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ARCHIVE INTERVIEW − ロス・マクドナルド[The 1975]
- Interview:Shutaro Tsujimoto
- Translation:Tommy Morley
- Live Photo:Sotaro Goto
プレシジョン・ベースが“The 1975の音”にもなっていると思うんだ。
━━あなたはデビュー以来プレシジョン・ベースを使っていますが、どんなところが気に入っていますか?
今までプレイしてきたすべてのベースのなかで最もクラシックなサウンドのベースだよね。ジャズ・ベースもプレイしたことはあるけど、ちょっとハイ寄りでアタック感が強めな気がするんだ。そもそもジャズベってロー・エンドがそこまで強く出る楽器じゃないのかもしれない。プレシジョンは温かみと丸みがあって、ロー・エンドが強めに出ながらも充分なアタック感が得られる。ある意味バランスの取れたベース・サウンドと言えるだろうし、これを超えるベースに遭遇したことがないんだ。今回のアルバムではヘフナーのベースを数曲で使っているけど、それはまったく異なるサウンドを狙ってのことだった。プレシジョンで基本的にすべてをカバーしていて、“The 1975の音”にもなっていると思うんだ。
━━へフナーのベースはヴァイオリン・シェイプのものですか?
そうだね。1974年製の500-1を「All I Need to Hear」と「Human Too」で使ったんだ。
━━「Human too」の後半は本当にグッド・フィーリングという感じのベース・プレイですよね。
これは最初のデモの段階ではマティー(マシュー・ヒーリーの愛称/vo,g)がベースをシンプルにプレイしていたんだ。スタジオでは全員でワンテイクで録音していて、ジャムっているような感覚があったね。今作の素晴らしいところは、ミスがあるとまでは言わないけどいくらかの不完全さがそのまま収まっていることなんだ。僕らは生で演奏することを好んでいて、この曲はジャムでインプロヴァイズするなかで、あの後半のプレイがたまたま出てきたんだ。
━━ちなみに、あなた以外でベース・ラインにこだわりがあるメンバーを挙げるとすると?
ジョージ(ダニエル/d)とマティーだね。彼らは自分でデモを作ってレコーディングの現場に持ってくるし、彼らがアイディアを形にするときに僕も付き合うことが多々あるんだ。彼らが求めるままに僕はプレイするし、彼らが好むものをプレイして曲をより美しくさせたいからね。それでいてスタジオでは僕がやりたいようにやらせてくれて、いろいろ試したなかで彼らがグッときたものを選んでいくんだ。
━━ところで、ライヴでは「The Sound」、「If You’re Too Shy」など、シンセ・ベースでレコーディングした曲をエレキ・ベースで弾くこともありますが、その際に意識していることや、キーとなる機材はありますか?
これらの曲に限ったことじゃないけど、僕は良いクリーン・トーンを求め続けているタイプのプレイヤーでね。ベースっぽくないサウンドを作ることにそこまで情熱を燃やしているわけでもなくて、MoogのMoogerfoogerみたいなペダルをたくさん試しているわけじゃないんだ。ボスのシンセ・ペダルも素晴らしいのでそういう用途には万能かもしれないけどね。実際良いクリーン・トーンに加え、ディストーションとコーラスがあれば、大体のことはカバーできてしまうよ。素晴らしいサブ・オクターヴを作り出してくれる機材も持っていて、これによってオクターヴ下の音程やロー・エンドをうまい具合に作り出している。これが良い具合にシンセっぽいフィーリングを作り出してくれているんだろうけど、常に大切にしているのはグッドなクリーン・シグナルを作り出すことなんだ。
━━現代のロック・バンドにおけるベーシストの役割については、どのように捉えていますか?
やっぱり曲を盛り立てるってことじゃないかな。その曲のアイディアがどんなところからきているのかに関わらず、ベースとして収まるべきスペースのなかでプレイすることだったり、ドラムと一緒にシンコペーションのようなものを大切にすることこそ僕がやるべきことなんだ。僕らの場合、ベースがコード進行を担う楽器となることもあって、例えば「I’m In Love With You」ではアコースティック・ギターはラインやメロディを中心にプレイしているから、コードの感覚はベースによってもたらされている。こういうアプローチは僕らの曲では頻繁に起こるから、曲の目的をしっかりと理解してプレイすることが大切なんだ。
──今作の「About You」はアンセムのようなヴァイブがありますが、最初から最終型を思い描いていたのでしょうか?
こういう僕ららしい形については、最初から描けていることが多いんだ。マティーが歌のアイディアとコード進行を持っていて、常にこういったスタジアムで響きそうなバラード・ソングとして大きく表現する形を思い描けている。こういう曲が段々増えてきていることはナイスなことだし、ほかの形のアレンジっていうのはむしろ思い描けなかったんだ。
──今作で、最もベースを録音するのが難しかった曲を挙げるとすると?
「Happiness」は作曲、プレイ、レコーディングを同時進行でやったようなところがあったからちょっと時間がかかったかな。でもそれ以外は苦労するようなことはなかったと思う。「Oh Caroline」はトレブリーなもの、分厚めのもの、そして親指に金属片をテープで固定してスラップみたいなアタック感をつけてプレイしたものの3テイクがあって、このレコーディングは楽しみながらやれたね。でも僕らの今までの楽曲のなかでのプレイの難易度でいうと、恐らく「If You’re Too Shy」が最も難しいものだったと思うね。
──The 1975のベーシストとして、大事にしているマインドをひと言で表わすとすると何になるでしょう?
“曲のなかでプレイする”こと。曲を然るべき形にさせること、ソリッドでクリーンなトーンでプレイすること、ジョージとしっかり組み合わさってポケットをしっかりと埋めるようなソリッドなプレイをすることだね。そして……ほかのメンバーたちがおもしろいプレイをできるように支えることかな(笑)。
──最後に、日本の文化やアートからインスピレーションを受けることはありますか?
いつもあるよ。日本っていつも魅力的で来たくなる国だよ。実際日本やその文化からインスパイアされて作った曲はあるし、ほかの国と比べて何かを感じることがたくさんある。マティーは因藤壽のアート作品を家に持っているし、僕は小島秀夫の大ファンなんだ。僕はゲームが好きで、彼は本当にアメイジングな人だよ。日本のファッションもシックでエレガントなところがあって、僕らはそこから確実にインスパイアされているよ。とても素晴らしい場所だよね。
◎Profile
ろす・まくどなるど●1989年生まれ、イギリス出身。12歳頃にベースを始め、チェシャー州の高校でThe 1975を結成、その後マンチェスターを拠点に活動し、2013年にDirty Hitよりリリースしたデビュー・アルバム『The 1975』がUKチャートで1位を記録。その後も傑作を立て続けに発表し、2010年代を代表するUK出身バンドとしての地位を確立する。SUMMER SONIC 2022ではヘッドライナーを務め、世界初の新曲も披露。2022年10月14日に5作目となる『外国語での言葉遊び』(原題:Being Funny In A Foreign Language)をリリースした。
◎Information
The 1975
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ロス・マクドナルド
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<公演情報>
『THE 1975 AT THEIR VERY BEST JAPAN 2023 』
東京 2023年 4月24日(月) 東京ガーデンシアター- SOLD OUT
神奈川 2023年 4月26日(水) ぴあアリーナMM – SOLD OUT
神奈川 2023年 4月27日(木) ぴあアリーナMM – SOLD OUT
愛知 2023 年 4 月 29 日(土) Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場) ホール A – SOLD OUT
大阪 2023年 4月30日(日) 大阪城ホール – SOLD OUT
詳細はこちらから。
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