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若い人たちってこれを聴いてどう思うんだろう。
━━小原さん作詞作曲の「Reach Out To The Sky」についてですが、この曲は一定のBPMで進んではいるものの、途中クリックどおりではないテンポ感になったり、またクリックどおりに戻ったりという機械的でない人間味のあるテンポを感じました。レコーディングの際はクリックを聴いていたんですよね?
クリックは聴いています。でもズレても、全体的に合っていればいいという考えなんです。むしろクリックに合わせてブレイクした場合、次に入るときっていうのは、クリックどおりだとツッコんで聴こえることが多いんですよ。人間は一度止まってから戻るときに少しゆっくり目になるというか、そのほうが自然に聴こえることが多いので。そこでズレても戻ってくればいいと思っているから、クリックは聴いているようで聴いてないんですよね。
━━「Always」も小原さんが作詞作曲を担当されていますが、どうやって生まれた曲なのでしょうか? コーラスで参加しているゲストもかなり豪華です。
コロナ禍で作った曲だったので、なんとなく世界滅亡みたいなことが頭に浮かんで。そういった想像と、我に返る瞬間を繰り返しているイメージなんです。リズムも3拍子のパートと4拍子のパートが切り替わっていて。あと最後はビートルズの「A Day in The Life」みたいな、みんなで繰り返すコーラスをやりたいなと思っていたところ、“じゃあユーミンとか亜美ちゃんとか、家族にも参加してもらおう”って話になって。それで最終的には、“もっといろんな人にも参加してもらおうよ”となったんです。コーラスの振り分けをあとから考えるのがすごい大変でしたね(笑)。
━━矢野顕子さん、吉田美奈子さん、小坂忠さん、ブレッド&バターのおふたりも参加されているんですよね?
佐野史郎くんも語りで入っているし、昔から関係ある人たちに参加してもらいました。それぞれレコーディングの後半にスタジオに来てもらったりして。あと矢野顕子ちゃんは、ウチにご飯食べに来たときに歌ってくれましたね(笑)。
━━アルバム全体を通しての話なのですが、今作は音楽のスタイル自体は60年代や70年代を感じさせる曲が多いのに、古臭い感じがまったくせず、むしろ目新しいものとして響く感覚がありました。その理由はなんだと思いますか?
僕らは作ったときに、若い人たちってこれを聴いてどう思ってくれるんだろうってずっと考えていたので、“古臭さを感じない”って言ってもらえるとすごい嬉しいですね。年寄りはいいから若い人に聴いてもらいたい(笑)。若い人に新鮮に響く理由があるとしたら、やっぱり本人たちの年齢じゃないですか? 長くやってきて、頑固さがなくなって生まれてきた余裕みたいなものが、それなのかなとちょっと思います。
━━歌詞の面でも、50年以上のキャリアがある小原さんたちの世代だからこその視点があるのではないかと感じました。例えば、「マイミステイク」の歌詞にある“若気の至り”という言葉も、小原さんより若い世代のミュージシャンが歌うのとは違った意味が生まれてくるというか。
確かに若い人が“若気の至り”って言ってもおかしいもんね(笑)。今の曲って歌詞がわりと多いじゃないですか? 言葉を詰め込むというか。僕らはもうそういうのを覚えられないから、やっぱりシンプルになっていきますよね。できれば曲も短くしたいし、短くてスッキリしていて、パッと言いたいことを言う曲を作ろうと。だから、今の流行りとは確かに違うのかもしれないですね。
━━ロックンロールのシンプルなコード進行も、今だからこそ逆に新鮮に響くと感じる人も多いのではないかと思います。ちなみに、下の世代の音楽も含めて、今作の制作中に聴いていたものや刺激を受けたものはありますか?
今回は、ほかの音楽をまったく聴いていなかったですね(笑)。いろんなところから聴こえてきたり、ご飯を食べるときに好きな音楽を聴いたりとか、自然にインプットされているというのはあると思うんですけど。だから、やっぱり昔からの蓄積のなかで熟成したものがパッと出てくる感じだったのかなと思います。あと下の世代で言うと、奥田民生は出来のいい弟みたいなもんで(笑)。これは本人にも言っているけど、僕は彼の“ものへの焦点の当て方”がすごく好きで、詞の素晴らしさを感じているんです。間違いなく、歌詞の捉え方は彼から影響を受けていると思いますね。
━━最後に、今後のライヴや制作についての予定について聞かせてください。
ライヴは今年はコロナがどうなるかわからなかったので、なかなか予定を入れられなかったんですよ。来年になったらいろいろ予定は考えているので、無事できるようにと願っているところです。あと、次の制作の話もしているんですよ。スタジオにいつから入ろうとかって。ただ、僕らだけやる気でもまわりから相手にされなくても嫌なので(笑)、まずは今回のアルバムがある程度認知されて、評価してもらえたら良いなって思ってます。
◎Profile
おはら・れい●1951年11月17日生まれ、東京都出身。1971年にサディスティック・ミカ・バンドに参加。同バンドを脱退後はバンブーやカミーノ、KYLINなどに参加。1977年に渡米して以来は、イアン・マクレガンやボニー・レイット、ロン・ウッド、ポール・バターフィールドといった大御所と共演を果たす。2014年頃から屋敷豪太(d,etc)とのユニットThe Renaissanceとしての活動を開始。2021年10月、高校時代に林立夫(d)、鈴木茂(g)と結成したSKYEに松任谷正隆(k)が加入し、待望のデビュー・アルバムとなる『SKYE』を発表した。
◎Information
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小原礼 Official HP Twitter