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サウナに入ってるときに、ふと思いつきました(笑)。
━━先ほどから話に出ているように、今作の制作では、例えば“基本は一発録り”など、いくつかのルールや制約を設けたそうですね。
“クリックを使わない”とか、“ソフト音源はNGで、全部実機を使う”とか、いくつかありますね。そういうコンセプトは、サウナに入ってるときに、ふと思いつきました(笑)。俺はもちろんシンガー・ソングライティングをする部分がコアではあるんですけど、プロデュースってほどじゃないけど、企画とかお題とかテーマを考えるのが好きな部分も自分のなかで共存してるんです。ふたつ脳みそがある感じというか。だから制作上の縛りとか制約を設けるっていうアイディアはけっこう早い段階からありましたね。
━━制限を設けることは、実際にどんな結果につながりましたか?
例えば、クリックを使わなかったことによって、単純にみんな楽器がめっちゃうまくなりましたし、アレンジで引き算ができるようになったことがよかったです。普通にDTMでクリックがある状態で作り込んでいたら、“ここ、音足りないよね?”ってシンセを足してしまうようなところを、単純にリット(リタルダント)したり、少し間を開けることで、音を追加しなくてもカッコよくできるようになりました。あと前作は俺がデモを作り込んでレイヤー的に音を重ねていたような曲も多かったんですけど、今回は音をめちゃくちゃ減らそうっていう意識もあって。そうだ、“デモを作らない”っていうのも今回自分に課してた制約だった。もうここ1年くらいMacのLogic Proを真面目に触ってないと思います(笑)。
━━音を減らすのって、相当意識的にやらないと難しいですよね。
“音を減らしたい”っていう意識はもちろんあったんですけど、結果的には少ない音で事足りたからそうなったって感じです。それと、ここでもプリプロの段階からエンジニアがついてくれたことが大きかったと思っていて。自分たちでプリプロをやると、録った音がショボいから、足りない気がして音を増やしがちになっちゃうんですけど、今回はプリプロから全部がいい音で録れたので、そういう発想にならなかったんです。素材の音が太いと、“これで成立してる”って思えるんですよね。本当、これは新しい体験だった気がしてます。「D・T・F」のAメロとか、今までのBREIMENにはないくらい音が薄いアレンジになってると思いますよ。
━━エフェクター・ボードに入っている機材についても教えてもらえますか?
SUBDECAYのProteus MkⅡ(エンヴェロープ・フィルター)は、新井和輝(King Gnu)にオススメされたもので、なんか音がちょうどいいんですよね。今回「MUSICA」の録音でも使っています。SOURCE AUDIOのSPECTRUM(エンヴェロープ・フィルター)は、TENDREから借りてるものなんですけど、これは前作の表題曲の「Play time isn’t over」とか今回の「ドキュメンタリ」で使っていて、フィルターだけどエフェクティヴで、ちょっとシンセっぽくてポコポコしてる感じの音が気に入ってます。それと、TRIALのParallel 3(オーバードライブ)っていうのが一番最近導入したやつで、ライヴでもプレベを使うときによく踏んでます。プリアンプというか、ナチュラル・ドライブみたいな感じですかね。オーバードライブのレベルとゲインはほんのちょっとだけ上げて、ディストーションのツマミはゼロにしてるんですけど、ちょっとしたコンプ感というか、音がまとまる感じがあります。俺基本的にコンプは入れない派なんですけど、プレべとかヴィンテージのパッシヴのものってちょっと暴れる感じがあるので、その代わりにこれを使ってます。あと、若干歪ませることで、PAに送る段階で抜けと質感がいい感じになりますね。今作のレコーディングでも、原音系の曲では大体これでうっすら歪ませて使ってたんじゃないかな。
━━ブレンダー(XOTIC製X-Blender)も組み込まれていますが、これは何に使ってるんですか?
ライヴでSUBDECAYを使うときに、フィルターって実際のヴォリュームが変わってなくても、会場の大きさによって聴こえ方がめちゃくちゃ変わっちゃうので、それを調整するために入れてます。あとは遊びで入れる感じでけっこう使うのが、デジタル・ディレイ(ボス製DD-200)とワーミー(デジテック製BASS WHAMMY)ですかね。
━━今作を経て、ベーシストとしての今後の展望としては何を思い描いているか、教えてもらえますか?
レコーディングでは、ほぼベースとヴォーカルを同時にはやってないので、今回の曲をベース・ヴォーカルとしてできるようになったら、うまくなるような気がしてます。今、自分のなかではベースとヴォーカルが分離していて、ベースはベースでやってる感じなんです。ヴォーカルは最近やっと歌が自分のものになってきた感じがしてるんですけど、ベースとヴォーカルをひとつのものにしたい。ミシェル・ンデゲオチェロとかエスペランサとか、スティングとかは異次元系ですけど、指弾きであれだけ弾けて、しかも歌えるっていう人って今あんまりいない気がしていて。そういう風になれたらかっけえなって思ってます。でもマジでムズいです。本当に。
━━ベースを弾きながら歌うために、何か特別な練習をしていたりしますか?
エスペランサとか、彼女たちは特殊な練習してる気がするんですよね。歌とベースのタイム感が乖離してるというか、ちょっとおかしい(笑)。俺の場合は、やっぱり曲でやるのが一番早い気がしてます。本当は、ベースともう1、2旋律くらいでできているバッハの曲があって、それを歌いながら弾く練習をしたらいんだろうなって思ってるんですけど、難しすぎてちょっと全然手が出せてないっていう……。でも曲で練習するのもいいですよ。例えば1stアルバムの「PINK」は、レコーディングのときにまったく歌のこと考えずにバキバキにスラップしていて、最初ライヴでやるときに絶望したんですけど、今は意外と弾けるようになっていたりするので。制作では自分に無理難題を課しておいて、アルバムのツアーが始まったときに、絶望しながら練習していくと結構うまくなるっていうシステムですかね(笑)。
【お知らせ】
発売中のベース・マガジン2022年8月号にも高木のインタビューを掲載! Bass Magazine webとは違った内容でお届けします。また8月号には高木が作詞作曲を務めた「MELODY (prod.by BREIMEN)」岡野昭仁×井口理のベース・スコアも収録! 同曲についてのインタビューもお見逃しなく!
同号では、待望のニュー・アルバム『Unlimited Love』をリリースしたレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー特集のほか、ジャパニーズ・ヘヴィ・ベースの真髄、最新モデルで紐解くファンド・フレットの魅力、やっぱり気になるプロの使用弦、伊藤広規Presents 山下達郎ベースの極意など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!
◎Profile
たかぎ・しょうた●1995年生まれ、神奈川県出身。高校生の頃にベースを始め、亀田誠治主催のコンテスト “亀田杯”では、ベースを始めて1年にして最年少の17歳でファイナリストに名を連ねる。その後、ブラック・ミュージックに傾倒し、ベーシストの後藤克臣に師事。2015年には6人組バンド、無礼メンを結成する。2018年に現編成となり、高木はベース・ヴォーカルを担当。バンド名をBREIMENに改める。2022年7月20日に3rdアルバム『FICTION』をリリース。高木はTempalay、TENDREのサポートなど、スタジオ・プレイヤーとしても活動している。
◎Information
BREIMEN
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高木祥太
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