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ベーシストこそ! 揺れモノ/空間系エフェクターのススメ
- Photo:Chika Suzuki
モジュレーション篇
MOBIUS
多彩なサウンドのマルチ・モジュレーション
12タイプのモジュレーション・エフェクトを搭載し、スタジオ・クラスのアルゴリズムで高品位なサウンドを生むマルチ機、MOBIUS(メビウス)。コーラスやフランジャーなどには同社の単体機モジュレーション・エフェクトにも採用されているdBucketテクノロジーが用いられており、BBD素子を用いたアナログ回路の質感も忠実に再現する。また、スピード/デプス/レベルなど直感的に操作したいコントロールは専用ノブで配置され、より詳細な設定はバリュー・ノブから入るディスプレイ画面上でパラメーター入力できるほか、パラメーター1と2には任意のパラメーターをアサインすることもできるなど、高い操作性と細部のサウンドへのこだわりを両立したUIを持つ。本体には200個(2個×100バンク)のセッティングを記憶させることができ、フットスイッチで2種のサウンドのオン/オフやバンクの切り替えを行なえるほか、外部ペダルやMIDIでのコントロールも可能で、タップ入力用フットスイッチも含めて、使い勝手もいい。超低ノイズで24ビット/96kHzの高品質A/D&D/Aコンバーターや、原音はA/Dされないゼロ・レイテンシーなどもポイント。
Point1
多彩すぎるエフェクトを搭載
モジュレーション・エフェクトを細かく分類した12種類のエフェクト・タイプ(下記参照)を備える。12タイプのエフェクトは、さらに複数のモードを備えているものもあり、計33種のサウンド・バリエーションを誇り、その幅広さは想像以上のもの。
Point2
フレキシブルなコントロール
パラメーター1と2のノブには、各エフェクト・タイプの詳細なパラメーターを任意に割り振ることができる。通常は階層を潜って設定する値をリアルタイム・コントロール可能なのは便利な機能だ。また、外部ペダルやMIDIでの操作にも対応し、拡張性も高い。
●Effect Type●
01 CHORUS
デジタルのDetuneとDigitalのほか、dBucket、Multi、Vibratoというアナログ・シミュレートも含む5つのモードを搭載。
02 FLANGER
MXR、ADA、Rocket Riderなどの名機の再現のほか、遅延信号の位相違いも含んだ6モードを搭載している。
03 ROTARY
モジュレーションの元祖といえるロータリー・スピーカーを再現したモード。スピーカーの回転速度やマイク位置なども設定可能だ。
04 VIBE
ヴィブラート・モードとコーラス・モードを選択可能。入力段での歪み量もコントロールすることができる。
05 PHASER
2から16段まで6種の位相フィルター段と、エフェクト音が上昇/下降を続けるBarber Poleモードを持つ。LFO波形を5種から選べる。
06 FILTER
3種類のフィルターと8種類のLFO波形が選択できる、アナログ・シンセ的フィルター・エフェクト。外部ペダルでワウ・ペダルにも。
07 FORMANT
人の声を模したヴォーカル・エフェクト効果が得られる。母音は2種が設定でき、母音の切り替わり方によって表情が変わる。
08 VINTAGE TREM
1960年代に開発された3種類のモードを備えたトレモロ・エフェクト。ステレオ接続するとオート・パンの効果が得られる。
09 PATTERN TREM
8ビートの音符を1から16までに任意に分解して、リズミカルなトレモロ効果を得るエフェクト。タップで記憶パターンの最初に戻る。
10 AUTOSWELL
いわゆる“ヴァイオリン奏法”のような発音になる。音の立ち上がり方は0.08秒から4秒までで23段階にて設定することができる。
11 DESTROYER
ビット・レート、サンプル・レート、フィルター処理により激しく加工。レコードのスクラッチ・ノイズを加えることもできる。
12 QUADRATURE
周波数をシフトさせて、リング・モジュレーター効果やSE的反復パターンを生む。周波数をすべてプラス/マイナスにシフトするモードも。
Sound Sample Played By 市川仁也
市川によるMOBIUSを使った試奏音源をチェック! それぞれの音源は、エフェクトなし→エフェクトありという構成になっている。
●デモ演奏1
●Setting
エフェクト・タイプ:QUADRATURE
MODE:FM
SHIFT:1
WAVSHP:Sine
※上記以外のパラメーターは任意
●Setting
エフェクト・タイプ:ROTARY
スピード:282BPM
デプス:Min(7時)
※上記以外のパラメーターは任意
Ichikawa’s Comment
同じフレーズに2タイプのエフェクトをかけてみました。どちらも同じような効果で、コーラスとかトレモロの質感を、めちゃくちゃ短い揺れでかけてみた感じですね。
フレーズはピック弾きのリフで、けっこうオルタナ系の感じを意識しました。こういうモジュレーションの揺れ系は一発かけるだけで一気に雰囲気が出て、音楽的になるというので、僕もよく使います。90年代のオルタナとかミクスチャーっぽい感じで、ちょっと派手めに聴こえるのがいいですよね。
最初のエフェクトはQUADRATUREのFMモードでシフトは一番少なくしています。QUADRATUREは、周波数をいじってウネらせるエフェクトなんですが、倍音とかも付け足されているトレモロという感じで、めちゃくちゃデジタルっぽい音になる。MOBIUSにはほかにもVINTAGE TREMとかPATTERN TREMとかトレモロ・エフェクトはたくさん入っているんですけど、QUADRATUREはいい意味で一番デジタルくさくてエフェクティブな音。それがオルタナ・ロックとかの印象的なリフを弾くときには抜けてきてくれて派手に聴こえます。
ふたつ目はROTARY。デプスはゼロにしていますが、それでもめちゃくちゃ派手にかかる。タップ・テンポでめっちゃ速くかけているんですけど、ちょっとホラーっぽい質感というか(笑)。MOBIUSにはタップ用のフットスイッチがあるので曲のテンポに合わせることも簡単にできますし、曲のテンポに関係ないぐらいに短く設定することもできて、ショート・ディレイのような音色で楽しむこともできますね。
●デモ演奏2
●Setting
エフェクト・タイプ:FLANGER
MODE:Silver
スピード:123BPM
デプス:10時
※上記以外のパラメーターは任意
Ichikawa’s Comment
FLANGERをかけてみました。僕はフランジャーも好きでよく使いますが、リヴァーブでの“スプリング”のような感じで、ちょっとパーカッシブなフレーズだったり、ちょっと土臭い音階の動き方をするものには合うなと思っています。フランジャーの質感自体が耳に引っかかる感じがして、フィルターで言ったら、高速でこもったり開いたりっていうのを繰り返しているような感じ。上の帯域で金属的な部分がカンッと抜けてきてくれるので、リズミカルなフレーズには合うと思いますね。
揺らし方で言うと、フレーズやテンポにもよりますが、リフっぽい使い方をするのであれば、速い周期でかかるようにしたほうがいいと思います。例えば4小節ループのリフを弾いていて、周期が遅いと、場所によってこもっているところと開いているところがあるっていう風になってしまう。それがおもしろい場合もあるかもしれないですけど、基本的には一定でかかってほしいので、スピードは短めにしていますね。フランジャーの設定はスピードが大事だと思います。
●デモ演奏3
●Setting
エフェクト・タイプ:DESTROYER
BITS:32 Bit
SAMPLE:2kHz
FILTER:OFF
VINYL:OFF
デプス:Min(7時)
※上記以外のパラメーターは任意
Ichikawa’s Comment
これは飛び道具なんですけど、DESTROYERというエフェクトをかけました。これ、けっこう好きで使っています。今回の音源は、ちゃんと低音も出してベースっぽさも出して、シンセ・ベースっぽい音色を作っているんですけど、フィルターとかヴァイナルっていうパラメーターがあって、ラジカセから聴こえてくるような音色にできたり、レコードを聴いているときのノイズが足されたりするのがおもしろいんです。基本的にはビット数とかサンプル周波数をいじれるエフェクターで、歪みとはまた違うけど、音としては歪んでいるもので、無機質なんだけど派手だったり、歪んでいるような効果を楽曲でつけたいときにけっこう使います。フレーズとしても、こういうリフっぽいものに歪みに近い感じをかけると、ファズのようなニュアンスにすることもできますね。ビットの感じを調整してblueSkyでMODをいじってリヴァーブをかければ、本当にシンセっぽい音も作れますよ。
●デモ演奏4
●Setting
エフェクト・タイプ:VINTAGE TREM
MODE:Photoresistor
PAN:Off
スピード:316BPM
デプス:15時
※上記以外のパラメーターは任意
●Setting
エフェクト・タイプ:AUTOSWELL
RISE:0.08
SHAPE:Ramp
デプス:11時
※上記以外のパラメーターは任意
Ichikawa’s Comment
この音源はMOBIUSとblueSkyの2段がけで、blueSkyの設定は同じまま、MOBIUSのエフェクト・タイプを2パターンにしています。
最初は、VINTAGE TREMで、デプスをけっこう深めにしています。モードはPhotoresistorというやつですね。VINTAGE TREMはTubeモードとかにすれば、ナチュラルなかかり具合でアナログっぽい感じなんですけど、Photoresistorモードは音を作り替えている感じが強くて、かつそれが音楽的に使えるんです。そこにリヴァーブをかけて広げています。
トレモロって普通のベース・ラインでは使いづらいかもしれないんですけど、コード弾きとかアルペジオにかけると、すごく雰囲気が出てきますよね。エフェクトをかけずにストレートに弾くのもいいんですけど、モジュレーションを付け加えるだけで一気に空間を支配できて、一気にその雰囲気にできる。今回の和音も別におもしろいコードを弾いているわけでもないんですけど、モジュレーションをかけるだけで、“ココじゃないところに連れて行く”っていうことを聴いている人にも伝えられる。それは武器になりますよね。
ふたつ目はAUTOSWELL。立ち上がりを遅くするヴォリューム奏法のような効果ですね。音の立ち上がり方と速度が設定できるんですが、立ち上がり方は一定の速度で上がるRamp、速度は一番短いものにして、ヴォリューム奏法だけど早めに立ち上がる設定ですね。これも好きでよく使う音色で、音の上がってくる速度は楽曲のフレーズとかテンポに合わせています。アタックをなくす効果があるので、普通のベース・ラインには微妙なところですけど(笑)、こういったコード弾きをするうえでは雰囲気を作ってくれるものとしていいですよね。
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