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    INTERVIEW – 明希[シド]

    • Interview:Kengo Nakamura

    大きくなったものが削ぎ落とされて、
    必要なものだけになったのかなと思いますね。

    ━━Shinjiさんやゆうやさんの楽曲に対しての取り組み方は、これまでと何か変わった点はありましたか?

     一緒ですね。僕が作る曲もそうだと思うんですけど、デモを聴けば一発で何をやりたいかがわかるというか。なのでデモのフレーズも生かしつつ、自分のやりたいフレーズも生かしつつっていう感じですかね。

    ━━Shinjiさん作曲の「揺れる夏服」は全体的にベースの動きが大きいアプローチになっていますね?

     デモではもっとシンプルだったんですけど、リズムの縦の感じは今の完成形と似ていて、そこに自分の手グセとかライヴっぽい感じを入れて作っていきました。曲が盛り上がっていくところでは、やっぱり自分のテンションもついていきたいから、そういう作り方をしたり。2Aだとそこだけちょっとポンと抜けるような作りにしたいから高いポジションで弾いてみたり。でも、すごく考えるというよりは、やっていると自然にそうなっちゃうっていう感じですけどね。

    ━━1Aでは歌の合間に入るスピーディなオブリもありますね。

     Shinjiが作るシドの縦ノリの曲ってこういうタイプの曲が多いので、良い意味でそのノリを継承していて、シドのなかではお約束フレーズというか定番みたいな感じはありますね。

    ━━「街路樹」はAメロなどのファンキーともいえる休符とスタッカートの効いたラインが効果的です。

     ファンキーというか“ポップ・ソングってこうだよな”って感じですよね。これはShinjiのデモにもともと入っていました。

    ━━ギター・ソロ後のDメロでは歪んだリード・フレーズが入っていますね。

     あれはベースで、ファズをかけています。ダークグラスのDualityをかけました。おもしろいアプローチだなって。

    『海辺』Artistic盤収録 Blu-rayダイジェスト映像

    ━━ゆうやさん作曲の「大好きだから…」はAメロの躍動的な休符をうまく入れたアプローチで、ドラムとのコンビネーションが考えられたラインだなと思いました。

     あれもデモに忠実ですね。僕としては、あそこでずっと8分でぶっ通しのルートを弾きたかったんですよ。それに対してドラムがリズミカルなのもいいかなと思って。でもゆうやのイメージでは、そっちよりも今のドラムと一緒にリズムが止まるほうが良かったらしいので、そこは作曲者の意向を尊重したんです。

    ━━「13月」はサビのギターのオブリの入れ方とかも80年代歌謡曲のリスペクトを感じますね。ベースも、スタッカートで攻めていく感じのアプローチが歌謡曲っぽいなと思います。

     そうですね、これはまさにその時代を体現したような曲かな。

    ━━そのスタッカートな部分の印象もあって、Aメロのベースはちょっとシンベっぽいニュアンスにも感じました

     あー、なるほど! 言われてみればそうですね。って、なんかすごい他人事みたいに言っちゃったけど(笑)、確かにそんな感じがしますね。

    ━━ということは、そこまで意識したことではなかったと(笑)。あと、ゆうやさんの曲で言うとジャズ・ブルースな「液体」やピアノがメインの「白い声」では、ベースはシンプルにアプローチしていますね?

     ああいう楽曲って空気感が大事ってところがあるじゃないですか。どれだけあの雰囲気をフレーズにまとえるか。だから難しいことをしなくても、逆にめっちゃ難しいことをしていても、あの雰囲気をまとわないといけないから、ある意味大変ですよね。そうなると、やっぱり左手のニュアンスが大事かなと思います。

    ━━「液体」はロング・トーンで弾きつつオブリをベースで入れてコードをつないでいくっていうことだと思うんですけど、ピアノもあるしギターも歌の狭間でオブリを入れてくるしで三つ巴みたいな感じになりますよね。そこの駆け引きや整理というのはありましたか?

     ウワモノとかはわりと決まっているので、できあがっているものに対して“ここに隙間があるな”って感じで、うまく間をすり抜けるようにしてつないでいったラインですよね。

    ━━「白い声」のサビはロング・トーンで、そこからギター・ソロになるとルートを“ダッダ、ダッダ”と刻んで6/8のリズムを強調するというアプローチで、シンプルながら楽曲の展開感が出る効果的なものだと思います。

     そう言っていただけるとありがたいですね。

    ━━それこそ『承認欲求』でも『Collapsed Land』でも、“今まではメロディ寄りのアプローチが多かったけど、リズム寄りのアプローチのおもしろ味を改めて感じている”と言っていましたが、今作はベーシストとしてどういうことができたと感じていますか?

     これまで、いろんなことをやってきたつもりでいるんですけど、そうやっていろいろ大きくなったものが削ぎ落とされて、必要なものだけになったのかなと思いますね。根底にあるそもそもの姿というか、着飾らないシンプルなものというか。削ぎ落とされたものが残った感覚かな。

    ━━それは“削ぎ落とされたから全部シンプルなプレイなんだ”ってことではなくて、ラインを動かして聴かせるところはその方向で突き詰めているし、弾かないでいいところはより音を厳選しているということでしょうか?

     そうですね。意図的に狙ったものもありつつ、自分のなかから出てきたもので成立させたものもありつつ、っていうところだと思います。

    【お知らせ】
    2022年4月19日発売のベース・マガジン2022年5月号にも明希のインタビューを掲載! 本インタビューで触れられなかった明希が作曲した楽曲や使用機材などについて、BM webとは別内容も多数盛り込んだ内容となっています。ぜひチェックしてください!

    ◎Profile
    あき●2003年にシドを結成。2008年11月にメジャー・デビュー記念ライヴを日本武道館にて開催したほか、2010年12月には東京ドーム単独公演を成功させるなど大きな人気を獲得する。2022年3月23日に11thアルバム『海辺』をリリースした。また、2015年からはAKiとしてソロ活動も展開しており、2016年7月には台湾の大型野外フェスに出演するなど、精力的なライヴ活動も展開。2020年6月に1stアルバムから約5年半ぶりとなるフル・アルバム『Collapsed Land』をリリースした

    ◎Information
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