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    プロの宅録環境 – BM RECOMMEND AUDIO INTERFACE revisited

    • Product Description:Kohsuke Nakamura(Recording Engineer)

    TASCAM
    SERIES 102i

    拡張性に優れた高品質モデル

    SPECIFICATIONS
    ●接続:USB2.0●入力端子:マイク・インプット(XLR/TRSコンボ:マイク/ライン、インストに対応)×2、アウトプット(TRSフォーンL/R)、ヘッドフォン(標準ステレオ)×2、MIDIイン/アウト、オプティカル・イン(S/MUX)、USB(Bタイプ)●電源:ACアダプター(付属)●外形寸法:186(W)×65(H)×160(D)mm●重量1.1kg●価格:オープンプライス(市場実勢価格¥34,800前後/税抜)

    メーカー・サイト


     タスカムはティアックのレコーディング機材部門として独立、1970年代からMTRを開発してきた実績のあるブランドです。特に世界初のカセットテープMTR“Portastudio”は爆発的なヒットを記録したので、1990年代までに宅録に挑戦したことのある読者は一度は手にしたことのある機材ではないでしょうか? リーズナブルな価格帯でありながら、不要な色づけがなく素直でクリアな音質が特徴で、筆者も同社の単体プリアンプを現在でも使用しています。本機はアナログ2イン/2アウトとコンパクトに無駄を省いた構成で、ハイクオリティなサウンドをシンプルに録音したいときにはベストな選択肢のひとつです。最大8チャンネル入力が可能なオプティカル端子も備えているので、必要であればシステムを拡張することも可能。また、Windows/Macのみならず、iOSにも対応しているので、iPadなどでDTMを楽しみたい方にもお薦めできます。

    ひと味違うマイク・プリアンプ

     この価格帯でありながら、ディスクリート形式のマイク・プリアンプを内蔵。色づけのない音質と、超低ノイズを実現しています。これはもともとが業務用ブランドとして培われた技術力が強みになって生きている部分で、最もベーシックなところがしっかりしているのは信頼が置けます。単体で10万円クラスのプリアンプまでは、価格が上がれば上がるほどノイズが減り、クセが取れて使いやすくなる傾向がありますが、本機は良い意味で普通。当たり前の音を当たり前に録音できる、基本性能を備えています。あとからEQなどで補正して無理矢理に良い音を作ろうとするよりも、何もしないで良い音のほうが作業が簡単になるので、ストレスも減り音楽そのものに向き合える時間が増えますし、何より処理が減る分だけ音抜けも良くなります。これまで興味がなかった方には、マイク・プリアンプはどれでも同じに感じるかもしれないですが、ベースは同じでもベース・アンプで全然違いが出てくることを思い出してもらうと、イメージしやすいと思います。スペックには出にくい部分ですが、タスカム製品はここが他社とはひと味違うところです。

    DSPミキサーを搭載

     録音の際のモニターの状況によって、かなり演奏内容が変わってきます。DAWソフトを経由したモニター音は遅れが発生するので、聴きながら録音するのには不向きなため、録音する音を直接モニターするダイレクト・モニター機能が搭載されることが多いですが、本機ではそれに加えてコンプ、EQ、リヴァーブが内蔵されたDSPミキサーが搭載されています。これによって例えばヴォーカル録音時のモニターに、うっすらリヴァーブを返すような使い方ができ、やりやすさにかなりの差が出てくると思います。こう言った設定は複雑なことが多く、マニュアルを熟読しないとできないので初心者は挫けがちですが、Webサイトに“TASCAMではじめるボーカル録音徹底ガイド”がPDF形式で配布されており、順番に追っていくだけで録音からミックスまでの必要最低限がわかるようになっていました。DTM機材のマニュアルは、ユーザーが最初からわかっている前提で書かれているものが多く、オーディオ・インターフェイスとDAWソフトやプラグインなど別々な製品のため、初心者には取っ付きにくいと思います。このマニュアルはバンドル・ソフトとSERIES 102iの組み合わせで書いてあるので、これまで触ったことのないユーザーの入り口としては最短距離になるでしょう。

     バンドルソフトはDAWがCubase LEで、アンプ・シミュレーターとエフェクトにIK Multimedia AmpliTubeとT-RackSのタスカム・エディションが付属。そのほか、AIがコンプやEQの自動処理を行なうiZotope Neutron Elementsが付いて来るので、初心者にも安心です。

    • SERIES 102iのフロント・パネル

    ●Product Check by 大林亮三(SANABAGUN.)

    制作していてもストレスにならないすごく自然な音。

    ━━SERIES 102iを使ってみた率直な感想は?

     まず、純粋に“音がいいな”と思いましたね。“音がいい”っていうのもいろんな見方があると思うんですけど、これはいい音源を聴いたときに感じる“音がいい”に似ていて、いわゆるオーディオ的に高音質だなと。タスカムは長年にわたってTEACのブランドでオーディオ機器も作っているメーカーということで、なるほどなと思いましたね。

    ━━ワイドレンジで、原音に忠実に録音できるということでしょうか?

     そうですね。それに、ストレスにならない音っていうのかな。耳が痛くならない感じがします。デジタルチックじゃなく、すごく自然な音ですね。だから制作していてもストレスにならないし、快適に作業できると思いますよ。制作やレコーディングのときって、そういう部分はすごく重要だと思うんです。あと、ノイズが全然ないというのも好印象でしたね。音圧もあるというか、すごく余力のある感じがして、そういう意味で音作りもしやすいんじゃないでしょうか。

    ━━そのほか、全体的な使い心地についてはどんな印象を持ちましたか?

     インプットはマイクもシールドも接続できるコンボ・ジャックがふたつ付いているんですけど、インスト、マイク/ライン、あとはファンタム電源の切り替えスイッチもフロント・パネルについていて使いやすい。こういうパネルのレイアウトって大事ですよね。筐体自体にも角度がついていて、机に置いていてもフロント・パネルが持ち上がっているから操作しやすいですし。ちょっとしたことなんですけど、そういうちょっとしたストレスの積み重ねが、制作しているとイラっとしたりするんです(笑)。いかにストレスなくできるかって、レコーディングではモチベーションやクオリティをすごく左右しますから。

    ━━入力している音とDAWの再生音のバランスを取るモニター・バランスのつまみはどのように活用できると思いますか?

     これも直感的で使いやすいですよね。レコーディングのときに自分が弾いている音とオケとのバランスを取ったりもできるし、例えばプラグインで音作りをするときに原音との比較や、アンプ・シミュレーターと原音のミックス・バランスの具合の確認としても使えるかなと思います。あとは、レイテンシーが気になるプラグインもたまにあるので、そういうものを使うときにはプラグイン自体はかけっぱなしにしつつも、モニターを原音のほうに振り切ってレコーディングするとか。

    ━━ヘッドフォン端子がふたつあるというのも珍しい装備だと思います。

     そうですね。ベースの録音とは違いますけど、家に友達が来てデモを作るときに、仮歌を録るときにはヘッドフォンにしなきゃいけないんですけど、そういうときに2系統あると、歌う人はもちろんディレクションする人も一緒に聴けるからいいかもしれないですね。

    ━━内部DSPを搭載し、EQやコンプの設定が可能なミキシング・コンソールの画面も用意されています。

     僕はDAWであとがけする派ですけど、事前に音を作りこみたいとか、プラグインにお金をかけない人にはいいかもしれないですね。そういう意味では、DAWソフトやアンプ・シニュレーター、ミックス用のソフトも付属しているから、これから宅録を始めたいという人も助かりますよ。

    ━━102iを総括すると?

     正直、価格を見てビックリしたんですよ。このノイズの少なさと音質なら、もっと高い製品なのかなと思っていたので。オーディオ機器も作っているメーカーの企業努力がすごく感じられる、使いやすくて音がいいインターフェイスだなと思いました。

    PROFILE
    大林亮三
    おおばやし・りょうぞう●2017年の9月にSANABAGUN.に加入。ソウル、ファンク、ブルース、レゲエなどのルーツ・ミュージックを愛し、ヘヴィでうねるようなベース・プレイが持ち味。自身のリーダー・バンドRYOZO BANDや、COMA-CHIやB.D.といったヒップホップ・シーンでも活躍する。

    Official HP

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