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    【第126回】その練習方法だと、リズム感は鍛えられません 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

    • Text:Jun Ishimura

    拙著『ベーシストのリズム感向上メカニズム』や、この『低音よろず相談所』をご覧いただいて、いろいろなミュージシャンがベースやリズムを習いに来ます。有名なプロからビギナーまで、悩みや課題は人それぞれなのですが、“普段どういうふうに練習してますか?”と尋ねると、割と多くの人がやっている(でもオススメできない)練習があります。それは、“曲の音源を流して、それに合わせて練習する”という方法です。

    曲の構成を覚えたい、とか、ただ楽しく演奏したい、ということなら“音源に合わせて弾く”のもいいとは思います。まあ、楽しいですしね。でも“リズム感を向上させたい”“良いグルーヴを身につけたい”という目標があるなら、話が違います。

    音源に合わせて練習しても、多くの場合、リズム感は良くならないんです。それはなぜか?

    理由① 自分が何もしなくても、すでにカッコいい演奏が流れている

    当たり前のことですが、カッコいい音源そのものは何も問題ないです。むしろ、よく聴いておおいに参考にすべきです。ただ、音源を聴きながら練習してばかりいると、自分以外の誰かのリズムを頼ってしまう癖がつきます。これは良くないです。どの楽器のプレイヤーでも、自分ひとりだけでグルーヴィな演奏ができるようになるべきです。特にベーシストはそうです。

    理由② 自分の演奏がダメでも、うまく弾けてるような気分になる

    音源に合わせて練習していると、もし自分の演奏がちょっとヨレたりずれたりしても、お手本となるグルーヴが音源から聴こえてくるので、実力以上にうまく弾けている気分になってしまいがちです。これだと、気持ちはいいけれど上達はしません。

    例外

    では音源に合わせて練習するのが絶対にだめかというと、例外もあります。音源のベースやほかの楽器をよく聴いて、グルーヴ・ニュアンス・音色・ダイナミクスなどのディテールにしっかり注意を向けながら、同時に演奏できますか? そして、聴こえてきたグルーヴを自分の演奏に反映させていくことができますか? これができるのなら、音源に合わせて練習することでタイムやグルーヴが向上するかもしれません。それができる人はぜひ取り組むといいと思います。これは、ある意味一番自然で音楽的なアプローチかもしれません。

    ただ、こういう感じで取り組める人は少数派だと思います。注意力や観察力が強くないとこれはできないし、さらに注意力を同時にいくつかの対象に振り分けられないとできません。音源を流してただなんとなく一緒に演奏するだけで精一杯、という場合は、やはりこの練習はオススメしません。

    オススメの練習

    では、リズム感を鍛えたい場合、どういうふうに練習すればいいのか? メトロノームを使いましょう。ただし、メトロノームを使った練習というと拍のオモテ(4分音符)で鳴らす方法が一般的ですが、この方法だとメトロノームに頼った状態で演奏しがちです。なので、できれば1拍目のオモテに鳴らさない使い方がベターです。たとえば、バック・ビート(2拍目・4拍目)に鳴らす、とか、各拍のウラに鳴らす、などですね。これだと、拍のオモテに鳴らすほどにはメトロノームに頼ることはできないので、リズムに対する責任感が培われます。リズム感を鍛えたいなら、音源ではなくメトロノームを使う、そして“メトロノームに頼りっきりにならない使い方”をするのが効果的です。ぜひ普段の練習に取り入れて、リズム感を鍛えていきましょう!

    石村順でした! 

    書籍版『石村順の低音よろず相談所』はこちらから!

    石村順
    ◎Profile
    いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

    ◎Information
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