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INTERVIEW – 磯部寛之 [[Alexandros]]

  • Interview:Koji Kano
  • Photo:Yoshika Horita

新境地で鳴らす、牽引者としての誇り

[Alexandros]の新章が開幕だ。昨年4月にリアド偉武(d)が正式加入し、盤石の体制となった彼らが、約4年ぶりとなる8thアルバム『But wait. Cats?』を発表した。そのサウンドを一聴すれば、彼らの4年間の成果と進化、そしてシーンの牽引者としての覚悟を芯から感じ取ることができる。リアドとともに鉄壁のグルーヴを成すベーシスト・磯部寛之は、今作でのプレイを振り返り、“新しい扉を開いた”とも語り、これまでになかった斬新なベース・アプローチを随所で展開している。ここでは7月19日発売の本誌2022年8月号の『Featured Bassist』にも登場している磯部の、本誌とは別内容のインタビューをお届けしよう。本誌とともに楽しんでほしい。

あえてメッセージとするなら、
“肩肘張らずに気軽に聴いてくれよ”ってことですかね。

――昨年4月にリアド(偉武/d)さんが正式加入して以降、リズム体としてのグルーヴも高まってきているかと思います。リズムに関しておふたりで話をすることもありますか?

 俺が出したいノリとかフレーズに対して、キックやスネアを置く位置、抜いてほしい部分とかは共有し合っています。でもリズムに関してはバンド全体としてもいろいろなアイディアが出てくるので、それぞれみんながリアドとよく話をしていますよ。ヴォーカルとドラムもすごく密接な関係ですしね。例えばヴォーカルと同じリズムのフレーズを叩くような曲もありますけど、そういうときはドラムが“歌う”って感覚を俺らは大事にしていて。(川上)洋平(vo,g)はそういうプレイが好きでもあるので、ふたりで黙々とビートを作り込むことも多いですね。

――なるほど。そういった面も含め、リアドさんのドラムは[Alexandros]の新しい歴史を刻むきっかけになっているように感じます。

 間違いなくそうですね。もともと彼のドラムは音もデカくて抜けてくるし、すごく重厚感・安定感があるので、うしろで叩いてくれていることに心強さを感じています。多分リアド自身も[Alexandros]に入ったことで、“自分ってこんな引き出しがあったんだ”って発見もあったんじゃないかな。このバンドは奇を衒ったリズムだったりとか、求められるリズムがけっこう独特なんです。だから“リズムってこういうものだよね”って従来思っていた部分が取っ払われる瞬間もあるし、そういう新しいリズムをこれからふたりで作っていきたいと思っています。

――今作『But wait. Cats?』は前作から4年という、バンド史上最長のインターバルを挟んだわけですが、この長さになったのはやはりコロナの影響もあるのでしょうか?

 コロナの影響で制作ができなかった期間もありましたからね。加えてライヴもできなかったし。でも4年の間にベスト・アルバムとか新曲も出したりしていたので、そのなかでもできる限りで制作は続けていました。だから結果的にアルバムを出すタイミングが今になったって感じですね。ツアーもこれから始まりますけど、アルバム・リリースとライヴをセットで考えられるような状況になったことにホッとしています。まぁこれは俺らだけじゃなく、世界中のバンドマンが思っていることだとは思いますけどね。

――前作『Sleepless in Brooklyn』はニューヨークでのレコーディングでしたが、そういう背景もあって、今作は日本でのレコーディングですか?

 そうですね。海外に行くことも考えたんですけど、時間の制約などいろいろあるから難しいよねっていう話になって。だから俺らが行けない代わりにアメリカからプロデューサーに来てもらいました。

――今作はこれまでとは違った状況下での制作になったわけですが、そういった特別な思いもコンセプトとして込められているのでしょうか?

 毎回そうなんですけど、俺らはアルバム単位でコンセプトとかテーマを考えないんです。最初から決めてかからないほうが自由度も高いし、その場の思いつきとひらめきが生きるというか。でも今作はスタジオ・セッションから作った曲が多いので、そういう“瞬間的”な部分を切り取りつつ、強調した作品になっていると思います。

『But wait. Cats?』
ユニバーサル
UPCH-7626/完全生産限定盤(2CD+2Blu-ray)
UPCH-7627/初回限定Blu-ray付盤(CD+Blu-ray)
UPCH-7628/初回限定DVD付盤(CD+DVD)
UPCH-2243/通常盤(CD)

――[Alexandros]と言えばユニークなアルバム・タイトルが多いですよね。今作も可愛らしいタイトルを掲げていますし。

 こういうタイトルって実は久々なんです。近年はわりとタイトルっぽいタイトルが続いていたんですけど、久しぶりに意味のわからないのが来ましたね(笑)。基本的に洋平が思いついたおもしろいキーワードをそのまま打ち込んでいるだけなんですけど、以前に洋平がアルバム・タイトルに関して、“ロックに意味なんてなくていい。だから逆に「タイトルなんてどうでもいいんだよ」っていうメッセージにもなる”って言っていて。だからあえてメッセージとするなら、“肩肘張らずに気軽に聴いてくれよ”ってことですかね。とにかく聴けばわかるよってこと。

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