SPECIAL
UP
FEATURED BASSIST-休日課長[ゲスの極み乙女。]
- Interview:Zine Hagihara
- Photo:Issei Watanabe(Live)
何をやっても滲み出てしまう部分が
私のサウンドであり
私のスタイルなのではないかと
ゲスの極み乙女。は、プレグレッシブ・ロックやヒップホップなど、多彩な音楽的要素をふんだん取り入れた多面的な音楽性を持っている。そして、5月に発表した新作『ストリーミング、CD、レコード』は、リズムの観点で言えばヒップホップやトラップといった近年の音楽の要素を取り込むことによってさらに裾野が広がった作品だ。休日課長は自身のスタイルを確率することよりも、その楽曲に適したベース・プレイを目指すストイックな職人である。バンドの深化は、彼の手腕によるところも大きいだろう。彼のベーシストとしてのあり方が今作でどのように影響したのかを聞いた。
INTERVEIW
どんなプロジェクトにせよ
曲ごとで意識が変わって
違ったアプローチになっている。
——5月1日に配信が開始された(フィジカルは6月17日に発売される)新作アルバム『ストリーミング、CD、レコード』は、前作『好きなら問わない』から2年弱の間を空けての発表となりましたが、楽曲制作はずっと続いていたんですか?
はい。だから、だいぶ前に録ったものもありますね。今年の始めくらいにガツっとレコーディングした曲も多くて、「人生の針」「私以外も私」「綺麗になってシティーポップを歌おう」「哀愁感ゾンビ」「問いかけはいつもためらうためにある」「マルカ」がそうですね。
——作り上げた今の感想は?
今作も、今聴いている音楽から受けた刺激を取り入れることができたんじゃないかなと思っていて。最近のブラック・ミュージックもそうですし、いろんなバリエーションが含まれているので、音楽の幅が広がっていろんな人に刺さる作品になったんじゃないかなって思います。
——前作はホーン隊やストリングスが充実していましたし、今作は最新のブラック・ミュージック的ビートを取り入れたりしていて作品ごとにアップデートがありますが、そのなかでベースはどのよう変化しますか?
ちょっと話が逸れるかもしれませんが、今作のホーン隊、ストリングスも素晴らしかったですし、刺激も受けました。このアルバムを映画に例えるなら、大好きなシーンがたくさん。話し出すとキリがないくらい……本題のベースの話に戻りますと、アルバム単位というよりも、曲ごとにベースの立ち位置が変化していると言えるので、“今作は〜”ということはないかもしれません。それはDADARAYやichikoroといった他バンドでもそうですし、どんなプロジェクトにせよ、曲ごとで意識が変わって違ったアプローチになっている。というか、その考え方でいかないと難しいのかな。川谷(絵音/g,vo)のプロジェクトは“俺はこうなんだ!”という強い意思を持って挑むという感じではないのかなと思っています。自分で“自分はこういうスタイルだ”と決めつけずとも、何をやっても滲み出る部分が私のサウンドであり、私のスタイルなんでしょうね。
——LINEのトークBGMを川谷さんがプロデュースするドキュメンタリーがYouTubeにアップされています。ベースは課長さんが担当で、その場で生まれた川谷さんのアイディアに演奏陣が素早く対応するシーンが多々ありますね。
ゲスの極み乙女。での制作の雰囲気もあのドキュメンタリーでの様子と遠くはないですね。制作過程はその都度、微妙に異なってくるんですけど、その場の出来事に即座に反応できるようにしておくことが大事です。テクニック的なこともそうですし、いろんな音楽を聴いてインプットしておくというか。そういう日々のことが生きる現場ですね。シンプルに言えば、カッコいいのが出せるように日々吸収と試行錯誤。楽しみながら。
——川谷さんも最新の音楽に敏感ですもんね。
川谷は時代を問わずいろんな音楽を聴いているので、僕もたくさん聴くことで、彼との共通言語が増えるかなと。あとは、最近聴いているものをシェアしてもらうこともありますね。彼がInstagramのストーリーで紹介してる曲とかも聴いてますよ。とにかく、いろんな音楽を聴いてイメージを膨らませることが大事。個人的にいろいろ聴いていて今作に影響が出たなっていうのはMen I Trustのようなループ系のグルーヴで、音数は多くはないけど耳に残る感じが、ベース・フレーズに反映されているかもしれません。