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    INTERVIEW – 中村和彦[9mm Parabellum Bullet]

    • Interview:Koji Kano

    “何も考えずに適当に弾いて、カッコよかったら採用”みたいなノリを大事にした。

    ――「All We Need Is Summer Day」はストレートなロック・ナンバーですが、各所でベースの細かいニュアンスが際立っています。Aメロでのスタッカート→Bメロでのハンマリングを使った動き、サビ終わりのフィルなど、ベースが全体を牽引する意欲的なアレンジになっていますね。

     Aメロはスタッカートの切れ際を意識しつつ、Bメロはデモだと全部3弦で弾いていたんですけど、これだとどこかしっくりこないというか、もっと柔らかい感じがほしいと思ったので、3弦の音を残しつつほかの弦も混ぜて、そこにハンマリングを入れていくことで全体の混ざりを良くしました。音作りに関しても、ラインで弾いていると気になる“パチパチ音”を録りの段階から消しておきたかったので、ピックアップ・バランサーを全部リア側に振りつつ、フロント側でピッキングすることで硬い感じを消しています。結果としてロー・ミドルのチューブ感が出た味のある音になりましたね。ラインの段階からかなり音を詰められたと思います。

    「All We Need Is Summer Day」Music Video

    ――サビでは一転してルートに落ち着かせることで、メリハリの効いた展開になっています。そういった起承転結は意識した部分なのかなと。

     この曲は特にそういったものを意識しました。ポイントとして、ルートで弾くところもつなげられるところはスライドでつないでいるんです。例えばFからEに下がる箇所でも、1フレットだけでもグリス・ダウンを入れてみたりとか、そうすることで格段に抜けが良くなりました。

    ――個人的に、中村さんと言えばグリスってイメージがあります。

     グリスをするときって、フレット間の移動時にコードに不協和音が混ざるわけじゃないですか。でもその不協和音が絶妙な部分だと思うんですよね。だからあえて大袈裟にやることでシンプルなルート弾きにも抜けを作ることができると思っています。ベースをメロディアスに聴かせるためにグリスのニュアンスを強めに入れることもありますけど、こういったプレイは自然にやっている部分ですね。

    ――「淡雪」では特にグリスやスライドのニュアンスが生かされていますよね。バッキングがアコギの歌モノ思考な楽曲ですが、歌を際立たせるという意図もあったのでしょうか?

     まさにそのとおり。こういうメロウで繊細な曲って今までもありましたけど、自分のなかではスライドも含めてずっしりと重たく弾いたほうが明るく聴こえるって経験則があるので、そういったプレイを意識しました。この曲はコード進行が終始同じだったりするので、ベースの細かいニュアンスで勝負していったって感じです。

    ――今作はほぼ全篇歪んでいるように聴こえますが、この曲はクリーンですよね? 

     完全にどクリーンなんですよ。ちなみにこの曲はレコーディングではピック、ライヴでは指で弾いていて、なんとなくミュートのしやすさとか環境に応じて臨機応変に変えています。ライヴでもピックで弾こうと思っていましたけど、早くも指弾きになっちゃいましたね(笑)。

    ――中村さんはピックと指の使い分けも特徴的ですよね。どういった意図で使い分けしているのでしょうか?

     どちらでもいい曲だと完全に気分です(笑)。でも最近の傾向だと、キメが多い曲はミュートのしやすさから指で弾くことが多いです。BPMが速い曲でもできる限り指で弾くようにしています。だから最近は速さに対応できるよう3フィンガーも取り入れています。昔の曲だとそういう細かいことができなかったから、ピックで弾いた曲がライヴのときにミュートが甘くなっちゃった場面もあったので、ある意味、“ベースのリニューアル”って意味で今後は3フィンガーも織りまぜてプレイしようと思っています。

    ――「タイトロープ」も意欲的なライン展開ですよね。Aメロでは縦移動のショート・リフを展開していますが、小節ごとに細かく音づかいを変えていますし、2Aではスラップも入れ込んでいたりと、緻密なアレンジになっています。

     リフとリフの間で遊んだって感じですね。昔からこういうアプローチは多くて、ある意味定番の手法でもあります(笑)。けっこう自分のクセも入れつつ、弾いても飽きが来ないくらいに、なんでもいい部分は本当になんでもいいのを弾いちゃうっていう。“何も考えずに適当に弾いて、カッコよかったら採用”みたいなノリを大事にしました。この曲はコードがひとつのパターンで長めに行くところが多いので、そういう意味ではフレーズで遊ぶ余地があったんですよね。

    ――サビはまたおもしろくて、4つ打ちのビートに対して16分で弾いていますよね。こういったところに芸の細かさが表われているなと。

     ギターのノリに合わせた部分もあるし、けっこう難解なコードがたくさん出てくるので、フレーズはなるべくシンプルにしつつ、音数を16分に増やしてどこかせわしない感じを表現しています。

    ――印象的な動きだと、「泡沫」は1A/2Aともにコード・トーンを生かしたメロディアスな展開になっています。楽曲自体はシューゲイザー・テイストのハードなサウンドですが、どういった狙いがあったのですか?

     この曲は基本的にはレギュラー・チューニングなんですけど、途中のテンポが落ちる部分のみドロップDで弾いているんです。まぁ頑張ってイントロからDチューニングでフレーズを覚えればいいだけなんですけどね(笑)。大枠のフレーズは滝さんのデモに忠実なんですけど、デモの時点で狙いがハッキリしていたので、そこをもっと大袈裟にしようって狙いがありました。

    ――ベースの音作りという面でも楽しめる一曲ですよね。

     そうなんです。サビは音源だとわかりにくいけど実はガッツリ歪んでいて、厚みのあるサウンド感に仕上げています。途中ハイポジのフレーズ部分にはコーラスとリヴァーブをかけているんですけど、これはここ数年の自分の流行り。隙あらばそういうペダルを踏んでほかの箇所との棲み分けを狙っていて、アレンジを際立たせるためにいろいろと試行錯誤した部分ですね。

    ――エフェクティブな音を出すようになったきっかけとは?

     コーラスとか空間系って、自分の足下でいう“オモチャ的”なポジションなんです。歪みはマストでしっかり音を作り込む必要があるけど、コーラスはアレンジに絶対必要なものではない場合が多いです。でも踏んだら楽しいし、そういう要素が曲中に含まれているとより狙いがわかりやすくなるので、そういう感覚で使うようになりました。

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