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    INTERVIEW – 小原礼[SKYE]

    • Interview:Shutaro Tsujimoto

    ベース弾くときに親指を固定してないんです。

    ━━今回たくさんの曲でヴォーカルも務めていますが、“ベースを弾きながら歌う”ことをどのように捉えていますか?

     ベースと歌というのは、単音同士だから実はすごく難しいんですよね。ベースは下でメロディを弾きながらグルーヴさせていて、一方歌は歌で単独のメロディがあるわけで。完全に分けて考えないといけないし、分けて聴こえていないとダメなんですよ。あとはベースでトニックを弾きながらメジャー・セブンスのメロディを歌うときなんかは半音でぶつかったりもするわけで、頭のなかでの二面性が必要だし、テクニックが必要なんです。難しいんですけど、ベースを弾きながら歌うことの楽しさはまだまだ先もあるなと感じています。

    ━━「ISOLATION」も“ベースを弾きながら歌う”曲ですよね。歌の裏で繰り返しているベース・リフでは、2拍目をスタッカート気味に切っているのが、気持ち良いグルーヴを生んでいると感じました。

     えーっと、実はなにも考えずに弾いていて(笑)。この曲は仮歌を歌いながらベースのレコーディングしているので、フレーズは歌いながら自然に弾いたものが出ていて、スタッカートについても結果的にそうなっていたというだけなんです。この曲は難しいことは考えていなくて、テイクも1回か2回だと思いますし、弾き直しもなかったはずです。ちなみに、この曲はヘフナーを親指で弾いていますね。

    「ISOLATION」MV

    ━━「ISOLATION」はタイトルの“隔離”という意味のとおり、コロナ禍だからこそ生まれた曲だと思うのですが、小原さんにとってコロナ禍はどんな期間になりましたか?

     普通の生活ができなくなっちゃったということをすごく感じて、そういう意味では今作の「Reach Out To The Sky」も僕のなかではコロナの歌で。日常がどれだけ貴重だったかに気づかされたというか、それを詞にしたんですよね。当然僕らの仕事は全部キャンセルになってしまうし、最初は何をしたらいいかがわからなくて。奥さんの(尾崎)亜美ちゃんとYouTubeのチャンネルを作ってカバー動画を作り始めたんだけど、そういうことでもしないと何もやることがなくて。でもそれをやり始めたら、あっという間に時間は過ぎていくもので、やっぱり仕事はなくても音楽はあるなと思いましたね。

    ━━YouTubeではビートルズのカバーもやっていましたよね。今作でも、小原さん作曲の「マイミステイク」や「Always」からは、コーラスの使い方などビートルズの影響を感じる部分がありました。小原さんにとって、彼らはどのような存在ですか?

     もちろん大きい存在ですよね。ビートルズがいなかったらミュージシャンやってなかったんじゃないかなと思うし。ビートルズ以前というのは、作曲家の先生がいてアレンジャーがいて、歌手がいてっていうシステムだったじゃないですか。でも彼らが登場してから、自分たちで曲を作ってハーモニーをつけて、歌って演奏するというスタイルができて、その影響で世界中からいろんなバンドが出てきて。それが一番多感な時期のことなので、もう若い頃はビートルズの影響しかなかったですね。それは今でも僕のなかに根強くあるものなので、やっぱりビートルズのちょっとした匂いっていうのは出てきているかもしれません。ヘフナーを使っているのは、ポール・マッカートニーの影響というわけではなくて、単に軽いからなんですけど(笑)。いい音もするし、あんまり重いベースを持っていると腰が痛くなるので。

    「Penny Lane」カバー/ StayHomeMusic尾崎亜美小原礼

    ━━「Less Is More」の次に作ったのはムッシュかまやつさんのことを歌った「Dear M」だったとか。この曲もヘフナーで弾いたとのことですが、小節の変わり目のキメでベースとドラムのキックがガチッと合っているのがカッコよかったです。

     これはリハーサルをしているときはヘフナーで、(ジェームス)ジェマーソンみたいな気持ちで弾いていたんですけど、レコーディングに入ったらやっぱりプレベの音でやったほうが合うなと思い、ファンキーというよりはロック寄りのアプローチにしたことを覚えています。キックとの相性というのもありますし、曲との相性を考えてプレベに変えました。ムッシュについては、僕らは若いときに銀座ACBとかにザ・スパイダーズを観に行っていて、その頃から大好きだったんです。やっぱり彼を通らないわけにはいかないだろうという、作詞者の林の想いですね。

    ━━先日のNHK番組での「Dear M」のライヴ映像を観ていて気がついたのですが、このとき弾いていたベースがテスコのKB-2で親指を置く場所がなかったからなのか、右手の親指を固定しないフォームで弾いているのが印象的でした。

     それ全然自分では気づいてなかったんですけど、前にも誰かに言われたことがあって(笑)。僕ね、ベース弾くときに親指を固定してないんですよ。プレベであってもね。柔らかめに弾きたいときはネック側に行ったり、ガッツのある音にしたいときはブリッジ側に行ったりとか、どの位置でもパッと弾けるようにしてるのかなと自分では思っていて。気がついたら、自然とそういう風になっちゃってましたね。

    ━━親指をピックアップに載せると、ピッキングの位置が固定されてしまうと。ちなみにテスコのベースは、今作のレコーディングでも使っているのでしょうか?

     今作は「Less Is More」「ISOLATION」「Reach Out To The Sky」「Always」がヘフナーで、そのほかがプレベですね。ライヴでは軽いのでテスコやヘフナーが多くて、でもプレベ・オンリーみたいなときもあるし、やる人と現場で変えています。

    ━━「ちぎれ雲」は、かなりの低い音が出ているように思いましたが、これはどうやって弾いていますか?

     プレベで全部の弦を1音下げて弾いたんです。茂から低い音を弾いて欲しいというリクエストがあって。僕は5弦ベースとかはあまり使わないので、じゃあプレベを下げてみるけど“ベロベロになるかもしんないな”と思って弾いたら、意外とそういう風にならなかったので良かったです。

    ━━もともとはっぴいえんどの曲ですが、今回AOR的なアレンジになっていますよね。アレンジは鈴木さんが主導ですか?

     そうですね、90年代くらいの感じですよね。アレンジに関しては、僕らは言いなりです(笑)。ベースはシンコペーションのあるところだけしっかりやって、あとは超シンプルなプレイをしていますね。

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