PLAYER
UP
SPECIAL TALK SESSION – かわいしのぶ × 柴田聡子[柴田聡子inFIRE]
- Interview:Shutaro Tsujimoto
- Photo:Takashi Yashima
鋭利な言語感覚で注目を集めてきたシンガー・ソングライターの柴田聡子がニュー・アルバム『ぼちぼち銀河』を完成させた。同作でベーシストを務めるのは、1991年にSuper Junky Monkeyのメンバーとして活動を開始し、現在は“柴田聡子inFIRE”のほか、大友良英スペシャルビッグバンドなどでも活躍する、かわいしのぶ。前々作の『愛の休日』(2016年)のレコーディングへの参加に始まり、“inFIRE”としての近年のライヴ活動、そして前作『がんばれ!メロディー』(2019年)では全篇でベースをプレイするなど、彼女は現在の柴田聡子の活動を語るうえで欠かせない存在だ。ここでは『ぼちぼち銀河』をリリースしたばかりの“柴田聡子inFIRE”の現在地に迫るべく、かわいしのぶと柴田聡子の対談をお届けする。“ソロ・アーティストとそのバック・バンド”というただの関係性では到達できないような濃密なアンサンブルはいかにして生み出されるのか。そして、30年以上のキャリアを持つかわいしのぶが“考えることが多かった”と語った今作のベース・プレイとは。まずは年齢にして15も離れたふたりがなぜ活動をともにするようになったのか、その経緯から聞いてみた。
「後悔」のリフもその場で作ったんですよ。
━━かわいしのぶ
――新作についての話の前に、まずおふたりの出会いから聞いてもいいですか?
柴田 何年前かはっきりわからないんですけど、多分7、8年前ですよね?
かわい いろいろなライヴの企画をしている“やんてらさん”という方が、入谷のなってるハウスというお店で私たちのデュオ編成でのライヴを組んでくれたんです。
柴田 なんか急に引き合わせてくれたんですよ。“やりませんか?“、“やります!”って感じで(笑)。
かわい 初対面で事前にスタジオにも入って、松田聖子ちゃんの曲と、バタヤン(柴田聡子)の曲をやったんだよね。あ、柴田さんって呼んだほうがいいかな?
柴田 いや、バタヤンで全然大丈夫です!
かわい いっか!(笑) そう、それが最初の出会いでした。「サン・キュー」っていう曲をやったのを覚えてる。“さけがのみたきゃはかばへいけよ”っていう曲で……(笑)。
柴田 あ、やりましたね(笑)。
――7、8年前というと、柴田さんのアルバムの時期的には……?
柴田 2ndの『いじわる全集』が出たあとくらいだったと思います。
かわい うん、あのときCDをもらったもんね。
――初めて一緒に演奏したときのお互いの印象について覚えていますか?
柴田 その頃は、自分の音楽のなかでベースがどういう役割を担ってくれているのかをあまりわかっていなかったので、多分しのぶさんに対しても最初はぼんやりとした“あぁ、すごい。憧れ……”みたいな気持ちだったと思います。当時はあまり人と演奏した経験もなかったし、“何も喋れない人”みたいな感じだったと思うので(笑)。でも、しのぶさんはそこを読み解いて、めちゃくちゃ支えてくれている感じがしました。
かわい 本当に? でも私もすごくラクだったなって思っています。バタヤンの音楽は、これは今でも同じなんですけど、やっぱり弾き語りの時点で曲が成り立っているので。
――そこからレコーディングやライヴを一緒にやるようになるのは、いつ頃からですか?
柴田 しのぶさんに最初にお願いしたのは、そこから少し時は流れて4枚目の『愛の休日』のレコーディングじゃないかな? 「後悔」と「あなたはあなた」のベースをお願いしました。あれ、あともう1曲あったな。
かわい えーっと……。あ、「天使を見てる」だ。
柴田 そうそう! 「天使を見てる」はデュオだったんですよね。この曲で初めて録音をお願いして。
かわい 「後悔」と「あなたはあなた」は当日メンバーが初めて顔合わせをして、午前中にアレンジを考えて、午後には録音みたいな感じだったよね。
柴田 今考えると、すごいスケジュールでお願いしちゃったな。
かわい でも楽しかったよね。「後悔」のリフもその場で作ったんですよ。
――あの名フレーズを! 驚きです。そのあと、かわいさんが柴田さんのバンド・セット名義である“柴田聡子inFIRE”に参加するようになるんですね。
柴田 『愛の休日』のあと、1年くらいは “どついたるねん”のリズム・セクションの、DaBass(b)と浜(公氣/d)くんに入ってもらってたんですけど、ふたりも忙しくなって抜けなきゃいけなくなって。そのタイミングでしのぶさんとドラムのイトケンさんにお願いするようになって、その体制で前作の『がんばれ!メロディー』の制作に入っていった感じでした。
かわい 岡田(拓郎/g)くんが一歩先に入ってたのかな?
柴田 そうです。岡田さんは『愛の休日』のレコ発後くらいに入ってもらって。ラミ子(cho)もそのときからいましたね。
かわい ラミ子ちゃんが一番長いんだよね。
――『がんばれ!メロディー』も、『愛の休日』くらいタイトなスケジュールで制作されたんですか?
柴田 プリプロの時間はいちおう設けてはいたんですけど、スピード感的にはかなり速かったです。1日で数曲プリプロしてすぐ録って、みたいなことを3回くらい繰り返して完成させた感じで。バンド・アンサンブルで、みんなで“あぁだこうだ”言いながら、かなり自然な流れで作れたアルバムだったと思います。
かわい 曲がパーンと入ってくるのでイメージが返しやすかったですね。メンバーそれぞれが思い浮かべたイメージを合わせると、“なんかできた!”ってなるみたいな。
▼ 続きは次ページへ ▼