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    勝矢匠が語るセッションマンの音作り「一番意識しているのはキックの音色と帯域」【インタビュー後篇】

    • Interview: Hikaru Hanaki
    • Photo: Chika Suzuki

    インタビュー前篇はこちら

    “なるべく原音から変えない”ということは、かなり意識しています

     まるで変わりましたね。yamaのチームは、どこかバンドのような雰囲気があって、いろいろ話し合いながら主体的にものづくりができる現場だったんです。“なんとかやっていこう”“一緒に頑張ろう”と言い合いながら進めていくような感覚でした。その経験があったからこそ、今ではどの現場に行っても、そういう心持ちで向き合えるようになったと思います。

     ピック弾きは全然やったことがなかったので、今になって真面目に練習しています。あとは最近、音源で同世代のベーシストが弾いた曲をライヴのサポートでやることが増えてきたんですけど、みんな超うまい上にクセがすごい(笑)。越智俊介くんもそうだし、高木祥太くんもだし、“これを再現するのか!?”っていう。どこまでを再現して、どこまでを自分のフィールでやるのかは、けっこう慎重に考えながらやっています。最終的には、いろいろ消化したうえで自分色でやるっていうのが多いんですけど。

    勝矢匠

     タッチとグルーヴ感ですかね。とはいえ、自分ではそこまで強い個性があるタイプだとは思っていなくて。だからプレイそのものというより、“みんなビッグラブ”みたいな気持ちで現場にいること、そのマインドの部分が自分らしさなのかもしれません。とにかくプロジェクトが前に進んでいくこと、しかもチームが心身ともに健康的に進んでいくことを常に意識している気がしますね。

     最初はラルクのtetsuyaさんから始まり、クリス・ノヴォセリック(ニルヴァーナ)、そこからレッチリのフリーとホルモンの上ちゃんに憧れたスラップ期があって、アンソニー・ジャクソンが好きになり、そのあとはウィリー・ウィークスに長い間ハマってました。あとは高校生くらいからずっと細野晴臣さんが好きです。自分にとってのベース・アイドルですね。

     雑食なんですよね。細野さんは高校生の頃に“ロックの歴史”を順に追っていた頃にはっぴいえんどを知って、のちにソロ・アルバムを聴いて大好きになりました。アンソニー・ジャクソンは、矢野顕子さんのバックでやっていた演奏がすごく好きで、めちゃくちゃ聴いてましたね。

     ウッド・ベースを始めてからは、スコット・ラファロとロン・カーター、レイ・ブラウン、あとはチャールズ・ミンガスにすごくハマりました。スコット・ラファロは最近聴いても発見があったり、学べるところが山ほどあってやっぱりすごいです。ここ最近のヒーローはPJ Mortonの『Gumbo Unplugged』(2018年)で弾いてる、ブライアン・コッカーハム。少し前のアルバムですが、いまだに週に1回はフルで通して聴くほど好きなアルバムです。

     最初は横浜駅の楽器屋で買ったバッカスの初心者セットで、高校では少しグレードが上がったバッカス製を使ってました。楽器のことはよくわからなかったから、大学の後半までその1本だけでずっとやってましたね。そのあとに買ったのが、今日持ってきたMike Lullのベースです。

     一本あれば満足するタイプなんですよね。マクドナルドに行っても毎回同じメニューを頼んでしまう、みたいな(笑)。でもMile Lullは、当時はゴスペルにハマっていたので、ソリッドな音が出る5弦ベースが欲しいなと思って。それはずっと使い続けています。今日持ってきたほかのベースは、仕事が増えてきた直近の3、4年で集めたやつです。

     基本的には、楽曲の感じとアンサンブルですね。楽曲の雰囲気によってベースをプレベ、ジャズベみたいな大まかな枠を決めて、次に歌とキックがどの帯域にあるかを考えて、それに合わせて使うベースを決めています。

    勝矢匠
    長年愛用するMike LullのJBタイプ

     一番意識しているのは、キックの音色と帯域ですね。キックが下にあって、ベースは少し上にいたほうがいいと感じたら、少し硬い音にしたり、腰が高いベースを選んだりする。そういう音作りにするのがありだな、という判断になります。逆に、キックが少し上にいて、ベースが下を支えたほうがいい場合は、プレベだったり、下がよく鳴る楽器を選ぶことが多いですね。プリアンプのブレンド具合で、キックとの位置関係を決めることも多いです。でも、良い位置関係に収まっていれば、極端な話、ベース自体は何でもいいとも思っていて。大事なのは音色と定位ですね。とにかく、全体のサウンドが良くなることを常に意識しています。そういう意味では、むしろ木材や重さといった要素のほうが重要かもしれないですね。

     特にプレベだとは思うんですけど、やっぱり、どうしても当時の楽器にしか出ない音がある、ということが体感でわかってきて。倍音感が違うというか。ジャズベは現行品でも自分の好きな音の楽器がわりとすぐに見つかるので、プレベとジャズベでは全然違う印象ですね。

      “なるべく原音から変えない”ということは、かなり意識していますね。やっぱり直アンが一番いい音。一番純粋で、何も削がれていない、レンジのある音だと思うので。楽器の制作者も、バンド・サウンドのなかで一番座りのいい音をイメージして作っているはずじゃないですか。だからこそ、その音を必要以上に加工しすぎない、というのが自分の目標ですね。

    勝矢匠のベース・プレイを本人のコメントともにチェック!

    TOMOO『DEAR MYSTERIES』(2025年)

     TOMOOの最新作。勝矢は①に参加し、Mike Lullのベースを使用した。“セカンドラインのノリを出すために音価に気をつかいました。ツアーを重ねるうちに楽曲への理解度が深まっていくのを実感しているので、ぜひライヴで観てほしいですね”。

    藤井風『HELP EVER HURT NEVER』(2020年)

     ⑥⑦⑨にコントラバスで参加。“当時はコントラバスは生音で音量を出すものだと思っていたので、タッチノイズもかなり残っています”という。勝矢いわく“20代の勢いが生々しく刻まれている作品”とのこと。

    Nao Kawamura『Cue』(2020年)

     ②〜⑤に参加。参加した作品が世に流通するという意味で、勝矢いわく“キャリアのスタートとなった一枚”。澤近立景(g)や長塚健斗(vo/WONK)など、今でも交流のあるメンバーとともに録音されている。本作でもMike Lullのベースが使用された。

    Information
    勝矢匠(かつや・たくみ)
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