しく再生するための技術です。

    ━━CAB RESONANCE機能を活用するうえでのポイントとは?

     ベーシストはヘッド・アンプだけを持ち運んでキャビネットはその場にあるものを使う人も多いと思いますが、まさにそういったシチュエーションでも強みを発揮する機能です。さらには接続するキャビネットそのものだけでなく、演奏環境、つまり空間の広さや床の材質などの影響も含めて最適なドライブを行なうため、同じキャビネットを使う場合でも、場所が替われば、都度キャリブレーションを行なうのがおすすめです。

    ━━KATANA Cabinet 112 Bassに関して、12インチ1発のみの展開とした理由は?

     KATANA-500 Bass Head同様、コンパクトなサイズながらライヴ用途まで広くカバーできるキャビネット形態として選んでいます。スピーカーは高効率なエミネンス製ネオジウム・タイプ12インチ・スピーカーとホーン・ツィーターを採用し、またキャビネットの鳴りをチューニングすることでフラットながら押し出しのあるサウンドを志向しています。さらに余裕のある音量が必要な場合は、2台スタックした使用も可能です。KATANA-500 Bass Headでは、2台のキャビネットをパラレルに駆動することができ、大きなステージ・ユースもカバーすることができます。

    ME-90B Bass Multiple Effects

    サウンドはもちろん、操作感も含めベーシストに深く寄り添った1台です。

    ━━ME-90Bは、昨年発表されたME-90のベース版となりますが、ベース用に特化するうえで重視したポイントとは?

     MEシリーズの特徴である、“コンパクト・エフェクターのような直感的な操作性”を受け継ぎながら、内蔵のアンプ・サウンドやエフェクトはすべてベース専用にチューニングしています。さらにXLR端子の追加など、ベーシストが求める仕様にハードウェアも見直しました。またベーシストにとって必須であるコンプレッサーやフィルターは複数のタイプを用意し、同時に使用もできるなど、細かな部分まで気を配った設計となっています。

    ━━ME-90Bに搭載するエフェクトやサウンドのキャラクターなど、どのようにセレクトしていきましたか?

     ベーシストから普遍的に愛されているサウンドはもちろん、現代シーンで新たに必要とされてきているサウンドも搭載しています。開発段階ではプロのベーシストの方にもレビューいただき、音色はもちろん、指先から伝わるニュアンスの調整、ノブの効き方、現場での実用性など、緻密にチューニングを行なっていきました。

    ━━ME-90Bにブレンド・ノブを搭載した理由を教えてください。

     ブレンド機能を搭載することで、アンプによる十分な低域を得ながら、ベースそのもののサウンドを足すことで芯のあるトーンが得られます。エフェクトとの親和性を高めるためにも活躍する機能です。

    ━━ステレオの標準タイプとXLRのアウトプット端子、USB Type-C端子など、多数の入出力が用意されていますが、どのような活用法が想定できるでしょう?

     ふたつのアウトプットは同時に使用することができるので、XLR端子からはPAへダイレクト・サウンドを送りつつ、標準端子はアンプにつないでステージのモニターとして用いることが可能です。またUSB 端子でPCと接続すれば、手軽にキャビネット・シミュレーションを含んだサウンドでレコーディングできるのでぜひ試してみてほしいです。

    ━━初心者プレイヤーにも手の届きやすい価格帯設定ではありますが、どういったプレイヤーにおすすめできるモデルでしょうか?

     まずさまざまなものが高騰している状況において、届きやすい価格帯と捉えていただけることが非常にありがたいです。前述のとおりMEシリーズはノブによる直感的な操作が特徴です。これはわかりやすさという点では初心者の方におすすめできる一方、現場でスピーディなサウンドメイクを要求されるような中~上級者にもメリットがあると思います。搭載されているサウンドはプロの現場で使用できるクオリティに仕上げているので、ぜひ幅広いベーシストに手に取ってほしいと思います。

    ━━巷には高機能なマルチ・エフェクターが多く存在しますが、ME-90Bは市場においてどういった存在の一台だと考えますか?

     昨今では、ギター/ベースの両方に対応するプロセッサーも増えてきました。それにはメリットもあり、当社でも両対応にしているモデルがあります。ですがME-90Bはまた別の視点で捉えた、ベーシストのための操作感に特化するためにベース専用機としてリリースしたモデルです。サウンドはもちろん、操作感も含めベーシストに深く寄り添った1台として、多くの方に試していただければと思います。

    製品に関する問い合わせは、製品に関するお問い合わせは、ローランド株式会社専用フォームより。
    https://www.boss.info/

    本記事は7月19日発売のベース・マガジン2024年8月号(Summer)の特集記事をもとに再構成したものです。

    同号の表紙巻頭企画は『亀田誠治・亀の60年』。
    今年還暦を迎える亀田誠治を、ロング・インタビュー、愛聴盤や愛器の紹介、King Gnuの新井和輝との対談など、50ページ超の大ボリュームで深堀りします。亀田誠治の珠玉のベース・プレイが6曲収録されたベース・スコア小冊子も付属!

    そのほか、奏法企画や注目のベーシストのインタビューなど、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!