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    INTERVIEW – 高松浩史[Petit Brabancon]

    • Interview:Koji Kano
    • Photo:Yuki Kawamoto

    曲を聴いたとき、何かこう、すごくドロドロしたものを感じたんです。

    左から、高松浩史(b)、yukihiro(d)、京(vo)、ミヤ(g)、antz(g)。

    ――歪みの質感としてはどういったものをイメージしたのですか?

     ブレンダーで2系統を混ぜることが最近のモード/気分なんですけど、クリーン側のミッドから下の帯域と、ディストーション側のミッドから上の帯域を足すイメージですね。アンサンブルで混ざるとしっかりクリーンの芯の部分が出てくるけど、ベースだけで聴くとちゃんと歪んで聴こえるバランスを大事にしています。

    ――ディストーション側のエフェクターにはどういったモデルを使いましたか?

     主にはダークグラスのMicrotubes B7K UltraとヴィンテージのProCoのRAT、あとPGS(Papa Goriot Studios)さんと一緒に開発させてもらったディストーションですね。録音した時期によってこれらを使い分けました。

    ――「刻」の歪みの質感はちょっと違っていて、上の帯域が強く鳴っているイメージです。同じエフェクターでも、曲ごとに歪みの質感をコントロールしているということですか?

     そうです。曲ごとに似合う歪みのキャラクターを選定していった感じですね。この曲の歪みはB7K Ultraで作っています。わかりやすく歪んだメタリックなベース音ってやっぱりカッコいいので、今作はけっこう歪ませたんですけど、次回はもっとクリーンなサウンドにも挑戦していきたいと思っています。

    「刻」Music Video

    ――こういった歪みだとギターとの兼ね合いも重要になってくると思いますが、音作りに関してメンバーと意見共有することもありましたか?

     基本的にギターの音とのバランスを加味してベースの歪みを考えました。むしろベース単体で考えることのほうが少ないかもしれませんね。作曲者の方に意見を聞きつつ、自分なりの色を入れていった感じです。

    ――ちなみに「come to a screaming halt」のベースはシンベですか?

     シンベの上に生ベースも重ねているんです。これはyukihiroさんの作曲なんですけど、デモの段階でシンベが入っていて、その音像とか雰囲気がすごくカッコいいなという印象でした。生のベースを重ねた理由としては、機械的な要素を省いた人間らしさを出しつつ、シンベ独特の音像を生かしたいなと思ったから。生ベースはうっすら歪んでいる程度で、ほぼクリーンなサウンドになっています。

    ――プレイとしてはシンベ/生ベースともに一定したショート・リフで全篇を弾ききっていて、今作ではある種、異端なアレンジに感じました。

     このフレーズはyukihiroさんからのデモのとおりに弾いています。ライヴだと同期でシンベを鳴らしつつ演奏することになりそうですね。シンベには生ベースみたいな骨っぽさ、硬い存在感はないので、そこをお互いに補っていければと思います。

    ――「主張に手を伸ばす修羅」、「Pull the trigger」のサビはグリスを用いた伸びやかなベース・ラインになっていますが、こういった楽曲ごとのメリハリも今作のポイントですよね。

     基本的にデモの時点ではルートだけ、もしくはギター・リフに合わせたフレーズが入っているくらいなので、大枠のフレーズは僕が考えて入れていきました。ギターが印象的なフレーズだったらユニゾンするとか、サビで開放感を出したいときはベース・ラインでアクセントを付けて動かしたりしましたね。グリスの感じはクセでもありつつ、グリスでグイグイ言わせているベースが単純に好きだっていうところもあると思います(笑)。

    ――ギター・バッキングとユニゾンする部分、ルートで支える部分の使い分けはどのように?

     そこって一気に曲の印象が変わっちゃう部分でもあるんですよね。正直、意識して分けようとは考えていないんですけど、ギターを前面で際立たせたいときだと、やっぱり忠実に支えようと意識はします。ただ、デモの段階でベースがユニゾンしている場合だと、作曲者の意図を汲みつつ、全体のアンサンブルを考慮してラインを構成していきます。

    ――シャウト/クリーン・ヴォーカルでも全体の質感や雰囲気が大きく変わりますが、ヴォーカル・パートに合わせて、高松さんのフレーズも展開を変えているように感じました。

     自分ではあまり意識していなかった部分ですけど、キレイな歌メロに対してはベースもちゃんと絡んでいきたいですし、シャウト・パートだとやっぱりパンチ力とかロー感を出していきたいとは思っているので、そういう部分が無意識的に出たのかもしれませんね。

    ――クリーン・ヴォーカルのパートでは、いかに歌メロや主旋律を際立たせるかと。

     例えば「OBEY」のサビだと、ヴォーカルのメロディに寄せようとか、意図している部分もあります。でも全体としてアンサンブルがごちゃごちゃして聴こえてしまうのはイヤなので、そこの見極めは考えています。

    ――こういったラウド系のベースってなかなか個性を出しづらいジャンルだと思うんです。ハイポジにも行きづらいですし。でも高松さんのプレイからは“主張できる部分はいくぞ”っていう意思も伝わってくるんですよね。

     ヘヴィな音楽って下の帯域があってこそですからね。もともと僕はそこまでこういう音楽を聴いてこなかったので、先入観がなかったのが良かったのかもしれません。

    ――「非人間、独白に在らず」のAメロでは、地を這うような極太のロー・ポジションでの動きが際立っています。こういった動きはこれまでの高松さんのプレイではなかなか見なかった部分ですよね。

     曲を聴いたとき、何かこう、すごくドロドロしたものを感じたんです。地を這うようなローの感じが曲に合うなと。あまりこういう曲で派手にベースを動かすのは考えられなかったので、低い部分で印象付けました。基本的にギターが展開しているフレーズ感をベースでなぞりつつ、低いところで存在感を出したつもりです。

    ――高松さんなりの“ドロドロ感”を表現したと。

     そうです。レコーディングではyukihiroさんにディレクションしていただいたんですけど、yukihiroさんのアイディアで、ただの白玉じゃなくてゴーストノートが入っていたりとか、そういう細かいところでリズムのアクセントを出しています。やっぱりさすがだなと思いましたね。

    ――一方「渇き」だと、メインのギター・リフとのユニゾン以外は中音域に寄った腰高なライン展開になっていますよね。

     音域が上がると開放感だったり、浮いたニュアンスを出すことができると思うので、場面ごとにそういう帯域は使い分けています。この曲は初期にレコーディングした曲でもあるので、そういうアレンジの時期的な部分でも違いがあるかもしれませんね。

    「渇き」Music Video

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