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    【動画&誌面対応!】SPECIAL TALK SESSION IKUO×日向秀和[歪みベーシストという生き方]

    • Interview:Zine Hagihara
    • Photo:Yoshika Horita
    • Shoot & Edit:MINORxU
    • Sound Recording:Hozumi Suzuki

    単体でカッコいいものよりも、アンサンブルで機能するための歪み。
    ━━日向秀和

    ──日向さんの歪みベースのルーツは?

    日向 歪んでてめちゃくちゃカッコいいなって最初に思ったのは、ラリー・グラハムがファズを使ったときの音ですかね。フランジャーと組み合わせて“グオングオン!”っていわせてるのを聴いたときに、“こいつはファンキーだな”って思ったのは覚えています。その感覚は今でも残っていて。ファズと空間系の組み合わせはそのイメージでやっていますね。でも、最初に歪ませようと使ったのはサンズアンプでした。

    IKUO お、僕も最初の歪みはサンズアンプですよ。

    日向 ですよね。歪んだベース・サウンドの基本って感じがしたんです。それで、ずっと踏みっぱなしで歪んだ音を出してみようって思って。僕が23歳ぐらいのときで、当時サンズは流行っていましたし、それこそ中尾憲太郎くんが使っていたりとかしていて。20年くらい前になるんですかね。ドンシャリになる感じが、その当時はいい感じなんじゃないかなって。でも、今の僕はサンズアンプにドンシャリは求めてないんですけどね。そのときはピックでジャリジャリした感じの音になるのがたまらなかったんですよ。

    IKUO あんなにカッコいいのに、サンズアンプで弾いたあとに、スイッチをオフにして鳴らしたときの情けなさ(笑)。

    日向 “コーン!”って言っちゃってね!(笑)

    IKUO カッコ悪いんですよね(笑)。だから、サンズには麻薬的な魅力がありますよ。

    日向 サンズなしじゃあ生きられなくなる。ブレンド・ツマミがまたいいんですよね。

    IKUO 当時はあまりなかったですからね。ドライ音を混ぜるっていうことは本当にほかにはない魅力でした。仕組みもわからないまま使ってましたけど(笑)。僕はボスのコンプと組み合わせてサンズを使っていたんですよ。

    日向 めちゃくちゃいいですね。

    IKUO コンプで粒を揃えてサンズで歪ませることでサステインが伸びるイメージでした。でも、あるときからサンズで歪ませると“オイシイところが削られてるんじゃないか問題”みたいなこともにわかに話題になって。

    日向 そうそう。調整次第ではあるんだけども、アンサンブルからいねえんじゃねえかって。それでアンペグなんか使った日にゃ“実はいないんだぞ説”がある(笑)。

    IKUO 単体で聴くと良い歪みサウンドってアンサンブルで聴くと良くないことが多いですよね。サンズのおかげで“俺たちは単体でしかものを見れてなかったんだ”って気づいたりして。

    ──そもそも、おふたりは、なぜベースの音を歪ませるんですか?

    IKUO まあ端的に言うと“カッコいいから”ですかね。歪んだベースはロックだから。僕も髪を赤くするぐらいなんで、やっぱり基本はロックなんです。テクニックやほかの音楽ジャンルの要素は手段。いろんなジャンルのベーシストからテクニックや手法を学ぶんですけど、音を出すときはやっぱりガツンと歪んでいるほうがカッコいいと思っちゃいます。

    日向 僕もまったくそのとおりです!

    IKUO あとは、クリーン・トーンはロックだと馴染まないんですよ。ベースの音が浮いちゃうんです。

    日向 しかも、体感でのローが付いてこない。

    IKUO そうそう。だから、アンサンブルのなかでほかの楽器とつなぐための歪みでもあると思います。1980年代のヘヴィメタルを聴くとクリーン・トーンでやっているベーシストが多いですよね。それはたぶん、ライン音が流行り出したからだと思うんです。それまでは、普通はアンプをマイキングしていたと思うんですけど、その時点で若干歪んでいたわけで、そっちのほうがカッコよかった。

    日向 ライン音だから音が近いんですよね。LAメタルとか特に。

    IKUO それがカッコよくないんですよね。でも今はそこを超えて、ラインでも歪みがカッコよくなってきている。トラックに混じってもカッコいいサウンドであるっていう。

    日向 究極ですよね。歪ませ過ぎてもアンサンブルからいなくなっちゃうし、適度なバランス感覚が必要ですから。あと、クリアに聴かせるための歪みっていうのもあるんですよね。ベースの音を目立たせ過ぎずにナチュラルな感じでクリアに聴かせるっていう。今の音楽は音数も多いですし。

    IKUO そうそう。ループは多いしシンセも鳴っているなかで、ベースはどうやって歪んだカッコいい音を聴かせるかっていうのは難しいし、エンジニアさんも大変だと思います。

    日向 だから歪みの奥は深いんですよね。単体でカッコいいものよりも、アンサンブルのなかで自分の好きな音域をどう聴かせるか、ですよね。

    IKUO そう。しかも自分の好きな音色じゃないといけない。自分の好きな音、自分らしい音っていうのが伝わらないといけない。そこが難しいんです。

    日向 すごくわかります。

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     本記事は『ベース・マガジン 2020年11月号 Autumn』の表紙巻頭特集“歪みベーシストという生き方”と連動しています。巻頭特集では、IKUO×日向秀和に加えて、ウエノコウジ×中尾憲太郎、RxYxO(coldrain)×Hiroki(crossfaith)、345(凛として時雨)×藤本ひかり(赤い公園)の豪華対談のほか、歪みベーシストへのインタビューやアンケート、歪みに関するさまざまな知識、メーカー・イチオシの歪みペダルの紹介、世界の歪み名演の分析など、あらゆる角度から歪みベーシストという生き方をとことん追求します! ほかにも、フェンダーの最新シリーズ“アメリカン・プロフェッショナルⅡ”の特集など、盛りだくさんの内容ですので、ぜひチェックしてみてください!