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ベーシストこそ! 揺れモノ/空間系エフェクターのススメ
- Photo:Chika Suzuki
コーラスやフェイザーといったモジュレーション系やリヴァーブなどの空間系と言ったカテゴリーのエフェクターは、歪みやコンプといったものに比べると、ベーシストには馴染みが薄いかもしれない。しかし、実は使い方次第で音ヌケやボトム感を向上させたり、より多彩な表現ができたりと、ベーシストにもぜひ試してみてほしい製品カテゴリーだ。
今回は指南役にD.A.N.の市川仁也を迎え、揺れモノ/空間系サウンドのクオリティに定評のあるstrymonの製品、blueSky V2とMOBIUSを題材に、その活用術を探っていきたい。
なお、発売中のベース・マガジン2022年11月号では、市川によるblueSky V2とMOBIUSの詳しいインプレッションも掲載中。そちらもぜひどうぞ!
リヴァーブ篇
blueSky V2
多彩・高音質な究極リヴァーブ
2022年夏にV2へと進化した超高音質リヴァーブ、blueSky(ブルースカイ)。リヴァーブ・タイプはプレート、ルーム、スプリングの3種を搭載し、なし/ライト/ディープの3段階をスイッチで切り替えるモジュレーションも備える。ツマミは、リヴァーブの減衰を調整するディケイ、エフェクト効果が始まるタイミングを決めるプリディレイ、原音とエフェクト音のバランスを決めるミックス、エフェクト音の低域・高域を減衰させるローとハイに加えて、シマー・エフェクトを加えるシマーを装備し、より多彩な表現を可能に。フットスイッチはオン/オフと、お気に入りセッティングを記憶するFAVのふたつ。ステレオでの入出力、トゥルー/バッファード・バイパス、出力信号のブースト/カット、音色切り替え時にエフェクト音が残るスピルオーバー・モードに対応し、フルMIDI機能など拡張性も高い。
Point1
シマーを独立してコントロール可能
2010年に登場した先代blueSkyで、世界で初めて搭載されたシマー機能。先代ではスイッチによるオン/オフのみだったが、V2では独立したコントロールになり、エフェクト量の調整が可能になった。プレートでは1オクターヴ上、ルームでは1オクターヴ上と5度上、スプリングでは1オクターヴ下の音が追加される。
Point2
モジュレーションを切り替え可能
ミニ・スイッチにより、深さの異なる2種類のモジュレーションを付加することができる。必要がないときには、オフにすることも可能だ。新たに設計されたスプリングを含む3つのリヴァーブ・タイプと組み合わせて、より表情豊かなリヴァーブ・サウンドを生む。
Sound Sample Played By 市川仁也
市川によるblueSky V2を使った試奏音源をチェック! それぞれの音源は、エフェクトなし→エフェクトありという構成になっている。
●デモ演奏1
●Setting
リヴァーブ・タイプ:プレート
MOD:ライト
ディケイ:1時
プリディレイ:0
ミックス:1時
ロー:10時
ハイ:1時
シマー:9時
Ichikawa’s Comment
プレート・タイプをほどよくかけて、サステインの伸びが良くなるような使い方です。デモのフレーズが低いルートと高いハーモニクスを同時に弾くというものなので、どっちの音も伸びてくれないとコード感がキレイにならないんですね。その、音が途切れないように伸ばしてくれるものとしてリヴァーブを使っています。コードの響きが、わりと叙情的というか、ちょっとしっとりとしたコード感なので、リヴァーブの涼しい感じを出したいなというところでプレート・リヴァーブにしました。
●デモ演奏2
●Setting
リヴァーブ・タイプ:ルーム
MOD:ディープ
ディケイ:11時
プリディレイ:8時
ミックス:12時
ロー:12時
ハイ:10時
シマー:0
Ichikawa’s Comment
ベースでリヴァーブをかけるときには、ロー・エンドが膨らみすぎるとゴチャっとするので、大抵はエフェクト音のロー成分はカット気味に設定することが多いと思います。ただ、このフレーズはちょっとダブっぽいというかイナたい感じで低音寄りで弾いていて、ダークな感じや下のほうで蠢くような質感を出したいなと思って、ローのつまみは12時くらいにしました。リヴァーブ・タイプはルーム。blueSky V2のルームは立ち上がり方にゲートっぽい感じがありますね。モジュレーションをディープにしていることもあり、独特の怪しい感じになりました。
●デモ演奏3
●Setting
リヴァーブ・タイプ:スプリング
MOD:ライト
ディケイ:12時
プリディレイ:0
ミックス:12時半
ロー:11時
ハイ:1時
シマー:9時
Ichikawa’s Comment
僕がスプリング・リヴァーブを使うときって、土臭かったりリズミカルなフレーズのとき。ゴーストノートにかけてリズムを立たせるとか、パーカッシブなときに使うことがけっこうあります。スプリング独特の“ピチャ”っていう音自体がパーカッションの音のように感じるので、デモ演奏のような歯切れの良いリフのときに使うと、よりリズムがおもしろく聴こえる。ショート・ディレイみたいな感覚で使っていますね。
シマーに関しては、このスプリングの設定のときにシマーを上げると、揺れる感じがすごく怪しくて、本当に独特な、いわゆるリヴァーブという感じともシマーという感じとも違うものになってすごくおもしろいなと思いました。ベース・ラインというわけじゃなくても、いろいろ制作でも使えそう。作曲をするうえでアイディアが降ってくるような使い方ができるなって感じでした。
●デモ演奏4
●Setting
リヴァーブ・タイプ:スプリング
MOD:ディープ
ディケイ:12時
プリディレイ:0
ミックス:2時
ロー:11時
ハイ:1時
シマー:9時
Ichikawa’s Comment
デモ演奏3からリヴァーブの成分を増やしてみました。フレーズのイメージとしては、クルアンビンとか、最近のアメリカの西海岸のファンクのイメージ。そういうものって、カラッと明るいファンクというよりは、ちょっとチルだったり漂うような気怠い感じですよね。もしこのフレーズを普通にエフェクトをかけないで弾くと、わりと元気に聴こえると思うんです。そこを、リヴァーブをかけて、モジュレーションもディープにして、ちょっと不思議な雰囲気を作ってみました。blueSky V2は、モジュレーションが“なし”も含めて3パターン選べるので、さらに音作りの幅が広がりましたね。
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