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    INTERVIEW – マーティ・ホロベック

    • Interview:Mitsutaka Nagira
    • Photo:ほしのやすはる

    「僕の前のベーシストがポール・ベンダーだった。ハイエイタス・カイヨーテが忙しくなってから、僕が彼の代わりに入ったんだ。」

    ━━あと、マーティはオーストラリアのミュージシャンとも仲良いですよね。

     僕が参加していたオーストラリアにいた頃のバンドは、セックス・オン・トースト(Sex On Toast)。めっちゃ良いシングルを出していて本当に最高のバンド! 僕はあのバンドにけっこう長くいたんだけど、僕の前のベーシストがポール・ベンダーだった。ハイエイタス・カイヨーテが忙しくなってから、僕が彼の代わりに入ったんだ。

    ━━メルボルンのバンド・シーンはどんな感じだったんですか?

     日本と似てるかもしれない。僕はメルボルンでも”どジャズ”もやりながら、ポップスとかいろんなセッションもやっていて、フリーやインプロヴィゼーションもやっていたから。メルボルンには、いろんなシーンがあるんだよね。今の日本での状況と似てるけど、僕がエレキ・ベースのときもあるし、ウッドを弾くときもあった。いろんな人と一緒にやれてすごい良かったよ。

    ━━ジャズの仕事もポップスもやっているってことは、東京で今やっていることとと変わらないですね

     そんなに変わらなかったかな。僕は音楽が好きだからいろいろやりたいし、やりたくない音楽はあんまりないかな(笑)。すべてにいろんなチャレンジがあるから。

    ━━ハイエイタス・カイヨーテのメンバーともよく一緒にやっていたんですよね?

     そう! もともとハイエイタスとセックス・オン・トーストはよく対バンをやっていたから。懐かしいね。本当にオーストラリアの音楽、メルボルンの音楽は最高だから、日本にも伝えたい。

    ━━Sunny Side Up』(2019年)ってコンピレーションアルバムがあるんですよ。オーストラリアのシーンを紹介したアルバムなんですけど。

     (参加アーティストのリストを見ながら)ワオ、知ってる人がたくさんいる(笑)。Dufresneは僕の同級生。Laneousはヘンなイベントをやっているんだよね(笑)。

    ━━じゃあ、この人たちはマーティがよく一緒にやってた人たちなんですね。

     そう! オードリー・パウン(Audrey Powne)は僕のマブダチ。僕がメルボルンに引っ越す前、18才の頃に初めて会ったんだ。新しいアルバム『From the Fire』もめっちゃ良いよ。Dufresneは学校で同級生で、最高のトロンボーン奏者。中学生からずーっと毎日一緒にやってて、そのあと彼も僕もメルボルンに引っ越したんだ。ジギー・ツァイトガイス(Ziggy Zeitgeist)も一緒にやってた。彼もヘンな人! ハイエイタス・カイヨーテのペリン・モスもそういう感じだけど、ドラマーが叩くドラムって感じじゃないんだ。ベーシストの立場から聴いても、彼のグルーヴを作る考え方はすごくおもしろい。駿と似てるね。ドラムだけじゃなくて“音楽のなかでどうするか”とか、音楽の全部のことを考えている人。

    ━━メルボルンと東京のシーンには似た雰囲気があるんですね。

     うん。めっちゃ近い! あと、オーストラリア人と日本人はちょっと似てると思う。例えばオーストラリアでもライヴのあとで、“僕はまだまだだな……ちょっと練習したいな”って思う人がいるんだけど、そういうところは少し日本っぽい(笑)。

    ━━今年6月の『JAZZ NOT ONLY JAZZ』では、上原ひろみのめちゃくちゃ難しい曲を演奏していましたが、どうでした?

     おもしろかった! ひろみさんは若い頃からすごい好きだったんだけど、映画『BLUE GIANT』(2023年)で初めて一緒にやったんだ。ひろみさんは凄いよ! 何でも聴こえるタイプ。彼女は自分の好きな音楽を自分で表現できる人だから、一緒に仕事ができることはすごく楽しかった。ひろみさんってあまり日本のバンドと一緒にやらないみたいなんだよね。

    ━━そうなんです。だから、あの夜は日本のミュージシャンと一緒にやったすごく貴重な機会だったんですよ。

     今の話はすごい嬉しい。僕も日本のミュージシャンになった(笑)。ひろみさんの曲はめっちゃ聴いてたから“本当に一緒にやれるの?”って(笑)。ひろみさんが駿に“私のどの曲をやる?”って聞いて、駿が“マーティ、どれが良いかな? やりたい曲が3つある”って相談された。そこに「XYZ」と「Return of Kung-Fu World Champion」があったから、“よしOK! これをやろう!”って。僕も変拍子とか速い音楽は得意だけど、あの曲は特別だった。

     ひろみさんとの最初のリハーサルはめっちゃストイックで、“マーティ、ちゃんとして!”、“はい、わかりました!”って感じだったよ(笑)。僕と駿も久しぶりな感覚だった。「XYZ」のなかではベース・ブレイクがあるからすごく難しかった。9/8のリズム。駿もリハーサルでちょっと間違えて、“うわぁ、どうするどうする!”ってパニックだった。でも、ひろみさんは何でもできてすごかったね。変拍子を左手でキープしながら、上でも違うものを弾いているんだから。あれ以降、マーティと駿はめっちゃレベルアップしたと思う(笑)。

    ━━上原ひろみのブルーノート東京でのライブのときに、彼女の今のバンドのベーシストのアドリアン・フェローとも会っていましたが、ベーシストとして彼の影響もありますか?

     10年前からずっと聴いている、特別なベーシストだね。あの日に初めて会えたんだ。それから、最近会った人だとカート・ローゼンウィンケル(g)。カートはなんか先生みたいな感じだった(笑)。僕のヒーローで、ジャズを始めた頃からずーっと聴いてた。若い頃、僕のお父さんの車に乗ってるときによく聴いたし、大学でもカートの曲をやったし、めっちゃ勉強したよ。だから一緒にやるのは本当に感動した。自分が書いた曲のなかでカートが弾くことなんてまさか起きないと思っていたから、本当に感動したし、iPhoneでライヴの音源を録音しちゃった(笑)。最高すぎて、本当にやばかったね。

    ━━ところで、最近導入した機材はありますか?

     最近はLine 6のHX Stompの世界に行ったよ。

    ━━今までエフェクターはコンパクト・エフェクターを足下に置いてましたよね。

     そう。そのなかにHX Stompも入れたんだ。あと、King Gnuの新井和輝のシグネイチャー・ベース(フェンダー製Jazz Bass V Kazuki Arai Edition)も買ったよ。それは去年の日野皓正さんのツアーのために買った。J-POPとかもできる5弦のベースで、フェンダー系のものがほしくてお店でたくさん試してみたけど、やっぱりカズキの5弦が正解!  さすが新井さんだね。あと、レコーディングのためにDemeterのDI(VTDB-2B )も買ったよ。

    ━━ちなみに『Trio II: 2』のウッド・ベースのレコーディングは、どのように録りましたか?

     それはマイクだけ。僕はいつもそんな感じだよ。あんまりDIの音は好きじゃなかったからね。でもDIで何ができるかを今考えてるところ。マイクと両方使ってね。ウッド・ベースだと、藤原さくらちゃんのレコーディングもマイクだけだったよ。新しいアルバム『wood mood』は最高! 駿がプロデュースしていて、さくらちゃんとの組み合わせがめっちゃ良いよね。

    関連記事:ベース・マガジン2023年2月号ではマーティ・ホロベックの使用機材も紹介!

    ◎Profile
    マーティ・ホロベック ● 1990年9月3日生まれ、オーストラリア出身で現在は東京在住の音楽家。自身のTrioシリーズをはじめ、SMTKやHishakaku Quartetの共同リーダーを務めるなど、複数のプロジェクトを率引している。サイドマンとして、日野皓正、石橋英子、ジム・オルーク、Answer to Remember、ROTH BART BARON、ermhoi、崎山蒼志、藤原さくら、HIMIなどのアーティストと共演する。2019年から2021年までNHK『ムジカ・ピッコリーノ』にレギュラー・メンバーとして出演。2024年7月31日にリリースした『Trio II: 2』のほか、これまでに4枚のリーダー・アルバムを発表している。

    ◎Information
    マーティ・ホロベック Official HP X Instagram