GEAR
常識を覆すモダン・スタンダード
BEE WINGの実態に迫る
現代のPA/録音環境の進化に伴い、ベースには従来以上に高い解像度が求められている。そんな現代の低音事情を反映し、ひとつの解答として誕生したのが、ベーシスト村田隆行がサウンド・デザイナーを務める新ベース・ブランド“BEE WING”だ。現場を知り尽くしたプロ・ベーシストが監修する本ブランドは、いかなる実力を秘めているのか。
ベース・マガジン2026年5月号では、BEE WINGの概要のほか、ラインナップする各モデルの解説などを5ページに渡って掲載しているが、ベーマガWEBでは既に実現場にBEE WINGを導入しているという鈴木渉と村田隆行による特別対談をお届けする。
第一線で多くのトップ・アーティストのボトムを支える鈴木は、BEE WINGに何を感じたのか。楽器に対して深い愛情を持つ両者が、“現代の低音事情”も踏まえて語り合ってくれた。
オリジナルの楽器を作るからには同じにしちゃいけない
そこはちょっとアーティスト魂というか(笑)
——村田隆行
——村田さんが監修する新ベース・ブランド“BEE WING”は、“ステージやレコーディングで求められる現代の低音事情を反映させる”を、コンセプトに掲げています。第一線で活躍するプロ・ベーシストのお二人の目線として、“現場で求められる低音”とはどういったものだと考えますか?
村田 まずひとつとして、求められる“解像度の高さ”は、現代の音楽シーンでは圧倒的なものになったと思っていて、この“解像度”についてはBEE WINGのテーマのひとつでもあるんです。イヤモニ、ベース・アンプ、お客さんが聴くスピーカー……一昔前に比べたらクリアさが段違いになったというか。コンサートの設備が一流になればなるほどより明瞭になって、“CDを流してるのかな?”ってぐらいのクオリティになっている。そういう意味で言うと、ベースを問わずいろんな楽器・機材の発展は目まぐるしいものがありますよね。
鈴木 そうですね。と同時に、多様な音楽が増えたからこそ、それに適合する出力形態も一緒に増えていっているように思います。現代ではベーシストに求められる音域も増えていってますしね。それこそ多弦ベースを求められることなんて当たり前になりましたから。

——現在BEE WINGの4弦モデルを現場に導入している鈴木さんの目線から、BEE WINGの“解像度”をどのように感じますか?
鈴木 解像度ってオーディオ的な話でもあると思うんですけど、BEE WINGに搭載されているプリアンプの効き方はすごくいいポイントに設定されていて、それがこの解像度の高さにつながっていると思います。EQをブーストした時の無理のないヘッドルームだったり、オーディオの観点から考えてもすごく面白い。既存の楽器にはあまりなかったような感じで、そこがBEE WINGの強みであると思います。オーディオ的な良さと楽器としての良さって乖離があるけど、そこがいいバランスで混在しているんですよね。
村田 プリアンプについて触れていただきましたけど、僕がBEE WINGのプロジェクトをスタートする前からずっと思っていたことが、“本体が鳴る楽器にアクティヴ・サーキットを乗せることは難しい”ってこと。世の中のアクティヴ・ベースの大多数は、本体の鳴りはある程度に留めつつ、その分を電気で出すモデルが多いと思うんです。その方がいわゆるアクティヴらしい電気的な音が出せますから。でもBEE WINGはその発想ではなく、楽器本来の、フレットから弦が移動する時のあのニュアンスを出したかった。その部分がナチュラルに表現できるかつ、バキバキなサウンドも出せるというイメージを目指しました。
鈴木 なるほど。そうなってくると、なおさらアクティヴ・サーキットのヘッドルームが重要になってくる。
村田 だからこそ、アクティヴ・サーキットの開発だけで3年近くの期間を要しましたし、もちろんヘッドルームの広さという部分には特にこだわりました。イメージとしてはアコースティック・ギターにピエゾ・ピックアップとプリアンプが付いているような感覚に近いかもしれない。BEE WINGのエンジニアさんもまさにそういう考えを持っていて、だからこそ僕の思い描くコンセプトをすんなり理解してもらえたというか。結果、楽器本体のニュアンスがストレートに出せるプリアンプが完成したと思っています。でも僕、個人的には元々3バンドEQがあまり得意じゃなかったんですよ。
鈴木 そこの感覚が僕と一致してるんだよね。2バンドの方が扱いやすいというか。
村田 いろんな好みがあることは大前提として、ミッドの位置って決めづらいし、ミッドがあるがゆえにポットが1つ付いて、配線が1つ増えてってなると、その分音がこもるんです。加えてミッドがあることでトレブルとベースの位置も余計に迷っちゃう、みたいな。だから2バンドの方が、僕らが考えている、音のコシのポイントに当てやすいというか。その中でBEE WINGのエンジニアさんが持ってきた3バンドEQを試してみたら、びっくりするくらいちゃんとコシに当たるんですよ。ミッドを突けばさらにプッシュできるし、ちょっと絞ると90年代のような“これぞニューヨーク・サウンド”みたいな質感にも持っていける。これはびっくりしましたね。
鈴木 そもそも僕はベースの本体側ではあまり積極的にイコライジングをしない方で、2バンドの方が使い勝手が良いと思っていて。普段メインで使っているAlleva-Coppoloはちょっと変わったところに2バンドのピークがあって、通すだけで楽器が1個前に進んでくれるような、アクティヴにすることでより美味しくなる印象があるんです。でもBEE WINGの3バンドEQは積極的にイコライジングしたくなるんですよ。(アーニーボール)ミュージックマンのスティングレイを弾いてる時の感覚に近いというか。

Profile
鈴木渉(すずき・わたる)●1980年生まれ、東京都出身。高校時代にベースを始め、2003年にクラブジャズ・バンドurbでデビュー。現在はサポート・ベーシストとして第一線で活躍し、堂本剛、ナオト・インティライミ、清水翔太、久保田利伸をはじめとした数多くのトップ・アーティストのライヴやレコーディングに参加している。国内外のさまざまな現場から厚い信頼を集めるトップ・セッションマンのひとりだ。
村田 僕ら2人ともミュージックマンの愛好者だから、この話すっごい分かります! 70年代80年代のディスコとか、ピノ・パラディーノのあの感じとか……いわゆるハムバッカーのミュージックマン・サウンドに僕も大いに影響を受けていますから。
鈴木 BEE WINGやスティングレイの3バンドEQって、“このツマミを回すとこの帯域が出てくれるんだ!”とか、“楽器の鳴りがよく分かる!”って感触なんですよね。そういう意味でもすごく優秀です。BEE WINGは村田くんが開発に長期間をかけて、いろんなトライ&エラーを繰り返しての現状だとは思うんですけど、開発の意図がしっかりと弾き手にも伝わってくる。
村田 77年とか78年製のスティングレイ持った時、トレブルとベースをむやみにいじるのではなく、補正するように使った時に“プレベをハイパーにしたような感覚”があって。あの感動を未だに覚えています。だからあの感動とか“なるほどね”って感触をBEE WINGにも大いに踏襲しているんです。
鈴木 MMピックアップって解像度がすごくて、強調して出すだけじゃなく、出さない時の気持ちよさも明確にあって。だからスティングレイが大好きな自分にとってはすごく親近感を覚える3バンドEQです。ピックアップもすごく優秀で、プリアンプとの相性も抜群ですし。
村田 せっかく鳴る本体と満足のいく3バンドEQを作ることができたので、鳴りを素直に受け止めてくれるピックアップを載せたかったんです。その中でBEE WINGに載せているテスラ社にオーダーしたオリジナル・ピックアップがすごく良くて! 最初に送ってもらった試作品の時点で十分に使えて、“何これ!?”みたいな。びっくりでしたよ。
いろんな場所に連れていってあげて
これからもっと理解を深めていきたい
——鈴木渉
——鈴木さんがBEE WINGを実現場で使用した際、使い勝手やサウンドはどうでしたか?
鈴木 実際にレコーディング現場にBEE WINGを持っていったとき、3バンドEQのイコライジングを全フラットで使ったんですけど、“十分これで使えるじゃん!”って思いました。何もしなくても音が固まってくれたから、これでいいじゃんって。エンジニアさんからも好評でした。レコーディングとステージでアンプを鳴らすとでは印象も変わるだろうから、いろんな場所に連れていってあげて、これからもっと理解を深めていきたいと思っています。

村田 本当に嬉しいですね。BEE WINGの強みとしては、さっきも言ったように楽器の解像度とヘッドルームの広いアクティヴ・サーキット。僕の持論として、楽器のレンジが広ければ、コントロールでそのレンジを狭めることもできると思うんです。さらに出力を解放したり引っ込めたり、EQするのは最終的にプレイヤーの右手と左手だと思っていて。だからこそ渉くんクラスのプレイヤーがBEE WINGのコンセプトをどう思ってくれるのかっていうのは、スタジオで音を出してくれる瞬間まで、半分楽しみ半分ドキドキみたいな感じだったんですよ。
鈴木 村田くんは、出すだけじゃなく、引っ込める方のサウンド作りにもすごくこだわっている人だってことは僕も理解していました。初めて弾かせていただいた時は村田くんに忖度なくインプレッションをお話ししたんだけど、第一印象がとにかく良くて、すぐにいろいろな部分を共有しましたね。細かい部分まで話をする中で、楽器への相互理解が深まった感じでした。そういう意味でもBEE WINGとは本当いい出会いだったなぁ。
村田 まさにその通りで、BEE WINGは解像度が高いし、出そうと思ったら出せるんだけど、逆に“あえて出さない音楽的なサウンド”みたいな、そういったものも楽しめる楽器だと思っています。
鈴木 シェフのこだわりの抜いた食材の産地とかレシピを聞いているような感覚(笑)。早く弾きたいですね。
——その他、鈴木さんがBEE WINGのベースに感じたポイントとは?
鈴木 村田くんってスラッパー感があるじゃないですか。だからその目線で気持ちのいい(音の)スピード感をすごく感じました。スラップする人が喜ぶ速さというか。そのなかで指弾きの時もスクープされる感覚はなくて、しっかりとニュアンスをスピーディに出力してくれる。ピックアップの取り付け位置とか、ネック・バインディングとかのルックス的な部分も含めて、70’sの美味しいとこ取りをしているイメージです。
村田 ありがとうございます! 今“70’s”というワードが出ましたけど、準備や構想を含めてBEE WINGを7年ぐらいやっていく中で、他社との比較ではなく、BEE WING独自の路線を歩みたいと思うようになって。僕の大好きな70’sの要素はもちろん含まれているけど、純粋に“音楽の中でハマるスタンダードな楽器”って部分を自然に見ていくというか。やっぱりオリジナルの楽器を作るからには同じにしちゃいけないなって。そこはちょっとこうアーティスト魂というか(笑)。
——いわゆる“コピー・モデル”を作るのではない、と。
村田 はい。レオ・フェンダーさんをリスペクトしているからこそ、フェンダーをコピーするみたいなことはフェンダーに対する冒涜だと思っていて。常にBEE WINGにとって一番いい仕様/ルックスを実現したい、という気持ちでいます。もちろん、レオさんをリスペクトしてるからこそ、その要素も残ってるとは思うんですけどね(笑)。ただ、気持ちとしてはリスペクトがある中で、新しいものを作っていくという思いを強く持っています。
鈴木 なるほどね。ちょっと納得がいった部分があります。攻めてる部分もあるけど安心感もある、いわゆるPスタイルを踏襲した可愛いボディ・シェイプとか、どこかヨーロピアンレトロなイメージ。ヘッドの形状も含めて面白いベースだと思いました。
村田 レトロなビザール系のボディ・デザインでよく見る正面から見たところでの左側が膨らんでるデザイン。あれって2026年現在だからこそ新しいんじゃないかと思ったんです。BEE WINGのカッタウェイだとハイ・フレットで複雑なコードも弾きやすいんですよ。
鈴木 これはあくまで個人的な感触だけど、最初にBEE WINGを弾かせてもらった際、弾いてて楽しい気分になったんです。4弦の開放を鳴らしているだけで、“あ、良い倍音が鳴るベースだ!”って。その倍音ってやっぱりネックの厚みとかこのボディ形状が大きく影響しているのかもしれないですね。

PROFILE
村田隆行(むらた・たかゆき)●福岡県出身。十代の頃よりR&B、ファンク、フュージョン、ロックなどの音楽に憧れギターを始め、のちにベースに転向。東京を拠点にジャンルレスなセッション・ワーク、アーティスト・プロデュースや編曲/トラック制作、楽曲提供を行なう。その他、“THE CHOPPERS REVOLUTION”の活動、2021年にはソロ・アルバム『The Smiling Music』を発表している。またラリー・グラハム、チャック・レイニー、マーカス・ミラーといったワールドクラスのベーシストとの共演歴も持つ。
——ピックアップしたいBEE WINGのポイントとして、国産でありながら20万円強という価格帯です。楽器の価格が高騰している昨今において、大きな意味を持つことだと思っています。
鈴木 ビギナークラスのモデルを使っていた歴の浅いプレイヤーが購入する、次の選択肢としても良さそうですよね。それにBEE WINGを選ぶことで、早い段階で厚みのあるネックが持つ倍音の出方を感じることができる。すごくいいことだと思っています。
村田 20万強って価格帯だと、学生の子とか、初心者さんがもう少し踏み込んだ楽器が欲しい、みたいな次のベースの選択肢にも入ってくるのかなと思っていて。そこは目指したかった部分なんです。
鈴木 その中で、僕もお値段以上の価値を感じているからこそ現場で弾かせていただいているわけで。手に入れやすい価格帯でありながら、担保されたクオリティがあるんだったらそれ以上のことはないですから。とにかくいろんな人に弾いてほしいな。“このベースを持って一緒に楽しんでいこう!”って思います。
村田 これから先、BEE WINGが進んでいけばいくほどアイデアが出てくると思っています。もちろん楽器としての仕様だったりは僕が主軸となっていろいろやってくわけですけど、カラーリングなどのデザイン面はBEE WINGの一流のデザイナーさんがいるので、これからさらに発展を遂げていくブランドだと思っています。まだスタートしたばかりだからこそ、ユーザーの人たちと交流しながらいろいろな意見をもらうことも楽しみです。
鈴木 趣味でベースを弾いてる中高年のスタッフさんとかが、“国産の80年代のベースに当時憧れてたんだよね”みたいな話をしていたことがあって。なんかその感覚でBEE WINGを手にしてみてもいいと思うし、そこからまた新しい景色を見せてくれる楽器だと思う。楽器が高騰して買いづらくなった時代だからこそ、良い選択肢になってくれるんじゃないかなって期待も抱いています。BEE WINGはまだまだ始まったばかりだけど、しっかりとした音のクオリティとプレイヤビリティを持ったブランドに育っていってほしいですね。
Information
■BEE WING Experience(体験会)開催
BEE WINGは、音量が上がる環境でも輪郭を失わない低音を目指して設計されています。その違いは、実際の演奏環境でこそ明確に表れます。各モデルはイシバシ楽器 渋谷店にて試奏可能。
また、BEE WING Experience(体験会)にて、実際にサウンドを体感いただけます。
BEE WING Experience(体験会)詳細・申込はコチラ!
製品についてのお問い合わせは、BEE WING(Mail:customer@bee-wing.com )まで。
◎https://www.bee-wing.com/
2026年5月号にてBEE WING特集を掲載!


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