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    pandaMidi Solutions Future Impact V3 解体新書

    • Text,Playing&Recording:Makoto Kawabe

    伝説的ベース・シンセ・ペダル“Deep Impact SB1”の後継機として、ハンガリーのpandaMidi Solutionsから2015年にリリースされた“Future Impact”は、99種類の膨大なプリセット・プログラムを持ち合わせた、超多機能型ベース・シンセだ。多くのトップ・ベーシストから愛用され、いくつもの楽曲でその特異なサウンドを耳にできるが、全貌が掴みづらいこともあり、アマチュア・シーンではそこまで大きな広がりを見せていない。

    そこで今回は、最新モデル“V3”に進化し、ブラッシュアップが施されたFuture Impactの実力を徹底検証。内蔵のプリセット音色を用いたデモ音源とともに、シンセ・ベースがムーブメントとなった現代シーンにおけるFuture Impactの有効性を考えていきたい。

    なお、発売中のベース・マガジン2022年11月号では、第一線の現場でFuture Impactを使用する岡峰光舟(THE BACK HORN)と休日課長(ゲスの極み乙女/DADARAY)のふたりにFuture Impactの魅力を語ってもらっているので、そちらも合わせてチェックしてほしい。

    Future Impact V3を徹底解剖

     Future Impactは、基本的にペダル型ベース・シンセに分類されるが、各種フィルター、オーバードライブ/EQ/コーラスなどのエフェクトも備え、それらがシンセ音源だけでなく原音に対しても機能するマルチ・エフェクター的な側面もあわせ持つ。オフ時はリレーによるトゥルー・バイパス仕様だ。前身モデルであるAKAI ProfessionalのDeep Impact SB1と同様に、本体で11種の主要なパラメータを編集・保存できるが、新装備されたMIDIイン/アウト端子を経由してPC接続すれば、専用エディタによって緻密な音色編集やプリセットの読込/保存、ファーム・ウェアのアップデートなども可能。MIDI鍵盤やPCからの操作でモノフォニックのアナログ・モデリング・シンセサイザー音源としても機能し、ファーム・ウェアV2.03以降はチューナー機能も装備された。

     2019年10月、ファイル・フォーマットが変更され、ファームウェアがV3.0に更新されたのを機に“Future Impact V3”となる。6弦ベースの音域まで対応していた入力が新たにギター音域やEWIにも対応し、プリセットも新たに書き換えられたほか、4つのFlexiコントロール機能(すべての音色パラメータをLFOやエンヴェロープなどでリアルタイムに操作できる)などが追加され、より自由度が高く複雑な音色効果が構築できるようになった。また、本体デザインが一新され、本体中央のパラメータには無印(全開時)の選択肢が増え、データ非表示を選びやすくなったほか、ファームウェアV3.6で専用エディタにプリセット管理しやすい“Manager”機能が搭載された。ちなみに旧型のFuture ImpactでもファームウェアのアップデートによりV3と同等の機能を得ることが可能だ。

    Future Impactの前身モデル、AKAI Professional/Deep Impact SB1

    Front Panel

    ①Output Level
    出力レベル調整。バイパス時と同じくらいのレベルに設定するのがセオリーだ。

    ②Parameter
    主要な11種のパラメータを選ぶエンコーダ。選択した各パラメータの数値がDataの桁に表示される。パラメータが選ばれていないとデータ非表示となる。

    ③Input Level
    入力レベル調整。入力レベルに応じて緑、オレンジ、赤のLEDが点灯するので、常時オレンジのLEDが点灯するように設定するのが基本だが、全開にして生音を安定的に歪ませ、効果を固定させるのもアリ。エフェクト効果を左右する重要なパラメータだ。

    ④LED表示
    左からバンク、プログラム、データの各数値を示す。例えば“125”と表示されると125番のプリセットが選ばれていると思いがちだが、1桁目は選択したパラメータの数値(デフォルトではすべて5)が表示されているだけで、選ばれているのは“12”番のプリセット。演奏時はデータ非表示にすると見やすいだろう。

    ⑤Edit/Bank Up
    選んだパラメータのデータを変更するエンコーダ兼バンク切り替えプッシュ・スイッチ。パラメータのデータを変更するとLEDドットが点滅。この時点でノブを押すとLEDドットの点滅が消えデータが保存される。点滅していない状態でノブを押すとバンク切り替えスイッチとして機能し、プログラム番号が変わらずにバンクがひとつ増える。パラメータの数値を変更したものの保存したくない場合はPROGRAMフットスイッチで異なるプログラムを選ぶ。

    ⑥Programフットスイッチ
    プログラムの切り替えスイッチ。デフォルトの新モードでは1回押すごとにプログラム番号が増え、9の次はバンクがひとつ増えて0に戻る。99(バンク9、プログラム9)までいくと01に戻る。長押しすると順次数値が増え、押し続けると加速し、離したところで止まる。素早く2回押すとプログラムがひとつ減る。またスイッチを押しながら電源を入れると初期設定モードに入る。

    ⑦On/Offフットスイッチ
    エフェクトのオン/オフ・スイッチ。オンで“On”LEDが点灯。デジタル・エフェクトながらエフェクト・オフ時はリレーによるトゥルー・バイパスだ。スイッチを長押しすると出力がミュートされチューナー・モードに入る。もう一度スイッチを押すとエフェクト・オンの状態でミュートが解除される。

    Rear Panel


    MIDIイン/アウト端子にMIDI鍵盤を接続すればFuture Impactを外部シンセ音源として活用できるほか、MIDIコントローラーを接続して任意のパラメータを操作することも可能。PCへの接続もMIDI経由だ。電源は外部供給のDC9Vのみ。出力100mA以上のパワー・サプライを用意しよう。

    【Specifications】●コントロール:アウトプット・レベル、パラメータ、インプット・レベル、エディット/バンク・アップ、プログラム・スイッチ、オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット、MIDIイン、MIDIアウト●外形寸法:125(W)×155(D)×65(H)mm●重量:600g●電源:DC9Vアダプター●価格:オープンプライス(市場実勢価格:46,631円前後)

    活用方法とプリセット音色の特徴

    Future Impactの基本操作はとてもシンプル。エフェクトをオンにし、入出力レベルを調整したらプログラムを切り替えて好みの音色を選ぶだけだ。とはいえ入力レベルによって異なる表情を見せるプリセットも多く、音色選びはかなり奥が深い。

     プログラムはバンク0に9個、バンク1~9に各10個の合計99個あるが、V3では01~67はベース向きのプリセット、68~76は空間系やフィルター系などの原音に対するエフェクト効果を重視したプリセット、77~85はギター、86~94はMIDI入力、95~99はEWIに適したシンセ系プリセットとなっている。このうち21~29(旧Future Impactでは01~09)はDeep Impact SB1の音色を再現するプリセットとなっており、当時の製造元であるAKAI ProfessionalでSB1の開発を担当した影井裕二氏が“バッキングとして使える音というコンセプトで入念に音作りした”という即戦力の音色が並ぶ。このほかのプリセットについても専用エディタ内の“Manager”に表示されるプリセット名が音色選びの参考になるだろう。気に入ったプリセットを見つけたら、本体のパラメータを操作してシンセ音の質感やアンサンブル内での存在感を微調整しよう。

    ▼ 次ページでは専用エディタの活用法のほか、プリセットのデモ音源を掲載! ▼