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FEATURED BASSIST – 廣瀬“HEESEY”洋一

  • Interview:Koji Kano
  • Photo:Taichi Nishimaki

ブレない“イエローモンキー印のベースを弾く”
というのが僕の使命だと思っている。

━━2013年以降はソロ名義での活動を開始しますが、各作品を聴き返していくと、ロックンローラーとしてのブレない姿勢を感じつつ、最新作『33』(2022年)収録の「雨音のララバイ」といったジャジィなテイストの楽曲があったりと、新しい方向性もうかがえます。

 どこか自分には、“どうせブレないだろうな”って自信があるんですよ(笑)。そのなかで、自分のなかにあるいろいろな音楽性を昇華させた“なんちゃってジャズ”というか、自分が思うジャズ感を表現したいと思っていて。だってジャズっぽいことに挑戦してみても“完全なジャズ”にはならないですから。そういう意味でも「雨音のララバイ」はターニング・ポイントになった曲。レコーディングは一発録りでカルテット編成で録音して、録り音以外には何も音を重ねていないんです。ベース・ラインは4ビートのウォーキングなんだけど、長尺のベース・ソロを入れてみたりもしています。あの長さのベース・ソロって今まで弾いたことはなかったし、それをジャズ・テイストの曲でやるっていうのがまたおもしろかったですね。ジャズの世界ではベースがソロを弾くことも多いし、編成的にも欠かせないじゃないですか? だから“ベースがソロを弾く楽しさ”っていうのを体感できるいいきっかけになったし、そういう曲がこのタイミングでできたっていうのが自分でも驚きなんですよ。

━━機材の話で言うと、代名詞のサンダーバードのほか、ジャズ・ベース、プレシジョン・ベースと、多くのヴィンテージ楽器を愛用してきたと思いますが、特にソロ名義になってからはヴィンテージ楽器のみを使用していますよね?

 そう。ヴィンテージ楽器との出会いというか、ヴィンテージにハマったことも僕のベーシスト人生における重要な項目。現にソロ活動をやってセルフ・プロデューサー的な観点に立ったとき、“ヴィンテージ・ベースにはどういうギターが合うのかな?”っていう、ほかの楽器のセレクトもヴィンテージ・ベースを中心に考えるようになりましたから。もともとヴィンテージ楽器には興味があったんだけど、若い頃はホイホイ買う余裕もなかった。90年代に1976年製のサンダーバードを手に入れたことが始まりで、2000年代からはジャズベやプレベも含めて60年の楽器を入手して使うことが増えていきました。今では僕のサウンドの欠かせないパーツのひとつになっています。

━━HEESEYさんと言えば、“映えるステージング”というエンターテイナー性も重要な部分だと思います。そういった“魅せ方”は自身の活動の軸としてどのように考えていますか?

 これは絶対的な部分ですね。やっぱりライヴだと、視覚/ヴィジュアル的な要素も大事だと思うんですよ。ただ、見た目がカッコよくてもフレーズがダサかったらダメだし、その逆に、カッコいいフレーズを弾いているのにカッコ悪い佇まいでもダメだと思うんです。弾いている姿がカッコよければ、フレーズのカッコよさも倍増すると思っています。

━━ステージ上でフレーズをどう魅せるか、ということですね。

 だから音源で超絶プレイを披露している人も、“ライヴだとどうなるんだろう?”って思うんですよ。蓋を開けたらステージでは小さくなって一生懸命に弾いていたらカッコ悪いじゃないですか。“楽勝だよこんなの、俺の出番だよ”ってぐらいで弾いているほうがカッコいいし、だからこそ視覚的な要素が大事だと思うんです。特に今の時代はYouTubeとかが主流だし、視覚で判断されることも多くなったから、絶対そこはこだわる部分だし、欠かせない要素ですね。

━━最後に、還暦を迎えた今、今後チャレンジしたいと思うことはありますか?

 まずソロ活動ではベース・ヴォーカルをやっているわけですけど、ベースを弾きながら歌を歌う際、ルートだけ弾いていれば正直楽ですよね。でも僕のスタイルはそれだけじゃない。ウネウネとラインが動いて、歌メロとかけ離れたベース・ラインを弾きながら歌うことを自分のライフワークにしたいんです。だからこれは今後も追求していきたいし、より楽曲が映えるようなベース・ラインをもっと追い求めていきたいと考えています。そしてイエローモンキーが今後新作を作るときには、ブレない“イエローモンキー印のベースを弾く”というのが僕の使命だと思っていて、そこにもどこかチャレンジしていく気持ちを持ち続けたいと思います。もっと斬新なことにも挑戦していきたいし、それがイエローモンキーにとっての伸び代になるかもしれない。だから“イエローモンキーのこういうところが好きなんでしょ?”っていう守りに入らないほうがいいと自分では思っています。正直、ソロもバンドもまだ“やり切った!”とは思ってないんですよね。仮にやり切ったとしても、きっとまた次を目指して進んでいくんでしょうね。

◎Profile
ひろせ“ひーせ”よういち●1963年4月19日生まれ、東京都出身。中学時代にベースを始め、1980年代にヘヴィメタル・バンドMURBAS、16LEGSで活動する。解散後の1988年にTHE YELLOW MONKEYを結成し、1992年にシングル『Romantist Taste』でメジャー・デビュー。以降、ロック・シーンの中核として圧倒的人気を獲得するも2004年7月に解散。その後はソロ・プロジェクトのHEESEY WITH DUDESのほかTYOで活動。2013年には“HEESEY”名義でソロ活動を開始し、2022年の『33』までに4枚のアルバムを発表している。THE YELLOW MONKEY は2016年に再集結を果たし、2019年に9thアルバム『9999』を発表した。

◎Information
Official HP

【お知らせ】
現在発売中のベース・マガジン5月号【SPRING】でも、廣瀬“HEESEY”洋一のインタビューを8ページで掲載中。愛器である貴重なヴィンテージ・ベース7本の解説のほか奏法分析など、BM Webとは別内容でお送りしています!

また同号では、30年以上にわたるキャリアで初めて自身名義のカバー・アルバムをリリースしたAA=の上田剛士さんと、現体制となって20周年の節目を迎え、約5年ぶりのオリジナル・アルバムを発表した凛として時雨の345さんを表紙に迎えた特別対談を掲載! それぞれの新作についての個別インタビューも実施し、ふたりの“最新モード”についても迫っています。

また、エレキ・ベースにおけるメインテナンスの重要性と改造=カスタマイズの魅力を総力特集した“保存版! 最強のメンテ&改造メソッド”を58ページで掲載しているほか、奏法特集の“弾き倒しエクササイズ33本勝負”など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!