PLAYER
ベーシストとしての仕事も多いし、やりがいを感じています。
━━これまでのお話を聞いていると、ヒロミさんのベースは一般的なロック・バンドのベースとはまた違うプレイをメンバーから求められているように感じます。
ギターとドラムはそのままでベースだけが暴れてる、みたいなアプローチを求められることが多いので、そういった意味ではベーシストとしての仕事も多いし、やりがいを感じています。ときにはそれが難しくてフレーズを形にするまでに時間がかかることもあるんですが、みんなに鍛えられている感じはします(笑)。
━━では、この特殊なグルーヴのアンサンブルで、ベースの“居場所”としてどういった部分を重視しているのですか?
最初の頃は勢いでやれてしまう部分もあったし、曲もシンプルなものが多かったので、深く考えずに出たフレーズをそのまま弾くことが多かったんです。でも同じようなプレイばっかりじゃダメなので、新しいことを目指しつつも自分らしさを出すことを考えると悩むことも多くなって……。やっぱり曲に合わせて弾けばいいというわけではないし、tricotのなかで腰を据える位置というのは考えることが増えていっている気がします。同時にメンバーがそれぞれバンドにおいて重要な存在になっているとも感じています。でもこのメンバーなら何をやってもおもしろくなると思いますね!
━━今作で使用した機材を教えてください。
ベースはWood Custom GuitarsのJBタイプで、音が好みで気に入ってる一本です。アンプは最近新しく導入した、アギュラーのDB359というけっこう古いモデルのものを使いました。最近はこれをメインのヘッド・アンプとして使っています。
━━tricotは“結成10周年”というひとつの節目を終え、次の節目に向かっていくわけですが、今後の展望はどう考えていますか?
今後は鍵盤の音を入れてみたりとか、違う楽器を取り入れてみたいという話をメンバー間でしているんです。それだけでも音の幅が広がるので、どんどんチャレンジしてきたいですね。ただ、逆に4人の音だけでどこまでいけるかという発想もおもしろいと思っているんです。やっぱりもっと多くの人に聴いてもらいたいという思いは10年経っても変わらないので、tricoらしく着実に地に足をつけて歩んでいきたいですね。
━━ヒロミさん個人としてはいかがでしょう?
“こうなっていきたい”っていう具体的なものは正直なくて、自分のスタイルでここまでやってきたという自負はあるので、今後もいちベーシスト、ヒロミ・ヒロヒロとして成長していきたいと思っています。曲自体もどんどん広がっているので、その曲と一緒に自分のプレイも広げていきたいですね。長くなるとどうしてもバンドに甘えてしまう部分も出てきてしまいますが、それだと自分の質を落としてしまうことにもなるので、最近は新たにイチから基礎的な部分をやり直したりもしています。
━━近年、若い女性のベーシストが増えている要因にヒロミさんもあるのではと思うのですが、実感する部分はありますか?
自分たちも30代になったことで、そういう風に言われることが増えたと感じています。高校生の子たちがtricotのコピーしてくれたりとか、“ヒロミさんみたいに弾きたいです”と言ってくれたりして……照れ臭いですけどすごく嬉しいし、なんてかわいいんだろうと思います(笑)。女性から言われるとまた違った嬉しさもあるし、そう言っていただけるのは素敵なことなので、これからもその子たちが頑張ろうと思える要因になれたらなと思います。
◎Profile
ひろみ・ひろひろ●高校時代にベースを始め、いくつかのバンドを経て、2010年に中嶋イッキュウ(vo,g)、キダ モティフォ(g)とtricotを結成する。翌年にドラマーが加入するも2014年に脱退。2015年には5人のゲスト・ドラマーと、2016年にはドラマー・オーディションで選ばれた4人のドラマーと作品を制作するなど正式ドラマー不在の時期を経て、2017年に吉田雄介がドラマーとして正式加入し現在のラインナップに。2019年にメジャー・デビューし、2020年1月29日に通算4枚目のフル・アルバム『真っ黒』をリリース。同年10月21日には『10』をリリースした。
◎Information
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