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    INTERVIEW – KOHEI[COLLAPSE]

    • Interview:Koji Kano

    甘めの轟音シューゲイズで呼応する、
    暴力性を備えた“美低音”の正体。

    暴力的なまでの轟音にウィスパー・ヴォイスを乗せ、儚くも甘いシューゲイザー・サウンドを作り出す4人組がCOLLAPSEだ。6月22日にリリースされた1stフル・アルバム『BLACK SHEEP IS STILL DREAMING』は、彼らが作り出す“空間”を心ゆくまで堪能できる中毒性の高い一枚で、その轟音は聴く者の懐に一瞬で入り込んでくる。アンサンブルの根底を担うベーシストのKOHEIは、こだわりに溢れた機材群を緻密に操り、バンド・サウンドに彩りと深さを付与している。COLLAPSEが目指すサウンド・スタイルのほか、KOHEIが今作で魅せたベース・プレイ、そして極太の低音を生み出す機材群について話を聞いた。

    ベースを抜けさせて
    音程がはっきり聴き取れるような意識を持っています。

    ――まずはCOLLAPSEについて教えてください。2013年にKOHEIさんを中心に結成されたとのことですが、どういった経緯でバンドができあがったのですか?

     前にやっていたバンドを辞めてから、リハビリ的にエッジ・オブ・サニティとかのデスメタル・バンドのコピー・バンドをやっていたんです。でも当時一番聴いていたのがシューゲイザーで、その独特なサウンド感に魅了されて、自分もシューゲイザーをやりたいなと。それで2013年にCOLLAPSEを立ち上げました。そこからメンバーが集まって、バンドが本格的にでき上がったのが2015年。もともとはデスメタル・バンドをメインに、サイド的な位置づけとしてシューゲイザーをやろうと思っていたんですけど、結果としてCOLLAPSEのほうが先にメンバーが集まって、走り出したって感じですね。

    ――“シューゲイザー”とひと言で言ってもサウンドは多様化していて、いわゆるドリーム・ポップやアンビエント要素の強いもの、ギター・ポップ的アプローチのものまで存在しますよね。COLLAPSEが目指すシューゲイザーのサウンドとは?

     僕はドリーム・ポップとかはあまり通っていなくて、当時めちゃくちゃ聴いていたのが、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、スロウダイヴ、スワーヴドライヴァーみたいなサウンドのバンド。あと、フリーティング・ジョイズやアストロブライト、リンゴ・デススターとかの2000年代のシーンも盛り上がっていたので、そういったサウンド感のバンドを目指していきました。

    左から、SATOSHI(g)、KOHEI、SHOKO(vo,g)、TSUBASA(d)。
    『BLACK SHEEP IS STILL DREAMING』
    Only Feedback Record/JCSS14-24

    ――今名前が挙がったバンドは、いわゆる王道のシューゲイザー・サウンドだと思いますが、そういった方向性の音楽がやりたかったと。

     そうですね。日本だとCOALTAR OF THE DEEPERSの存在もデカくて、ライヴもしょっちゅう観に行っていました。NARASAKI(COALTAR OF THE DEEPERS/vo,g)さんが掲載されたメディアの記事はスクラップに切り取って保管してあるんですけど、NARASAKIさんが当時、“ディーパーズの本質は実験性だ”と言っていて、なるほどなと。だから僕たちもそういう実験性は大事にしています。

    ――ちなみに、影響を受けたベーシストと目指しているプレイ・スタイルは?

     もともとすごく好きなのはフガジのジョー・ラリーですね。基本的に僕はピック弾きしかしないので、ピック弾きがうまい人からの影響は大きいです。なかでもJ(LUNA SEA)さんは特に大きくて、あのスタイルは参考にしました。それこそベース・マガジンのJさん特集号を見たとき、ピックがフェンダーのセル製のものに変わっていたのが衝撃で、試しに同じもので弾いてみたら、確かに音の“位置”が変わったんです。でもフェンダーのピックって1.0mmだけどすごく柔らかいから、スタジオで一日中弾いていたりすると割れちゃうことも多々あったので、グレコとギャリエン・クルーガーでお世話になっている神田商会さんにお願いして、違う硬い素材で1.0mmのピックを作ってもらいました。

    ――今回、満を持しての1stフル・アルバム『BLACK SHEEP IS STILL DREAMING』がリリースされたわけですが、今の率直な心境を教えてください。

     もともとコロナ前にリリース予定だったんですけど、Only Feedback Recordへの所属をきっかけに、また練り直して再構築していったんです。だからそういう背景も相まって、“やっと出せたなぁ”っていう安堵感が強いかな。2019年頃の段階ではもっと曲数も多くてダークな雰囲気だったんですけど、配信した曲との兼ね合いとか、“このタイミングじゃないんじゃない?”って曲はリストからハズしたりとか、そういう全体の調整もしていきました。

    ――KOHEIさんはバンドのメイン・コンポーザーでもあるわけですが、ベース・ラインはどのような考えで作っていくのでしょうか?

     曲自体、ギターから作る場合とベースから作る場合があるんですけど、ギターとユニゾンする場所、しない場所を狙ってベース・ラインを作っていきます。動くときは動くけど、全体としてはあまり動き過ぎないようにというか、前に出過ぎないようには意識していますね。

    ――シューゲイザーはどうしても轟音ギターが主役になりがちですよね。そのなかで、ベース・プレイ/サウンドに関して大切にしている考え方はありますか?

     コロナ前までは、全部の楽器が合わさって一個の塊になるような音作りを目指していたんですけど、最近だとベースとドラムはちゃんと前に出ないと何をやっているかわからないなと思い始めて。だからベースを抜けさせて音程がはっきり聴き取れるような意識を持っています。それに応じて僕のプレイ・スタイルもすごく変わったんですよ。今作でも最初に録った曲と最後に録った曲を聴き比べると、最後に録った曲がやたら抜けがいいんです。明らかに弾き方が違うので。

    ――具体的にはどのようにプレイ・スタイルを変えたのでしょうか?

     いわゆるピッキングを“逆アングル”に変えました。弦を横ではなくて縦に鳴らす意識。こうすることで飛躍的に音抜けが良くなったし、単純に出音の音量が上がったんじゃないですかね。

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